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≫ドンキーコング トロピカルフリーズ


■販売元:任天堂 / ■開発元:レトロスタジオ、モンスターゲームズ /
■ジャンル:アクション / ■CERO:A(全年齢対象) /
■定価:パッケージ版:5700円(税別) / ダウンロード版:5700円(税別)

◆公式サイト / ストアページリンク(ダウンロード版)
≫ドンキーコング トロピカルフリーズ(任天堂公式サイト)
≫ドンキーコング トロピカルフリーズ | Wii U(商品&購入ページ)
▼Information
■プレイ人数:1~2人 / ■セーブデータ数:3つ(※ユーザーごとに作成可) /
■必要容量:セーブ:1MB以上、ダウンロード版:10GB以上 / ■その他:Nintendo Network対応、WiiU PROコントローラー対応、Wiiリモコン対応、ヌンチャク対応、OFF-TV PLAY対応 /
■総説明書ページ数:11ページ(※電子説明書) /
■推定クリア時間:5~6時間(エンディング目的)、50~80時間(完全攻略目的)
誕生日を迎え、ディディ―コング、ディクシーコング、そしてクランキーコングからお祝いされていたドンキーコング。そんなパーティの最中、北の海から『ザ・スノーマッズ』なるバイキング軍団が襲来。彼らの親玉と思しき者が巨大な笛を吹いて強烈な吹雪を発生させ、ドンキーコング達をそれに巻き込ませて遥か遠くへと吹き飛ばしてしまった。そして、吹雪はそのままドンキーコングアイランド全体を覆い、一瞬で雪と氷の世界へと変貌させてしまう。

かくして、ザ・スノーマッズによって強引な形で占拠されてしまったドンキーコングアイランド。
遥か彼方の島へと飛ばされたドンキーコング達は、ザ・スノーマッズを追い出し、故郷を再び常夏の楽園へと戻すべく、長い冒険の旅へと出るのであった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆旧シリーズの体裁を堅持した王道で取っ付き易いステージクリア方式の本編構成
◆全三匹と前作の三倍に増え、タッグ時のアクションの幅も広がった相棒キャラクター達
◆現役ドンキーとの夢の共演劇を見せる新たな相棒にして、元祖ドンキーことクランキーコング
◆旧シリーズのスタイルでも遊べるようになり、大幅な改善が図られた操作周り
◆ピンチの緊急回避手段として用意され、ある程度ゴリ押しでも通せる余地を広げた新要素の必殺技こと『コングパウ』
◆一発アウト制が廃止され、難易度が大幅に緩和されたトロッコ、ロケットバレルコース
◆それらのコースの難易度見直しによって、全体的に適切な難しさに改められたゲームバランス
◆新要素も導入して、満を持しての復活を遂げた水中コース
◆水中コース復活で、更にバリエーションが多彩になったコースごとのロケーション
◆前作に負けず劣らずの派手な動きっぷりを見せるコースギミック
◆前作と作風は同じだが、解像度向上でより美しさが増したグラフィック
◆達成率、アイテム収集、タイムアタック等、相変わらず盛り沢山なやり込み要素
◆旧シリーズで伝説的な名曲を生み出してきた元レア社の作曲家、デビッド・ワイズ氏による高品質な音楽(今回は新曲も豊富!更に曲の雰囲気も旧作準拠に回帰!)
◆敵を攻撃した際の手応え、アイテム獲得時の気持ちよさを際立たせる、前作譲りの素晴らしい効果音(しかし、あまりにも意味不明な改悪が行われている…)
◆アートワークの鑑賞、サウンドテストなど、今回もたっぷりと用意された特典要素の数々

