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≫メタルギアソリッド3 スネークイーター
■発売元 KONAMI
■ジャンル タクティカル・エスピオナージ・アクション
■CERO D(17歳以上対象) ※過度の出血、暴力描写等あり
■定価 7140円(税込)<Best版:1800円(税込)>
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 メモリーカードの残り容量によって変化(※1つ作成に95KB以上使用、ディスク2では1つ作成につき40KB以上使用)
■その他 プレイステーション2専用メモリーカード対応、アナログコントローラ専用、ディスク2枚組(※コナミ殿堂セレクション版のみ)
■総説明書ページ数 92ページ(※コナミ殿堂セレクション版)
■推定クリア時間 12時間〜14時間(エンディング目的)、45〜60時間(完全攻略目的)
1962年10月16日、キューバにソビエト連邦(ソ連)の核ミサイルが配備されるという情報が米国大統領の元に届けられ、現実と課した核戦争勃発の恐怖が世界を震撼した。
必至の交渉の末、ソ連はキューバからのミサイル撤去に同意。
後に言われる『キューバ危機』、人類未曾有の脅威は回避されたかのように思われた。

だが、そこには一つの密約があった。西側に亡命した設計局局長ソコロフのソ連への返送である。米政府はこれに同意し、ソコロフはソ連へと返還されるに至った。
しかし、ソコロフは『悪魔の兵器』の開発者であり、彼の返還はソ連の兵器開発再開を意味していた。それが仮に完成すれば、人類は本当の恐怖を思い知る事になる。

1964年8月24日、事態の重要性を認識したCIAはソコロフ奪還計画を立案。
隠密部隊『FOX』とそのエージェント、ネイキッド・スネークをソ連へと送り込んだ…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆前作譲りの敵に見つからずに行動して任務を遂行する、緊張感抜群のゲーム性
◆フル3Dとなり、慎重な隠密行動が一層求められるようになったフィールドマップ
◆周囲の背景に解け込む、自然環境を舞台とした設定が効果的に活かされた新たなステルス要素『カムフラージュ』
◆ジャングルに洞窟、要塞など、これまで以上に多彩で冒険している感覚が一層増したフィールドロケーション
◆ロケーション増強と冒険感強化で、プレイヤーを更に飽きさせなくなった珠玉のレベルデザイン
◆食料の確保に怪我の治療など、独特の生々しさが異彩を放つ新システム『サバイバルビュワー』
◆敵を羽交い絞めにして尋問するなど、技の多彩さが面白い新格闘アクション『CQC』
◆特撮番組かと錯覚するほど、常軌を逸した技の数々を披露する奇人変人なボス達とその戦闘
◆仕組みは変わったが、違和感なく手に馴染む触り心地の良さは健在の良好な操作性
◆潜入の面白さと難しさを絶妙に表現した難易度設定(選択機能もこれまで通りに実装)
◆充実感が増した総計ボリューム(ムービー込みでもかなりの満足感。やり込み要素も万全)
◆ハード性能の限界を突き詰めた美麗なグラフィック(特に自然環境全般は必見)
◆過去のシリーズと同様に緩急の付け方の上手さが光る音楽
◆王道スパイ映画の路線としつつ、意外性も適度に盛り込んだ見応え十分のストーリー
◆シリーズ過去最高と言っても良いほどネタ満載の無線画面(声優陣の演技も必見)
◆迫力あるカット割りもさる事ながら、量と長さも含めてバランスが良くなったムービーデモ

--- Bad Point ---
◆新システムなどの大量追加により、若干高まったゲーム全般の敷居の高さ
◆作業感の強さとテンポを殺ぐ点がタマにキズな『サバイバルビュワー』
◆やや煩雑で見栄えがイマイチなメニューインターフェース(ゴチャゴチャしている)
◆技が多彩な反面、発動の操作が多少複雑なCQC(特に尋問の操作)
◆リアリティと緊張感は増したが、解除までが長過ぎる感も否めない敵発見時の警戒モード
◆少し過激過ぎる感も否めない暴力描写(特に中盤終わりの拷問シーン)
◆無線切り替え時に発生する約5秒ほどのロード(これまでよりも遅くなってしまっている)
▼Review ≪Last Update : 9/30/2012≫
「で、味は?」

(この食いしん坊…。)


敵に見つからないよう行動する緊張感抜群のゲーム性と濃い目のストーリーとムービーシーンで根強いファンを獲得し、前作ではまさかの主人公交代劇で賛否両論を巻き起こした戦略諜報アクション(ステルスアクション)ゲーム、メタルギアソリッドシリーズ最新作。

