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≫428 〜封鎖された渋谷で〜
■発売元 セガ
■開発元 チュンソフト
■ジャンル サウンドノベル
■CERO C(15歳以上対象) ※暴力、犯罪、薬物描写、問題言語表現あり
■定価 7140円(税込)<※廉価版:2800円(税込)>
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(使用ブロック数:3、SDカードへのコピー可)
■その他 クラシックコントローラ対応、Wii Connect24対応
■総説明書ページ数 21ページ
■推定クリア時間 14〜16時間(エンディング目的)、30〜35時間(完全攻略目的)
200X年某日、渋谷署管轄内で誘拐事件が発生。
始まりは、この一つの誘拐事件だった…。

刑事、元チーマーの青年、ウィルス研究者、フリーライター、そしてネコの着ぐるみ。

無関係に思えた人々の運命が交差した時、既に自体は「危険領域」へと入っていたのだ…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆まさにノンストップな緊迫感抜群のシナリオ(特に中盤以降は一瞬も見逃せない)
◆人物造形からシナリオごとの色分けも含め、丁寧に作られた5人の主人公キャラクター達
◆本編を影で支える、侮り難き存在感を醸し出した脇役キャラクター達
◆時系列に干渉し、他の主人公のシナリオと繋げていく不思議な手応えに富んだ『KEEP OUT』&『JUMP』
◆時系列の詳細な流れが綺麗に描かれただけでなく、メニューインターフェースとしても良く出来てる『タイムチャート』
◆詳細且つ丁寧な解説内容とシナリオとも密接に絡む仕掛けが面白い『TIPS』
◆シリアスなものからぶっ飛んだものまで、(いい意味で)無駄に充実したバッドエンド
◆バッドエンド到達時のアドバイスなど、入念な配慮が成されたサポート機能周り
◆エンディングまでは短めながら、充実感は桁違いに高い本編シナリオのボリューム
◆TIPS集め、ボーナスシナリオとその条件探しなど、意外と充実したおまけ要素の数々
◆基本、総当りでサクサク進めて、要所要所で適度に悩まさせるバランスの取れた難易度
◆Wiiリモコンのお手軽設計の強みが炸裂した、快適な片手操作(操作の手応えも非常に良好)
◆実写グラフィックによる独特の映像描写とスピード感溢れるカットの数々(見応え抜群)
◆サスペンス作品ならではの緊迫感溢れる楽曲が盛り沢山の音楽(名曲も結構ある)
◆静止画ながらも存在感抜群の出演俳優陣(特に脇役は田中要次氏を始め、面子が妙に豪華)
◆絶妙なタイミングで挿入される上手さとボイスは一切無しという統一感に対するこだわりが炸裂したムービーデモ

--- Bad Point ---
◆ボーナスシナリオ『カナン編』の癖の強過ぎる作風(主にテキスト。かなり好みが分かれる)
◆総当りが基本となる為、若干作業感も漂う本編の展開(但し、シナリオがそれをカバーしている)
◆シナリオにおける、過剰過ぎる主題歌&アーティスト推し描写(幾ら何でもやり過ぎな上に露骨)
◆シナリオ後半における、KEEP OUTの多さとそれによるブツ切れ感の強さ
◆一部、分かり難いKEEP OUT解除条件の存在(特に14時辺りの解除条件)
◆ノーヒントでの解除はほぼ無理同然なまでに分かり難い、ボーナスシナリオ等の解除条件
▼Review ≪Last Update : 12/30/2012≫
場違い極まりない猫(の着ぐるみ)、しかしてその中身は…

話す訳にはいきません。


セガとチュンソフト(現:スパイクチュンソフト)による新作ゲーム輩出プロジェクト『セガ×チュンソフトプロジェクト』の第8弾にして、唯一の完全新作としてリリースされたサウンドノベル。

緊迫感溢れるシナリオと時系列をフル活用したシステムで魅せる、衝撃の大傑作だ。

ゲーム内容はテキストを読み進めながら物語を追っていくサウンドノベルゲーム。全5人の肩書きと境遇の異なる主人公達の物語を体験し、東京の渋谷で起きた事件の真相と裏で蠢く陰謀の究明に迫っていくというものだ。
本編は5人の主人公の内の一人を選び、そこで語られる物語(テキスト)を読み進め、途中に現れる『選択肢』を選んだりしながら展開。主人公が5人居るとは言え、最初に選べるのは二人だけ。基本的に物語が進むにつれ、選べる人数が増えていき、最終的に5人まで選べるようになる。冒頭で解説したように、5人の主人公は肩書きも境遇も別物。大筋のストーリーは全員、共通しているのだが、語られる物語はそれぞれの視点から見た、独立したものになっている。各主人公と語られる物語の簡単なあらすじは以下の通り。