--- Bad Point ---
◆乏しいの限度を超え過ぎてるWiiUゲームパッドを活用した独自要素(OFF-TVプレイ程度。絶対にパッドを活用しなければならない規則がある訳でないにしても、やる気が無さ過ぎる)
◆何故かWiiUゲームパッド側のスピーカーを入れていないと聴こえてこない、意味不明過ぎる仕様が盛り込まれた踏み付け時の効果音(分ける必然性が無い上、活用方法としては最低。)
◆長めになったロード時間(特にゲームスタート時が顕著)
◆何故か今回にも引き継がれた、ローリングアタック発動手順に問題があるWiiリモコン、リモコン&ヌンチャク操作(その難点が無いパッド操作があるのだから、切り捨てるべきだった)
◆相変わらず、最高記録の設定がおぞまし過ぎる『タイムアタック』
◆全体的に冗長気味のボス戦(最初のボスですら、倒すまでに結構な時間を要する)
◆やや減少してしまった本編ボリューム(ワールドの総数が減った。ただ、全体的な密度は前作とほとんど変わりない)
◆息継ぎ、ローリングアタックなど、旧シリーズ経験者には不便さも感じさせる水中面
◆全曲聴けない上、ループもかからない謎仕様のサウンドテスト(音楽の完成度が高い今作でこの作りは…)
◆中途半端さが否めないファンサービス(前作に続いて未登場のクレムリン軍団、水中面が復活したのに何故か未登場のエンガードなどがそれに当たる)
▼Review ≪Last Update : 11/6/2016≫
「全部、雪のせいでこうなった。」

そして、現実でもザ・スノーマッズは暴れ回るのだった。(By:平成26年豪雪)


イギリスのレア社から、メトロイドプライムシリーズで知られるレトロスタジオへと開発元を改める形で製作されたスーパードンキーコングシリーズ最新作『ドンキーコングリターンズ』の流れを汲む続編。今回も開発はレトロスタジオが担当。更にニンテンドー3DSの『ドンキーコングリターンズ3D』を手掛けたモンスターゲームズが製作サポートで参加している。

