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≫スクールオブダークネス
■発売元 スクウェア・エニックス
■開発元 WayForward Technologies
■ジャンル 3Dホラーパズルアクション
■CERO B(12歳以上対象) ※ホラー描写あり
■定価 1000Wiiポイント
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■消費ブロック数 258
■セーブデータ数 3つ(※1ブロック使用:SDメモリーカードへのコピー可)
■その他 ヌンチャク専用
■推定クリア時間 10〜12時間(エンディング目的)、20〜25時間(完全攻略目的)
教室の床で酷い頭痛と共に目を覚ましたジェイク。
ふと周囲を見回してみると、そこに自分以外の人間が一人も居ない事に気が付く。
隣の教室にも、その隣の教室にも誰も居ない。
周囲に広がるのは、カサカサした音が聞こえてくる暗闇のみ。
その暗闇の中から突如、老犬のような歯軋りが聞こえ出す。
興味に駆られたジェイクは、闇に向かって足を少しだけ踏み出した。すると、大きなゴキブリが闇から飛び出し、ジェイクの足元を走り抜けた。やがてゴキブリは光に当たると、虫眼鏡に当てられたアリの如く背を向け、もがきながら焼け死んだ。

それを見たジェイクは、闇からの脱出を決意。行動を開始する…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆リモコン&ヌンチャクの特性を絶妙に活かした、自然な手応えが見事な操作性
◆闇の中に光の道を作って出口を目指す、単純ながらも新鮮な味わいに富んだゲームデザイン
◆大味なゲーム展開を防ぐだけでなく、節電する事の難しさというユニークで、少し生々しいテーマまでも演出している制約機能こと『ブレーカーゲージ』
◆パズルアクションらしい、頭脳戦メインの変わった手応えに富んだボス戦
◆仕掛けの配置から解法、ルート構成に至るまで丁寧に作り込まれた全30以上ものステージ
◆盲点を突かれる意外性、説得力の高さが秀逸な発光ギミック全般
◆落ち着いて考えれば自然と突破口が見えてくる、絶妙な調整が見事なパズル全般の難易度
◆マルチエンディング、隠しモード収録など、意外と充実した総計ボリューム
◆アメコミを髣髴とさせるホラーテイスト全開、不気味さ満点の印象的なグラフィック
◆闇に覆われた舞台の空気感を引き立てる静かで不気味な音楽
◆仰々しく、質感満点の効果音(一部、リモコンのスピーカーで鳴り響く音もあったりと、独特の操作性を活かす試みも)

--- Bad Point ---
◆視認性が非常に悪いタイトル画面のメニューセレクト(リモコンのポインティングで光を当てないと、各メニューが確認できないという困ったこだわりが炸裂した作り)
◆静かな空間の構築を最優先したが故の弊害とも言える、ゲーム全体の地味さ
◆狭い通路での小回りのし難さがタマにキズなコントロールスティックによる移動操作
◆少し分かり難い上、瞬時の操作が求められてくるのが厳しいエンディング分岐条件
◆未搭載のチュートリアル(操作やルールが独特なので、あった方が良かった)
◆質素さが否めないエンディング(特にバッドエンドは唐突過ぎるの一言)
▼Review ≪Last Update : 4/1/2012≫
The Darkness's Coming in School...!

※闇は闇でも、別の闇です。


暗闇に覆われた学校を舞台とした、完全新作のパズルアクションゲーム。開発は『魂斗羅Dual Spirts』で知られるアメリカの実力派デベロッパー、WayForward Technologiesが担当。

