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≫ゴールデンアイ 007
■販売元 任天堂(※発売元:アクティビジョン)
■開発元 ユーロコム
■ジャンル スパイアクション
■CERO C(15歳以上対象) ※出血、暴力、恋愛描写あり
■定価 5800円(税込)
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1〜4人(ローカルプレイ時)、1〜8人(オンラインプレイ時)
■セーブデータ数 5つ(使用ブロック数:2、SDメモリーカードへのコピー不可
■その他 ヌンチャク対応、クラシックコントローラ対応、ゲームキューブコントローラ対応、Wiiザッパー対応、ニンテンドーWi-Fiコネクション対応
■総説明書ページ数 14ページ
■推定クリア時間 5〜8時間(エンディング目的)、200〜300時間以上(完全攻略目的)
■補足情報 ≫攻略メモまとめ(※ネタバレ注意)
イギリス情報局秘密情報部『MI6』にある情報が入った。それはロシアの極秘兵器『ゴールデンアイ』が、世界各国のイギリス大使館を狙う謎の国際テロ組織『ヤヌス』に渡る、という内容だった。
情報によると、どうやらこの一件にはロシア軍のアルカディ・ウルモフ大佐が絡んでおり、『ヤヌス』と影で屈託し、自国の兵器を闇市場へと横流ししているらしい。

局長のMより司令を受けたジェームズ・ボンドこと007(ダブルオーセブン)は、同僚のアレック・トレヴェルヤンこと006(ダブルオーシックス)と共にロシア・アルハンゲリスク州にあるウルモフの施設へと潜入。
武器庫の破壊を目指し、行動を開始するのだが…?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆今風になりながらも、007のスパイらしさは尊重された完成度の高いゲームシステム
◆ロクヨン版のリメイクもしっかり用意された、多種多様でやり応え満点のミッション
◆作りは簡素だが、ロクヨン版以上に強化が図られたステルス(潜入)要素
◆箱庭感は薄れたが、多彩なミッションでプレイヤーを楽しませてくれる、練られたマップデザイン
◆露骨なものからさりげないものまで、随所に盛り込まれたロクヨン版のネタの数々
◆難易度を上げる度に新しいミッションが追加される、ロクヨン版経験者には懐かしい仕様の難易度選択システム
◆スパイならではの緊張感、極める度に奥深さが増す緻密なバランス調整が成された最高難易度『007クラシック』(ロクヨン版と同じダメージ制のシステムに変更される仕様もグッド)
◆リモコン&ヌンチャクによる直感仕様、クラシックコントローラ等の従来仕様のものまで幅広く対応した操作性
◆相変わらずの白熱&爆笑必至のマルチプレイモード(ルール周りもより多彩に)
◆止め時を失うほどの面白さと中毒性に富んだ、オンラインマルチプレイモード(やり込み要素もタップリ)
◆少し薄くなったが、やり込むとなると膨大な時間が必要とされる圧倒的なボリューム
◆登場人物のモデリングなど、Wiiの性能の限界を突き詰めた質の高いグラフィック
◆デビッド・アーノルド氏作曲による、如何にもな007らしさが素敵な音楽
◆敵に発見された際に緊迫した曲が流れるなど、スパイならではの臨場感と緊張感を全面に推し出した珠玉の演出
◆敵に弾を撃ち込んだという確かな手応えを醸し出す、質感抜群の効果音
◆映画版の名シーンを見事に再現しつつ、新展開もふんだんに取り入れたシナリオ

--- Bad Point ---
◆新作色の強い内容(ロクヨン版のリメイクではない為、思い入れのある人には賛否が分かれる)
◆やり込み要素が結構あるとは言え、物足りなさも否めないシングルのボリューム
◆一本道構成故の自由度の低さ(他の目標を優先して攻略すると言った事はできなくなっている)
◆オンラインマルチプレイにおける極端なレベル差(装備が整う高レベルほど対戦が有利になりがち)
◆フリーズバグの存在(ごく稀にオンラインで発生する)
◆やや敷居の上がった操作(キャラと照準を同時に動かす為、FPSに慣れてない人には辛い)
◆微調整の面倒臭さがタマにキズな操作設定(特に感度調節で数字が表示されないのが難アリ)
▼Review ≪Last Update : 12/30/2012≫
「俺は天才なんだーッ!!」

リストラされた自称天才プログラマー、魂の叫び。


1997年にNINTENDO64で発売され、世界累計800万本ものメガヒットを記録し、FPSの歴史にその名を刻んだ伝説の名作『ゴールデンアイ 007』を21世紀仕様に改めたリニューアル作品。開発はレア社に代わり、イギリスの老舗デベロッパー、ユーロコムが担当。