正統進化に徹した丁寧な作り込みと高品質な音楽で魅せる良作だ。

ゲーム内容は前作『ドンキーコングリターンズ』を踏襲。主人公のドンキーコングとその仲間達を操作し、様々な仕掛けが張り巡らされたステージを攻略しながら、故郷の『ドンキーコングアイランド』を氷漬けにして制圧した海賊集団『ザ・スノーマッズ』の撃退を目指す、横スクロールのステージクリア型アクションゲームだ。
本編の流れも一緒。ワールドごとに用意されたコースを順番に攻略していく、『スーパードンキーコング』から連なるシリーズの伝統に則ったものになっている。システム周りも前作ベース。ダメージ制、主人公のドンキーコングをサポートする役割へと改められた相棒キャラクター、二人同時プレイ、やり込み要素用アイテムに刷新された『KONGパネル』等は今作にも引き続き採用されている。旧『スーパードンキーコング』シリーズより継承された100本集める事で残機が増える『バナナ』、冒険をサポートする『アニマルフレンド』、『バナナコイン』によるアイテム購入システムもそのまま。基本的には正統進化を行った作りだ。とは言え、『スーパードンキーコング』から『スーパードンキーコング2(及び3)』のように主人公まで交代する刷新はさすがに行われてないが。また、続編という事で前作から変更、新規に取り入れられたものもある。
一つに相棒キャラクター。前作ではディディ―コングがこのポジションに居たが、今回からディディーに次ぐもう一匹のキャラクターとして、『スーパードンキーコング2』、『スーパードンキーコング3』に登場したディクシーコングが登場。お馴染みの『ポニーテールスピン』のアクションで、ドンキーをサポートしてくれるようになった。但し、ジャンプ後に上昇するというアクションに変更されており、旧作とはまるで使い勝手が異なる。その為、旧作のボタンを押し続けていれば緩やかに下降できるアクションは実施できなくなってしまっているのだが、本編への登場はスピンオフと派生作、移植作を除けば1996年の『スーパードンキーコング3』以来、実に18年ぶりだけあって、存在感は十分。本編シリーズ初のドンキーとの共同戦線が見れる点でも、シリーズファンには見逃せないキャラクターと言えるだろう。
また、相棒はもう一匹いる。その一匹とは、何と『クランキーコング』!シリーズお馴染みのガイド兼説教役、マリオと戦った元祖ドンキーコングがプレイアブルキャラクターとして、満を持しての本編参戦を遂げたのだ。その為、二代目ドンキーコングと初代ドンキーコングの共同戦線が実現!過去のシリーズを遊んできたプレイヤーにとっては、大変感慨深いコンビが見れるようになったのだ。そして、アクションも杖を下に付き出してトゲ地帯を移動したり、その反動を活かして大ジャンプしたりなど、非常に個性的。コアなゲーム好きからすれば、ファミリーコンピュータでカプコンより発売された『わんぱくダック大冒険』及び『ダックテイルズ2』のスクルージを髣髴とさせるものになっている点でも面白く、強烈な印象を残す。ディディー、ディクシーの二匹よりも多少、癖があるだが、使い方次第ではスピーディなコース攻略が可能になる独特の特徴があり、使いこなすにつれて面白さが増していくキャラクターになっている。加えて現役ドンキーとの共演を始め、ネタ的な面でもインパクト抜群。特に初期のシリーズから遊んでいるプレイヤーなら、「この爺さん、マジで凄い…」と唸らされるだろう。こんな具合に今回は全部で三匹にまで相棒が増加。前作にも増して多彩なアクションを駆使してのコース攻略が楽しめるようになっている。また、増加に伴い、『DKバレル』もキャラクターのイニシャルに応じたものが用意されたほか、一定時間の感覚でイニシャルが切り替わるタイプのものも用意されるなど、多少ながら変化を遂げている。キャラクターごとにコースの難易度が変化するなど、攻略にも影響を及ぼす作りになっているのも特筆すべきところだ。まさに前作のシステムを更に奥深いものへと改めた格好。併せて、このようなシステムだからこそ成し得た複数のキャラクターと協力してコース攻略に挑むというゲーム性を引き立てる作りに進歩している。
新しい相棒以外にも新要素として、必殺技『コングパウ』が追加。今回からライフゲージの隣に『必殺技ゲージ』なるものがセットされ、これが満タンになった際、対応するボタンを押す事で画面内に居る敵に対し、特殊な攻撃を行う技を繰り出せるようになった。これにより、大量の敵に囲まれた時などを簡単に切り抜けられるようになり、ある程度の力押しが効くように。また、必殺技もディディーならば全ての敵を1UPバルーンにする、ディクシーならば回復アイテムにするなど、効果も異なるものになっている。ゲージを満タンにするにはバナナを100本にする必要がある為、そんな無暗やたらに繰り出せる訳ではないのだが、これによって前作の特色でもあった高めの難易度も少し緩くなり、アクションゲーム初心者に優しいバランスに。ある意味、難易度選択機能の役割も担っているとも言える、地味ながらも光る新要素となっている。
この他にも今回は水中面が復活。併せて地上と水中の二つで構成された『スーパードンキーコング3』を髣髴とさせるコースも登場し、バリエーションが多彩になった。但し、酸素メーターが表示され、それが尽きるとダメージを喰らってしまうほか、ローリングアタックを繰り出して敵へ攻撃できるという旧作とは異なる所も。また、攻撃可能になった事で『ドンキーコング64』まで本編シリーズ皆勤賞だったアニマルフレンドでカジキの『エンガード』も登場しないなど、シリーズファンにはガッカリな所もあったりする。満を持しての復活とは言え、ここはシリーズファンには賛否が分かれるだろう。それ以外にも前作では一発アウトだった『トロッコ』と『ロケットバレル』が最大二回まで耐えられるダメージ方式に、操作性がリモコン、リモコン&ヌンチャク以外にWiiUゲームパッド、WiiUPROコントローラに対応し、旧作に近い感覚で遊べるようになったという変更点もある。
見た目は前作ベースを模様替えしただけのような作りではある。しかし、相棒キャラクターの追加によるコース攻略の深化、水中面復活によるコースバリエーション強化、必殺技によるバランスの変化など、変わった所も幾つかあり、順当な進化を遂げている。ある意味、スーパードンキーコングシリーズらしい進化を施した続編。旧作を遊んでいたプレイヤーに懐かしい香りと驚きを提供し、新規プレイヤーにも改善された救済措置の数々で遊び易くも手応えのあるアクション体験を提供する、正統進化に徹した続編作品となっている。