節電する事の難しさと楽しさを堪能できる、史上稀な魅力を兼ね備えた傑作だ。

ゲーム内容は2D見下ろし視点で展開する、ステージクリア型パズルアクションゲーム。主人公のジェイクを操作し、闇に包まれた教室に光の道を作り、出口への到達を目指すというものである。ただ、一部のアクションを行う際には3D視点に切り替わる為、厳密には2Dと3Dを織り交ぜたパズルアクションと言った具合の作りになっている。
ステージこと、教室のクリア条件は単純明快。出口に到着すれば良いだけだ。しかし、教室内は闇に包まれており、そこに足を踏み入れてしまうと、中に潜む化け物に引きずり込まれ、ミスとなってしまう。これを回避する為、プレイヤーは出口に通ずる光の道を作っていく事になる。光の道の作り方も単純明快。電気を着けたり、窓を壊したりすれば良いだけ。これらを行うことで、危険な闇の中に安全地帯となる足場が出来上がり、出口に近付いていけるようになる。しかし、だからと言って電気を着け続けたり、窓を壊しまくれば良いというほど、各ステージ及びシステムは甘く作られてはいない。
まず電気に関しては、必要以上に点け過ぎると学校全体を管理するブレーカーが落ち、停電が発生し、そのままミスになってしまう。闇雲に電気を着ける事を禁ずるシステムが設けられているのだ。ブレーカーの残量は『ブレーカーゲージ』と呼ばれるゲージによって示されるようになっており、各教室ではこのゲージが満タンにならないよう、電気を点けていかなければならない。電気の使用量は対象となるオブジェクトによって様々で、普通の電灯なら省電力で済むが、パソコンのモニターの場合は莫大な電力がかかるなど、どれを点け、どれを点けないかという判断が求められてくる。更にステージによっては既に点灯させている電気を消し、電気量を節約する必要が迫られてくる場面も。また、酷い時には消そうにも消せない所に電気が残ってしまったので、アイテムを使ってその電気を破壊しなければならないという、力技が求められてくる事もある。単純に光の道を作っていけば良いとは言うものの、その道のりは決して生温いものではない。どの電気を活用させ、そしてどの電気を状況に応じて切るかの試行錯誤が求められる、パズル性を重視した調整が施されているのである。その必要以上に電気を使い過ぎると罰せられる仕組みには、人によっては節電の大事さを思い知らされること請け合い。そんな現実にも通ずる生々しい恐怖も、今作はプレイヤーに見せ付けてくる。
もう一つの窓も、ステージに決まって配置されている訳ではないほか、破壊しても一直線の道しか作れない欠点がある。更にこれは電気とは違い、一度作ったら消せない。それ故、作る手順を間違えると詰まりになってしまう。更に極め付け、窓を破壊するには『パチンコ』、『ボール』と言ったアイテムが必要。いずれも消費型のアイテムなので、使い所を間違ったり、無駄撃ちしてしまったりすると詰まりになる。先の通り、ステージによっては、これらで電気の元を破壊しなければならない所ともあるので、その使うべきタイミングも大いに問われてくる。電気とは異なり、広範囲に道が出来上がるというのは大きな利点ではあるが、何処にもある訳ではなかったり、手順を間違えると詰まりに至ったりと、危険な一面もある。単純なギミックではあるが、その危険性と応用性の広さは実に侮り難いもの。こんな所にしてもパズル的な難しさがあり、プレイヤーの試行錯誤、小手先のテクニックが求められる調整と仕掛けが施されているのである。
その他、本編も単純に光の道を作って脱出していく事を繰り返すのに終始するものにはなっていない。ある程度のステージを進むとボス戦が始まったり、ヒロインとの連絡を常時、取っていかないとバッドエンディングが訪れると言った個性的且つ、ショッキングな要素が仕込まれており、一筋縄ではいかない密度と手応えを兼ね備えた構成になっている。
基本こそ単純で取っ付き易い敷居の低さがあるが、肝心のシステムと本編の構成はそのシンプルさに反するぐらいに高密度。そして、頭をフル活用しなければならない作りとなっている。まさに、単純明快な本格派のパズルアクションゲーム。シンプルさの中に強烈な辛味と歯応えを潜めた、魅力満点で中毒性も申し分ないゲームなのである。