■加納慎也(かのう しんや)
渋谷中央署の新米刑事。渋谷管内で発生した誘拐事件の捜査に当たり、先輩刑事の笹山と共に身代金引き渡し現場であるスクランブル交差点で張り込んでいた。
そして午前10時、遂に犯人が現れ、身代金を奪い取る現場を目撃する。

■遠藤亜智(えんどう あち)
渋谷の若者を統率するグループ「KOK」の初代ヘッド。
現在は離脱し、渋谷のゴミ拾いに精を出していた。
誘拐事件の張り込み捜査が行われていた日、いつものようにスクランブル交差点に足を運ぶと、そこに一人の少女が。そして、その場に拳銃を持った男が彼に近付いてきた。

■大沢賢治(おおさわ けんじ)
「大越製薬」の研究所長で、ウイルス研究の第一人者。
誘拐事件の被害者。自分の研究にしか意欲を見せない仕事人間で、今回の事件発生後も淡々とその日常を過ごしていた。そんな彼の元に一通のメールが届く。その内容は…。

■御法川実(みのりかわ みのる)
元新聞記者でフリーライター。
『ヘブン出版』に勤める先輩、頭山照雄の借金返済を手助けする為、『噂の大将』来月号のネタ集めに渋谷を奔走する。

■タマ
ネコの着ぐるみを着た人物。
雑貨屋で見つけたペンダントを買う為にアルバイトを始めたが、ファスナーが壊れて着ぐるみが脱げなくなり、着ぐるみのままで仕事をする事になってしまう。
その中身は女性らしいが…?

以上、この5人の物語をプレイヤーは追体験し、真相に迫っていく事になる。なお、本編は『時間』単位で区切られた構成になっており、その時間内で選べる主人公の物語を全て見終えると次の時間に進み、新たな物語が始まる仕組みとなっている。各主人公の物語は『TO BE CONTINUED』と表示される所まで進むと、その時間内で見れる範囲は終了。基本的にプレイヤーはそのシーンを目指し、各主人公の物語を読み進めていくのが主な目的となる。
だが、例によって到達は容易ではない。物語の途中で現れる『選択肢』を選び間違えるとそのまま『BAD END』に直行して物語が終了してしまうなど、様々な罠と障害が設けられている。更にもう一つ、各主人公の物語は単に集中して読み進めれば『TO BE CONTINUED』まで到達できるほど、平易な構成でもない。各物語には『KEEP OUT』なる、立ち入り禁止ポイントが存在し、これが表示されると、そこから先の物語が読めなくなってしまうのである。この『KEEP OUT』を突破するにはどうすれば良いのかというと、他の主人公の物語を読み進め、そのテキストで現れる『赤い文字のキーワード』から『JUMP』、キーワードのリンクから飛ぶ。これを行う事で、『KEEP OUT』が解除され、その先の物語を読み進められるようになる。つまり、物語を最後まで読み進める場合、随時、他の主人公の物語も随時、読み進めていかねばならない。単純そうに見えて、実は驚くほど入り組んだ構成になっているのだ。
なお、各主人公の物語は『タイムチャート』と呼ばれる時系列をまとめた画面にイベントの発生時刻、分岐などの情報が記されていく。チャート上では他の主人公の動きも確認でき、物語の全体像と『KEEP OUT』解除のカギを探る事ができる。何処に別の主人公のシナリオに干渉できるポイントがあるのか、謎を調べる面白さもあり、テキストの読み進めがメインの本編にゲーム的な奥行きを演出している。また、今の主人公の物語を読み進める中、もう一人はどんな動きをしていたのかと言った全体像も把握できるのも、他の主人公のシナリオが一つに繋がる演出の盛り上げに貢献している。
一つのストーリーを5人の異なる視点から体験し、時には他の主人公に干渉しながら事件の謎を解明する。その流れは非常にゲームらしい味に富んでおり、本編の主人公と協力しながら事件を追っているという不思議且つ確かな手応えに満ち溢れている。また、先ほどにも少し触れたが、何処かしらで他の主人公の物語にも関連してくるほか、それが予想だにしない方向に動いたりなど、プレイヤーを驚かせる仕掛けがたっぷり凝らされているのも見逃せないところだ。
テキストを読み進めるのがメインでありながら、自分が事件を追っているという手応え、そして時系列の図を最大限に活かした仕掛けと、さながらそれは、デジタルゲームブックと言っても不思議ではない、非常に個性的な作りでまとめられている。まさに複数の主人公である事の意義を強く推し出したゲームデザイン。強烈な意外性と思わず惹き込まれる興味深さに満ち溢れた、大変魅力的な内容に仕上げられている。