そんな今作の魅力は前作から更に洗練された難易度、相変わらずのアイディア満載のギミックで構築されたステージ構成の二つだ。前者に関しては、前作が歴代シリーズの中でも屈指のえげつなさだった事から、今作にもその路線が継承されている事を危惧する経験者のプレイヤーが少なからず居るかもしれない。実際に継承されているのか?答えはイエスだ。今回も前作の路線を継承するが如く、難関に次ぐ難関が連続する構成になっている。
しかしながら、全体的には前作よりもマイルドなになり、何十回ものリトライを強いられるような場面は減少した。特にトロッコ、ロケットバレルの強制スクロールコースで一発アウト制が廃止されたのが大きい。前作は一階でも敵や障害物に接触してしまえば、問答無用でミスとなる苛烈さで、その手のコースに限って一瞬のミスすら許されぬ操縦が要求されるようになっていた。一部、心が圧し折られかねないほどの高難易度のコースもあり、中でも『コモリンのどうくつ』は前作経験者にとって、屈指のトラウマコースとして記憶に刻み込まれていることだろう。そんな苛烈過ぎるコースで必要以上にプレイヤーを苦しめてしまった反省からか、今回は極端にシビアな操縦が求められるトロッコ、ロケットバレルのコースの数が減ったほか、ダメージ制導入によってある程度ながら、力押しが効くようにもなり、比較的攻略し易い難易度に落ち着いた。決して、簡単になった訳ではなく、一部、プレイヤーの想像の範疇を超える展開を見せるコースもあるのだが、針の穴に糸を通すような繊細なプレイは要求されず、数度トライ&エラーを重ねていく内に突破できる程度の難しさに留められている。トロッコ、ロケットバレルのコースだけに限らず、通常のコースや復活した水中コースも然り。やはり厳しい局面はあるのだが、上級者並の腕前を要求するような場面は一切無く、冷静に対処するか、或いはショップで買える支援アイテムを使ってゴリ押しをすればすんなりと突破できる程度の難易度で統一されている。なので、どこぞの教師のように「絶望した!」と絶叫したくなる頻度も低下。
スーパードンキーコングシリーズと言えば、手強い難易度も一つの売りで、開発会社がレア社からレトロスタジオへと変更された前作にして、11年ぶりの新作でもその伝統は引き継がれた。しかし、あまりにもそこにこだわり過ぎたのか、気が付けば歴代シリーズで登場したトラウマコースと同等の難易度のコースが10種類以上も存在する、とんでもない内容になってしまっていた。それ自体が大きな魅力でもあったのだが、やはりアクションゲームが不得意な人には辛過ぎたのも事実。実際にニンテンドー3DSで発売された『ドンキーコングリターンズ3D』では、難易度を抑えた『ニューモード』なるものが導入されたぐらいだ。その経緯を踏まえ、今回はバランスの取れた難易度を目指すかのような作りでまとめられた。結果的にインパクトが薄れたところもあるが、行き過ぎた手強さの追求を抑えた事自体は幅広いプレイヤーに遊んでもらう為の措置として妥当。逆に手強いコースは正規ルート外、隠し系のコースに集中させるようにした事により、レベルデザイン的にも適切な構成となっている。簡単にはさせないけど、極端に手強いものは正規ルートから外す。結果的にこうした事でバランスは飛躍的に良くなり、更に旧スーパードンキーコングシリーズに近付いた難易度になったのは確実な進歩にして原点回帰と言ってもいいだろう。手応え自体は残すけど、やり過ぎない。実際にその配慮が際立つ具合に今作はまとめられており、非常に心地良い手応えを味わえるドンキーコングになっているのだ。
また、難易度が抑えられたからと言って、コースの印象が薄くなった訳ではない。今回も奇想天外なアイディアがたっぷり盛り込まれたコースが盛り沢山だ。特に今回はスクロールに3D表現が取り入れられているのが大きな見所。シリーズ四作目の『ドンキーコング64』宜しく、急に3Dアクション的な視点になったり、奥方向にスクロールしたりなど、フル3Dで作られたスーパードンキーコングだからこその演出が楽しめるようになっている。前作も画面奥への移動など、3Dを活かした仕掛けはあったが、今作は更にそれを発展させた感じだ。それによって『ドンキーコング64』ソックリな場面もあるなど、シリーズファンなら感動を覚えるような展開があるのも大きな見所だ。まさに2Dと3Dの融合とも言うべき仕上がりには、歴代シリーズの重みと時代の変化を存分に実感させられるだろう。3Dだけでなく、コース上のギミックも新しいものが沢山導入されている。ロケーションも風車の村、山、熱帯草原地帯と言った新しいもののほか、渓谷、雪原と言った旧作から復活を遂げたものまで実に多彩。少しネタバレになるが、終盤には『ドンキーコングアイランド』が登場し、前作で登場したロケーションが奇抜な姿に改められてプレイヤーの前に立ちはばかる。そのビジュアルたるや、前作経験者ならば懐かしさと同時に今回の敵の卑劣さというものを実感させられるはず。そんなストーリーとちなんだ描写もパワーアップしており、いつになく波乱万丈で印象深い冒険が楽しめるようになっているのも必見だ。
その一方でコースの数が前作から減少してしまったほか、前作にあった救済措置である『お手本プレイ』が廃止。やや冗長なコースが増えるなど、劣化を遂げてしまった箇所もある。復活を遂げた水中面も酸素ゲージの影響でプレイ感は全く異なっているだけでなく、過去のシリーズで活躍をしていた『エンガード』の立場を奪うシステムまで導入されてしまっているなど、シリーズファンの期待を裏切るだけでなく、否定するような作りになってしまっているのは素直に惜しまれるところではある。何気に今回もクルール率いる敵がクレムリン軍団でないのも、ファンにしてみればガッカリかもしれない。
しかし、アクションゲームとしての進化具合は続編を名乗るだけにある適切さ。特に難易度は本当に秀逸な調整になっているので、前作がきつかったから今回は…と思う方ほど、遊んでみて頂きたい。その手応えには、間違いなく昔のスーパードンキーコングシリーズが脳裏を過ぎるはず。前作にも増して、黄金期の手応えと香りを堪能できるはずだ。