例によって、今作の魅力はその秀逸なゲームデザインに集約される。闇の中に光の道を作って出口を目指しつつ、電気の消費具合に神経を配っていく。その独特のゲーム性には、(良い意味で)憎たらしい手強さが満ち溢れている。
特に『ブレーカーゲージ』の存在は秀逸の一言。これが今作のゲーム性に非常に良いアクセントを与えている。そもそも今作の基本ルール、「闇で覆われた部屋の中に光の道を作り、出口を目指す」は その通りに作ってしまうと、非常に単調なゲームになってしまうのが明らかだ。部屋の中にある電灯、パソコンのモニターに電源を入れまくり、時には窓を壊し、外からの明かりを差し込ませたりしていく。その過程には、今作の光と闇のテーマ自体の新鮮さもあり、一定の面白さこそあるが、これだけに終始する内容だとなると、さすがに途中で息切れを起こしてしまうだろう。安易に推測するだけでも、序盤の山以降にはただの作業プレイに陥りかねない。一応、特殊な仕掛けで変化を付けたりすれば、ある程度の緩和はできるかもしれないが、それでも何処かしらで限界が生じてしまうだろう。どんなにテーマが新鮮であろうとも、同じ事に終始するだけでは、ただの一発ネタ。作り込みの甘く、志の低いゲームとして評価されてしまうのがオチだ。
そんな単調さを防ぐ為の要素として、『ブレーカーゲージ』は非常に良い仕事をしている。点け過ぎると停電になる為、如何に順序良く、そして電気量を消費し過ぎないよう点けていくかという、この要素だからこその試行錯誤の楽しさ、難しさが見事に演出されている。それに加えて、電気を使い過ぎる事の危なさという、現代社会にも通じるテーマ性が込められたものに仕上がっているのが非常に面白い。先程、節電の大切さを思い知らされると言ったが、決して大言壮語ではなく、本当に今作をプレイしているとその重みを痛感させられるのである。そもそも、電気を使い過ぎることが死に繋がるので尚更。嫌でもその重大さを思い知らされる。なので、あまり電気量というものを意識した事のないプレイヤーは、今作を通じ、今後の生活に役立ついい教訓を得られるというメリットも。そんな生々しいテーマが描かれているのも、この要素の面白いところ。これほどまでに電気を使う事に深い意味を持たせたゲームも、そうそう無いと言ってもいいだろう。とても貴重で、タメになる(かもしれない)体験が味わえるのだ。
また、節電はゲームプレイ、テクニックの面でも斬新な手応えを演出しているのが見事。停電発生を防ぐ為、今後、通過する事は無いであろう道の元である電気を消し、ゲージに余裕を持たせる辺りには、この要素あってこその面白さと感動に満ち溢れている。単にスイッチを切れば良いだけでなく、戻れない場所に孤立した電気に対してはパチンコなどのアイテムで攻撃して破壊するなど、乱暴な策が取れるのも面白い。無論、この乱暴な策はただのネタ要素で終ってなく、後半のステージ攻略では出口到達への重要なカギとなるなど、きちんと使い道が用意されている。そのような事にも意味を持たせている辺りにも、今作の作りの丁寧さが現れている。
ステージに関してはそれだけに留まらず、ギミックの多彩さも大きな見所。特に電気の元となる電源に関しては、「確かにそれも光を発する!」とプレイヤーの盲点を付くネタが登場するのが地味ながらも面白い。その電源もテーブルの電灯であれば円状の道、ライトであれば動く道など、それぞれに違った動きが用意されており、道作りに一筋縄では行かぬ奥行きを与えている。ステージ一つ一つの作りも凝っていて、使い回しネタが皆無同然という辺りに、光と闇をテーマとした新しいパズルアクションゲームを作ろうとする制作スタッフの強い意気込みを感じ取る事ができる。単に出口到達を目指すだけで終わらせず、途中でボス戦を挟むと言った試みにしても、ブレーカーゲージと同様に本編の展開にアクセントを加えており、一筋縄では行かぬゲームという印象を強く決定付けている。
常に闇に覆われた真っ暗な部屋が舞台となるほか、やる事は基本的に出口への到達だけなので、ゲーム的に地味なイメージが強いのは否めない。こればかりは、設定が設定だけに止むを得ないと言ったところである。しかし、地味ながらも、その中身の深さとテーマ性は秀逸。先の繰り返しになるが、ここまで節電する難しさと楽しさが体験できるゲームは、今の世の中探してもそうそう無いと言ってもいいだろう。そういう意味でも、今作で体験できる遊びは貴重。ゲームデザイン的にも斬新さが炸裂した、唯一無二の魅力が炸裂したゲームに仕上げられているのだ。ある意味、エコが取り沙汰される世の中に適し過ぎなゲームと言っても良いかもしれない。