ロクヨン版とは完全な別物。しかし、その血筋はきちんと継承した、21世紀仕様の新生ゴールデンアイだ。

ゲーム内容は一人称視点で展開する、ファースト・パーソン・シューター(FPS)。主人公のジェームズ・ボンドこと、007(ダブルオーセブン)を操作し、敵の基地への潜入、銃撃戦と言った多彩な任務を遂行していくというものである。
基本システムはオリジナルに当たるロクヨン版『ゴールデンアイ 007』とは完全な別物。FPSとしての作りは今作の発売元であるアクティビジョンの看板タイトル『コール・オブ・デューティ』シリーズに非常に近く、プレイヤーキャラクターと照準の操作を二つのスティック(※リモコン&ヌンチャク操作の時はスティックとポインティング)で行うなど、近年の家庭用ゲーム機向けFPSと同じものになっている。その為、今回はロクヨン版のように1つのスティックで遊べるFPSではなくなった。更にダメージの仕様もこれまた昨今のFPSと同様、瀕死の重症を負ってもその場で待機すれば自動的に回復するシステムを起用。体力と防弾チョッキの耐久力を表したゲージも廃止され、より緩い仕様へと改められている。しかし、『007クラシック』と呼ばれる難易度では、そのロクヨン版のダメージ仕様とゲージを継承。無敵時間が無く、銃撃を大量に浴びると一気に瀕死に陥るなど、仕様的には『パーフェクトダーク』に近いのだが、一応、ロクヨン版の雰囲気で楽しみたいプレイヤー向けの配慮は施されている。また、チェックポイント、目的地マーカーのシステムも導入。やられたら問答無用でミッションの最初からやり直しとなったロクヨン版のシビアなゲームバランスも大幅に緩和されている。
この他にボンドのアクションにもダッシュ移動、敵を背後から音を立てずに倒す無力化攻撃、サブアイテム『スマートフォン』を使ったハッキングと言ったアクションを新たに追加。スパイらしいアクションができる様になった事で、ゲーム全体の緊張感と雰囲気も強化されている。
全体的に見て、コールオブデューティのシステムをベースに作られたゴールデンアイで、近年の家庭用ゲーム機向けFPSに慣れ親しんだ方なら難なく入っていけるのに対し、ロクヨン版の経験者や近年のFPSに慣れ親しんでない方には大きな戸惑いを覚える作りとなっている。一応、この操作を練習できるチュートリアルも実装されてはいるが、ロクヨン版よりも癖は高め。現代仕様ならではの手軽さ、癖の強さが入り混じった、如何にもなFPSに仕上げられている。
ただ、本編の大まかな内容はロクヨン版と大差無い。マップが一本道になった点を除いては、ロクヨン版と同じステージクリア方式。武器の回収や特定兵器の破壊などのミッションを遂行していく、懐かしの構成になっている。更に今作では、ステルス要素を強化。敵に背後から近付いて音を立てずに倒したり、時には巡回を無視して目的地に移動すると言った、これぞスパイなアクションを堪能できる内容へと刷新されている。無論、敵に見つかれば激しい銃撃戦へと突入。しかし、銃撃戦になるからと言ってペナルティになる訳ではないのがミソ。基本的に潜入で行くか、銃撃戦で突撃するかは自由に決める事ができる。なので、どう任務を遂行するかはプレイヤー次第。その辺の大らかさもロクヨン版を踏襲しており、ゲーム的には違えど、元の魅力をきっちり継承した作り込みが成されている。また、ステージもロクヨン版を踏襲しつつ、その中には銃撃戦主体のドンパチが楽しめるものもあったりと、非常にバラエティー豊か。難易度も選べる上、上げれば『追加目標』が課せられるというこれまた、ロクヨン版でもお馴染みだった要素が実装されているので、懐かしい手応えを堪能できる。そして、ゲームモード周りでもメインのシングルプレイ以外にゴールデンアイの代名詞、マルチプレイも実装。満を持してオンライン対戦も取り入れ、世界中の00(ダブルオー)戦士達と競い合えるようになっている。
システムと操作性の変更、マップの一本道化など、その内容は別物同然。ストーリーも一新されているほか、ボンドのモデルも原作(映画版)のピアース・ブロスナンではなく、6代目ジェームズ・ボンドのダニエル・クレイグに変更されているなど、これの何処がゴールデンアイなのかと言いたくなる部分が多い。しかし、ステージクリア方式に徹したシングルプレイに追加目標、懐かしの難易度など、ロクヨン版の血はしっかりと流れており、その内容は紛れも無くゴールデンアイ。あの懐かしの味を現代風に翻訳したと言っても良い、21世紀仕様の完全新作。それが今作なのである。