更に今作には特筆すべき売りがある。それが音楽!何と、過去のスーパードンキーコングシリーズで数多くの名曲を手掛けてきた伝説のサウンドクリエイター、デビッド・ワイズ氏が今作のメインコンポーザーを担当!ゲームボーイアドバンス版の『スーパードンキーコング3』以来となる、シリーズへのカムバックを果たしたのだ!ワイズ氏は2009年頃に古巣のレア社を退社しており、その後はフリーのサウンドクリエイターとして活動していた。その立場に改まった事で今回、スタッフの一人として復活!あの雰囲気たっぷりで印象深い楽曲が今作にて復活したのだ。しかも、今回は新曲中心の構成。アレンジは僅かに留められ、新しいドンキーコングを存分に堪能できるラインナップへと刷新されているのだ。そして、当然とも言うかのように名曲揃い!改めて、ワイズ氏の手腕の高さ、今なお枯れぬセンスの高さを確認させられる素晴らしい出来となっている。しかも、ほぼ全てのステージに固有の曲が用意されているというこだわりぶりだ。如何に今作が音楽に相当な力を入れているのかを察する事ができるだろう。シリアステイストの曲も多く、先に触れた終盤の『ドンキーコングアイランド』はその手の曲の宝庫になっている。どんな曲が用意されているのかは実際に遊んでのお楽しみだが、シリーズファンから新規のプレイヤーに限らず、その完成度の高さにはワイズ氏あってのドンキーシリーズという事を確信させられること請け合い。この音楽目的で遊んでも決して後悔はしないほどなので、是非とも要チェックである。
また、前作同様にサウンドテストのおまけも実装済みだ。しかしながら、全部の曲が聴ける訳ではない不完全仕様なのが度し難い。なまじ、今回は音楽の完成度がずば抜けて良いだけに、何でこんな作りにしてしまったのか、企画したスタッフを問い質したいほどだ。他にロード時間も少し長くなってしまっている。特にゲーム開始時のロードの長さは大気圏から地表がハッキリと見える所まで下降しているも同然なほどで、地味にストレスが溜まる。前作もロード時間は存在したが、さして気にならない程度だっただけに、何故、このような事になってしまったのかが疑問だ。仮にHD化の弊害によるものとしたら、渋い顔にならざるを得ない感じだ。
操作周りも従来型コントローラ(WiiUゲームパッド、WiiUPROコントローラ)で遊べるようになり、遊び易さが増したが、キーアサインが旧作準拠になってない(ローリングアタックの発動がZRボタンであるなど)ところは、賛否が分かれる。また、今回もリモコンとリモコン&ヌンチャク操作にも対応しているが、これは要らなかった。ゲームパッド、PROコントローラの操作が適切な作りなのに、何故、批判のあった操作を引き継ぐのか。前作経験者への配慮…と言えなくもないのだが、双方共に癖が強過ぎるので、普通に切り捨てて頂きたかった。結果的に前作の欠点が継承されてしまったのは惜しまれる限りだ。