また、操作性や難易度設定と言ったゲーム性を構成する部分の完成度も総じて高い。操作性に関しては、リモコン&ヌンチャクの二つを併用する、Wiiらしい独特のものだが、キャラクターの挙動、センサー操作の割り振りが非常に自然且つ、気持ちの良いものに仕上げられている。特にセンサー操作の使い方はとても上手く、パチンコやボール投げのアクションにおいて、その素晴らしさが如何なく発揮されている。ただ、移動に関しては微妙な入力まで受け付けるのが、狭い通路の通過時においてストレスになってしまっているのは気がかりではある。
難易度もやや高めだが、解法自体にえげつなさはなく、落ち着いて考えれば自然と突破口が見えてくるバランスになっているのが見事。さながら、任天堂のゼルダシリーズにも似た絶妙な調整となっている。
ボリュームも意外と充実。ステージ総数は30ほど、更にマルチエンディングや隠しモード等の特典が用意されている為、結構長く遊ぶ事ができる。
グラフィックもアメコミを髣髴とさせる、ホラーテイスト全開の仕上がりとなっており、雰囲気抜群。音楽も全体的に静かな曲ばかりなのだが、それが返って闇に包まれた学校という舞台設定の不気味さを引き立てているのが見事だ。対し、効果音は仰々しく、窓を破壊した際の派手な音など、しっかりした手応えを感じ取れる仕上がり。一部の音はリモコンのスピーカーで鳴り響くなど、操作性を活かした試みが仕込まれているのも面白いところだ。

演出周りは、先の静かな音楽もあってか地味。その為、微かに単調さを感じてしまうところがある。しかし、雰囲気作りは完璧で、闇地帯でうごめく影などは、得体の知れぬ恐怖感を煽る。嫌でもここには足を踏み入れてはいけないと思わせる、生々し過ぎる動きも必見だ。
その他、雰囲気作りに関してはタイトル画面にもそれが発揮されており、メニューが闇に覆われ、リモコンのポインティングで光を当てないと見えない作りになっていたりするのがユニーク。ただ、それ故に非常に視認性が悪いのが欠点。それ以外にも、チュートリアルが無く、いきなり本番スタートとなる作りになっているのも、ちょっとシビアにし過ぎな感は否めない。最初のステージがあまり練習ステージとは言い難い作りになっているのもまた然り。できれば、最初は練習ステージにして欲しかったところだ。
そんな不親切な所があるのがタマにキズだが、全体の完成度は申し分無し。単純だけど適度に頭を使うゲームルール、節電の大切さを思い知らされる『ブレーカーゲージ』、そして練り込まれたステージなど、どの部分にしても一切手を抜いてない、丁寧な作り込みが成されている。地味過ぎるところもあるが、その手応えとテーマ性は他に類を見ないものを持ち合わせた今作。パズルアクション、謎解きアドベンチャーが好きなプレイヤーには自信を持ってお薦めする傑作だ。闇の世界に光の道を作る独特のゲーム性のみならず、節電の難しさを堪能できる色んな意味で貴重なゲーム。今作を通じ、電気を使う事とはどういう事なのか、考えてみませんか?
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