例によって、今作の売りは5人の主人公の視点から描かれる、緊迫感満点のシナリオだ。
特に本編の中盤からエンディングにかけての怒涛の展開は圧巻。それまでただの端役同然だったキャラクターが思いもしない行動に出て、事件に影響を与えたり、本筋とは外れた話だと思っていた事が実は重大な伏線であった事が判明するなど、それまでプレイヤーの予想を大きく覆す真相がジェットコースター並の勢いで明らかとなっていく。更にその頃には5人の主人公の関係性も一層深くなり、事件の裏で行動してた主人公が本筋のキーパーソンとして介入してきたり、意味深な場面の意外過ぎる真相が判明したりなど、思わず「嘘だろ!?」と画面に向かって声を挙げてしまうような展開が立て続けに描かれていく。そして終盤には、ゲームの基本設定を根底から覆すトリックまで登場してプレイヤーに想定外の衝撃をもたらしつつ、そのまま大団円へと向かっていく展開が繰り広げられるという凄まじさ。冗談抜きに休憩で一時中断している時間など、1分どころか10秒すら無いと言っても良いほど、濃密で見応え抜群の内容になっているのである。誇張表現に聞こえるかもしれないが、本当に「目が離せない」。一生に一度の衝撃とも言うべきものが大量に詰まった内容になっているのだ。中盤の展開ばかりでなく、主人公ごとのシナリオのカラー付けも秀逸。例えば加納慎也のシナリオは緊迫感満点なのに対し、タマのシナリオはゆる〜いギャグ満載の内容であるなど、それぞれ違った作風を特徴とした内容に仕上げられているのが面白く、プレイヤーの興味を惹き付けて離さない。
特にタマのシナリオは本当に「誘拐事件が起きてるのに何をのん気な…」とボヤいてしまうような内容で、別のゲームをやっているのかのような錯覚にすら陥るほどだ。だが、繰り返しになるが、こんなシナリオがちゃんと本筋に絡んでくる。しかも、それまでのギャグから一転してシリアス一辺倒の作風になるほか、絡み方も非常に衝撃的で、誰もがその意外過ぎる展開に唖然となってしまうほどだ。一体、どう衝撃的なのか気になる方は本編でお確かめ頂くとして、こう言った作風の違いを出し、無関係な感じを演出しながら、中盤以降から絡めていく展開も素晴らしく、如何に今作のシナリオが緻密な計算と検証に基づいて作られているかを痛感させられる。プレイヤーの興味を惹き付ける手法もさる事ながら、「騙す」手法に関しても今作は傑出したレベル。単に衝撃的なだけでは終わらせぬ、職人的な作り込みが成されている。
システム周りに関しても、他の主人公の時系列に干渉していく『タイムチャート』が演出するゲーム性もなかなか。自ら文章を読み解き、謎を解いて真実を切り開いていく過程は、さながら自分が主人公達の運命を導く存在となったかのような高揚感、達成感に秀でている。随所で登場する選択肢を間違えた時に発生する『バッドエンド』も勝手に事件が解決してしまったり、田舎帰りしてしまったりなど、やたら種類が豊富で笑いを誘う。その異様な量には、そこまで作る必要があったのかと、人によってはツッコミを入れたくなるかもしれない。とは言え、時系列干渉や謎解きなどの要素があるとは言え、基本的には他のアドベンチャーゲームにありがちな総当り戦。バッドエンドが多い都合で、本当に地道な選択と検証が求められるので、そう言った作業的なものに抵抗感を覚える方には正直、合わない作りではある。
しかし、その面倒臭さを吹き飛ばすぐらいにシナリオの完成度が高く、これを楽しむ為だけに今作をプレイしても間違いなく損はしないと言い切れるものになっている。適度に謎と伏線を散りばめてプレイヤーの興味を引き付け、中盤から畳み掛けるように事が運んでいくその構成は、近年のアドベンチャーゲーム(サウンドノベル)でも屈指の出来と言っても過言ではなく、タイムリミットサスペンスという謳い文句に何ら偽りはない。
一生の一度の衝撃が大量に詰まった内容と言っても、半信半疑に見てしまうのは致し方ない。しかし、今作では本当にそう言った衝撃を味わえる。記憶を消してでももう一度遊びたい、と後々もどかしい思いに陥るほどの衝撃が今作に詰まっているのだ。それでも本当かよと疑問に思う方はもう、騙されたという思いで是非、プレイしてみて欲しい。これまで語ってきた事が決して嘘でない事を思い知らされるはずである。