そして、今作の魅力は、現代仕様になっても全く失われてない『ゴールデンアイ 007』としてのらしさだ。操作及びシステム全般はコールオブデューティシリーズなどの近代FPSと同じスタイル、マップが一本道、ボンドのアクションも別物。確かに個々の要素から見れば、今作が『ゴールデンアイ 007』というにはあまりに程遠い作品なのは明らかだ。ボンドのモデルも違うし、ストーリー展開にしたって完全な別物。原作である映画版を忠実に再現している訳でもない。
しかし、それでも今作は紛れもなくあの『ゴールデンアイ 007』なのである。
例えばシングルプレイだが、マップが一本道である点を除けば、基本はロクヨン版と変わらない。隠密行動を心掛けないと銃撃戦になって任務遂行が困難になったり、機密品の回収、ハッキングと言った戦闘とは別の事が求められてくるなど、ロクヨン版で最も面白く、他のFPSと一線を画していた部分はそのまま残されている。
また、今作ではその隠密行動の部分が極端になり、銃撃戦に移行した時以外は敵兵が攻撃してこない仕様に改められてより、ステルスゲームの色が濃くなっているのだが、それも撃ちまくるタイプのFPSではない事を特徴としていたロクヨン版を踏襲している事の現れ。それをハード性能の向上に伴い、本格的なものへと発展させている。
本格的と言っても、コナミの『メタルギアソリッド』シリーズほどではなく、一度でも発見されると問答無用で銃撃戦に突入してしまうなど、作りは極めて簡素。誘き出しなどの細かな戦術もできず、あると言ったら無力化とサイレンサーつき武器による瞬殺程度。正直な所、ステルスゲームとしては落第点と言っても過言ではない出来ではある。
だが、プレイヤーを見つけると問答無用で攻撃に移行するのはロクヨン版でもそうだった。その無茶苦茶な動作に焦り、銃を乱射して思わずランボー状態になってしまったプレイヤーも少なからず居たはずだ。酷い時にはセーラー服と機関銃の如き快感に酔いしれたかもしれないが。 そんな敵に見つかる怖さと我を忘れる展開に発展するハチャメチャさもまた、ゴールデンアイのシングルプレイにおける一つの魅力。それを再現するに当たり、この簡素なステルス要素は大変上手く機能している。簡素だからこそ、ロクヨン版と同じ緊張感と焦りが味わえるのだ。一見すると、出来の悪いステルスゲームだが、ロクヨン版の魅力と重ね合わせると上手い具合にそのレトロで面白い部分を抽出しているのが分かる。本格的なステルスゲームを求めるプレイヤーほど、今作の極端な作りは手抜きに感じるかもしれない。だが、この見つかる前に黙らせる緊張感、我を忘れる展開はやり込めばやり込むほどに中毒性が増していく。そして、ロクヨン版を経験した方ならば、これはあのゴールデンアイだと思わず納得するだろう。
また、マップ構成から小ネタに至るまで、あのゴールデンアイの魅力、可笑しな所がしっかり残されているのにも驚かされる。マップ構成は基本的にロクヨン版とは違う新規のものが大半なのだが、最初のミッション『ダム』ではロクヨン版と全く同じ地形が登場するだけでなく、演出まで真似るなど、当時のプレイヤーのノスタルジーを喚起させるニクい気配りが図られている。また、ロクヨン版では出来なかった原作の映画版と同じ演出が増え、それを実際に体験できるようになった点も見逃せない。トイレからの侵入、バイクで崖から飛び下りて落下中の飛行機に乗り込む、ロシアの軍用書庫で派手なドンパチを繰り広げるなど、そのまんま映画版なシチュエーションの数々には映画も見た方ならば燃えるような気持ちになること請け合いだ。ミッションの内容に関しても、一部にプラスチック爆弾の解除、人質救出、追跡装置のセットなどのロクヨン版のリメイクミッションがあり、サービスが効いている。難易度を変更する事でミッションの数が変わる点にしてもロクヨン版そのままで、難易度ごとに違ったプレイが楽しめるという点にも経験者ならば懐かしさを感じるはずだ。
そして、マルチプレイも言わずもがな。武器を拾って戦うのではなく、予め装備した武器セットで戦うシステムに改められたが、その熱さと盛り沢山のお笑い要素は何ら変わってない。頭隠して尻隠さずのプレイヤーを背後からぶん殴って昇天させたり、手すりから飛び下りようとするプレイヤーにダメージを与えて自爆を誘ったり、手榴弾のピンを外して特攻を仕掛けたりなど、相変わらずの面白さ。リアルになっても全然変わらぬその無茶苦茶さには安心感すら覚えるだろう。
基本的な作りが最近のFPSと同じという事で、ロクヨン版に親しんだ方ほど違和感を抱く内容であるのは否定しない。ストーリーも別もなので、ほとんど完全新作である。
だが、変にレトロな所がそのままだったり、対戦は相変わらず爆笑必至など、その中身は間違いなくゴールデンアイ。少しおバカなまま現代仕様になって戻ってきたアイツなのだ。やや敷居は上がったが、あの無茶苦茶さと面白さはそのまま。始めは違和感を覚えるかもしれないが、やり込めばやり込むほどに今作がゴールデンアイ現代版である事が分かってくるだろう。何とも奥の深い味わいを持った作品なのである。スルメ的と言っても良い。