また今作、WiiUのゲームでありながら、ハード特有のギミックを何ら使ってない所にも違和感を覚える。強いて言うなら、OFF-TVプレイができる程度で、テレビ側でプレイしている際は何と画面非表示。同じ画面を映し出す事も無ければ、サブ情報の表示すらしないという、酷く素っ気ないものになってしまっているのだ。別に絶対にゲームパッドの機能を使わなければと、こだわる必要は無いし、ゲーム的にも下手に対応させなくて綺麗にまとまった所もあるだが、それにしても非表示は思い切り過ぎな気がしてならない。せめて、コース全体図とか、KONGパネル等の収集アイテムの進捗情報ぐらい表示しても良かったのではないだろうか。同じ二画面の3DS版『ドンキーコングリターンズ3D』がそのような事をしていただけに、変な割り切り方には単純にガッカリさせられるばかりだ。何気にこのゲームパッド側のスピーカーを入れておかないと、敵を踏んだ際の「ポコッ」という効果音が流れないというのも謎。これはテレビ側でも聞こえるようにするものだろう?何でこんな事をしたのか、普通に意味不明としか言い様がない。
それ以外にも冗長になりがちなボス戦など、調整の甘さと前作からの進歩を感じない所も少なからずある。とは言え、ゲーム自体の出来は素直に良作レベルで、より洗練されたゲームバランスとアイティア満載のコースでたっぷり楽しませてくれる内容に仕上がっている。加えて、旧シリーズのスタッフの一人で、数多くの名曲を生み出してきたデビッド・ワイズ氏による新曲も楽しめるなど、ゲーム以外の面でも大きな魅力を備えた今作。前作経験者からシリーズファンは勿論のこと、手応えのあるアクションゲームを求めているプレイヤーなら是非とも遊んでみて頂きたい一本だ。先の繰り返しになるが音楽目的で遊ぶのも有り。最新のゲーム機であっても絶大なデビッド・ワイズ氏の存在感も併せて堪能するべし!
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