また、パッケージとイメージイラストを見れば明らかだが、今作のグラフィックは実写写真(静止画)を用いた独自のものになっているのも大きな特徴。実写という事で、少し抵抗感を抱くプレイヤーもいるかもしれないが、見栄えは非常に良く、スピード感溢れるカット割の恩恵もあり、見応えある物に仕上げられている。重要な場面では動画を流すなど、盛り上げ方の上手さもさる事ながら、演じている役者が喋る演出がないのも、シナリオ全体の緊張感底上げに一役買っている。少し独特過ぎる所もあるが、それ故のオリジナリティの高い映像美は今作でしか味わえない魅力が満載。必見だ。
更に実写グラフィック故、登場キャラクター達には実際の俳優がキャスティングされている。出演者も端役が結構豪華で、田中要次、なすび、森田順平と言った知る人ぞ知る面々が多数出演。更に声優の秋元羊介、大塚明夫と言った方々が顔出し出演しているのも必見だ。
その他、音楽も印象深い楽曲が盛り沢山で、各場面を大いに盛り上げる。『ALWAYS 三丁目の夕日』や『海猿』で知られる作曲家・佐藤直紀氏が音楽担当で参加しているなど、スタッフの豪華さも何気に見逃せないところである。
操作性もレスポンスの快適さもさることながら、リモコンの片手持ちでプレイできてしまうのが強烈。寝ながらと言っただらしない格好でも気軽に遊べてしまうなど、Wiiリモコンの小ささが存分に発揮されたものになっている。全く無い訳ではないが、リモコン内臓のモーションセンサーを使わせる、無理矢理な所がほぼ無いのも地味ながら大きな魅力だ。

ボリュームも本編は大体16〜20時間ほどと適度な量で遊び易い。また、本編とは別にゲストクリエイターが制作したボーナスシナリオ、隠しシナリオと言った特典、バッドエンドとTIPS集めと言った収集要素などクリア後の要素も充実。長く遊べる内容になっている。ただ、このボーナスシナリオの内の一つ、TYPE-MOONが制作を担当した『カナン編』と言うのが実写ではなくアニメ絵で描かれた内容であり、テキスト的にも非常に癖のあるものになっている。正直、合わない人には拒否反応すら覚える内容になっているので、要注意だ。それだけでなく、シナリオ的にも場違いな感じが凄く、どうにも入れた意図が分からない内容になっているのも引っ掛かるところ。仮に今作の大きな欠点を挙げるならば、このシナリオの存在そのものと言ってもいいかもしれない。制作を担当したTYPE-MOONの方々には申し訳ないが。
そんなおまけ要素が場違い過ぎる点と一部、わかり難い条件がある事、バッドエンドを回収しながらのプレイが基本となる本編は苦手な人には苦痛で仕方が無いなど、細かな欠点もあるが、その内容自体はまさに傑作としか言い様のない出来。プレイヤーを退屈させない緊迫感溢れるシナリオに実写グラフィックが醸し出す独特の映像美、臨場感溢れる音楽、そしてそしてカジュアル過ぎる操作性など、唯一無二の魅力と一生で一度の衝撃が詰まった今作。
Wiiをお持ちの方ならば要プレイの傑作だ。ちなみにPS3版、PSP版も発売されている。Wiiをお持ちでない方はそちらをどうぞ。この衝撃はゲーム好きなら何が何でも体験すべし!お薦め!
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