ただ、一方でボリュームに関してはロクヨン版よりも薄め。ミッション総数は4つ減の全14ミッションで、隠しステージも皆無。随分と寂しいものになっている。しかし、4種類の難易度の攻略とタイムトライアル、オンラインマルチプレイのレベル上げなどのやり込み要素は豊富で、長く遊び込める内容になっている。特にオンラインマルチプレイは止め時を失うほどの楽しさ。対戦ルールも豊富で、レベルが上がれば上がるほどに多彩な戦術が試せるようになっていくので、対戦こそがゴールデンアイの真髄と考える方ほど夢中になってやり込んでしまうだろう。
また、操作性もプレイヤーキャラクターと照準の二つを同時操作するスタイルになった為、敷居は多少上がっている。だが、リモコン&ヌンチャクによる直感的な操作はこの手のスタイルに不慣れな方には易しい仕上がり。更にクラシックコントローラ、ゲームキューブコントローラ、Wiiザッパーにも対応。普通のFPSスタイルでも遊べるなど、その懐の広さは特筆に値する。安定性の面ではクラシックコントローラが勝る感じが、基本的にWiiザッパーを除き、どの操作にもずば抜けて酷いのが無いのは見事。好みの操作で手軽に楽しめる、ナイスな作りになっている。
グラフィックの質も高い。登場人物のモデリングなど、Wiiとしてはかなり頑張っている。音楽もステルス、銃撃戦時で曲が変化するなど、緊張感と臨場感を引き立てる工夫が凝らされていて見事。曲の出来も素晴らしく、作曲担当も映画版007シリーズのデビッド・アーノルド氏なので、007らしさも申し分無し。全てにおいて抜かりのない仕上がりだ。

演出周りもコールオブデューティスタイルの一人称視点を活かした派手なものが満載。また、登場人物や敵兵の会話は全てフルボイス。音声は日本語吹き替えで、ボンド役には『カジノ・ロワイヤル』、『慰めの報酬』の吹き替え版でボンドを演じた小杉十郎太氏を起用。その分かりきったキャスティングにもニヤリとさせられる。
その他、効果音も銃撃ヒット時に鳴る「ドスッ!」という確かな音が銃撃の爽快感と手応えを引き立てていて見事。そんな音に対するこだわりもロクヨン版譲りである。
FPSとしての作りはコールオブデューティ風で、ロクヨン版のあのシンプルなFPSを求める方にとっては凄まじい「コレジャナイ」感を抱く内容であるのは間違いない。純粋にステルス要素のあるFPSとしても、色々と物足りなさと雑なところがあるのも事実だ。しかし、完成度そのものは上々。何よりも少しレトロなところを残すなど、しっかりとゴールデンアイとしてのらしさを残そうとする作りには原作に対する敬意というものを感じさせられる。ほとんど別物ではあるが、間違いなくその中身は題名に偽り無しの今作。
新生『ゴールデンアイ 007』と言っても良い秀作である。賛否分かれる所もあるが、あの緊張感と珍妙さはロクヨン版のまま。現代風に生まれ変わったゴールデンアイを体験してみたい、スパイの気分に浸れるFPSを遊んでみたい方には自信を持ってお薦めできる逸品だ。対戦ツールとしても申し分ないので、そういうのを求める方も是非。
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