ゲーム性からシステムに至るまで完全一新。
擬態をテーマとした潜入が異彩を放つ、シリーズ屈指の力作だ。

ゲーム内容は前作と同様、敵本拠地への潜入を目指す戦略諜報アクション(ステルスアクション)ゲーム。主人公のネイキッド・スネークを操作し、巡回する敵兵の裏を掻い潜ったり、強敵との戦闘と言ったイベントを乗り越えながら任務の遂行を目指すというものである。『かくれんぼ』をテーマとしたゲーム性はこれまでのシリーズと変わりなし。また、前作『メタルギアソリッド2』で初登場した『麻酔銃』、正確な射撃を行う際に便利な『主観撃ち』の二つは今作にも引き続き採用されている。だが、それ以外の部分はこれまでのシリーズとは異なるものへと刷新。新生メタルギアソリッドと言っても良い、全く新しいものへと作り変えられている。
まず最初に画面構成だが、前作及び前々作までは3Dグラフィックで描かれた2D見下ろし型、固定カメラ方式の視点だったのが三人称視点のフリーカメラ方式へと変更。いわゆるサード。パーソン・シューティング(TPS)でお馴染みの視点に改められた。これに伴い、フィールドマップの作りにしても3Dの箱庭空間に改められたほか、右スティックによるカメラ操作も導入され、360度自由に視点を動かせるようになった。更に敵兵の視界も、マップが3Dになった事により、その範囲が大幅に拡大。真横だけでなく、上や下からもスネークを補足するようになっている。その為、今回は周囲をよく観察した上での隠密行動が求められるよう、ゲームバランスも一新。極め付け、今回はストーリーの時代設定の都合により、敵兵の動きを表示する『ソリトンレーダー』が無いので、なおの事、慎重な行動が求められる。カメラとマップの一新で自由に動けるようになった反面、潜入に関してはそれが厳しさを強化する方向へと進化し、全体的な緊張感はこれまで以上に倍増。ある意味、隠密行動の現実味が深まったとも言える、非常にリアリティ溢れる画面構成へと進歩を遂げている。
更に今回の潜入の舞台となるのは、要塞などの人口建造物ではない。人口建造物も一応、舞台になるのだが、それ以外にもジャングル、洞窟と言った自然環境が登場。バリエーションが増えたのである。これに伴い、潜入のスタイルもこれまでとは全く異なるものへと変化。ジャングルを始めとする自然環境では、人口建造物のように曲がり角に身を隠して敵をやり過ごすと言った事ができないなど、今までとは違った行動が求められてくるようになっている。極端に言えば、隠れる場所皆無。敵から丸見えも同然な環境になっているのだ。そんな環境で一体、どうやって身を隠して敵を欺くのか。どう考えても詰んでいるようにしか見えないがちゃんと解決策はある。それこそが今作最大の特徴にして目玉とも言える新要素、『擬態(カムフラージュ)』。周囲の環境に溶け込み、敵の目を騙しながら隠密行動を行っていくのである。周囲に解け込むという点で何処と無く、難しそうなイメージがあるが、仕組み自体は至って単純。基本的にメニュー画面こと『サバイバルビュワー』を開き、現在の環境に適したユニフォームを選択・装備する形で擬態を行っていく。いわゆるでRPGで言う所の装備切り替えシステムのようなもの。意外と手軽な作りとなっている。周囲の風景に溶け込めているかどうかは画面上部の『カムフラージュ率』と呼ばれるパーセンテージで表示されるようになっており、これが100%だと完全に擬態できている事を意味する。逆に低過ぎると周りから見え見えという事。その為、この数値を如何に100%近く保てるかが隠密行動の鍵になってくる。ジャングルなら緑のユニフォームを、洞窟なら茶色のユニフォームをと言った具合に切り替え、自然に溶け込んでいくというその過程はこれまでのシリーズには無い、敵の目を騙すという新鮮で不思議な快感が満載。人口建造物では決して味わえない手応えと面白さが詰まった、大変ユニークなシステムになっている。
また、『サバイバルビュワー』内で行う『キュアー』、『フード』の二つも目玉の新要素の一つ。今回は潜入の途中、スネークが怪我を負ったり、スタミナ切れを起こすという事がああり、その応急処置をこの二つの項目で行うのである。特に特に後者『フード』は、実際にマップを徘徊する蛇などの動物、キノコを始めとする植物を捕獲・回収し、それを食べるという非常に生々しいものになっている。当然ながら、現地調達という事で食べ物の中には毒が含まれているものも存在。それを食べるとスネークのステータスに宜しくない影響が出る事もあれば、最悪、死に至ってしまうなんて事すらある。そんな潜入とは別の『サバイバル』な要素も今作には盛り込まれており、メインの潜入以外でも別の切り口でプレイヤーに緊張感を与える。まさに地獄を生き残るとも言えるその異様な恐怖はシリーズファンどころか、アクションゲーム好きも必見。こんな衝撃的な要素も今作には実装されている。
他にも尋問などの多彩な攻撃が可能となった新しい格闘攻撃『CQC』などの新要素が充実。前作からの要素も、麻酔銃は消音機に耐久力が設けられ、下手に撃ちまくる事ができなくなったほか、敵に発見された後の警戒も持続式になり、よりシビアな作りに一新している。前作が初代『メタルギアソリッド』の正当進化系とすれば、今作はまさに完全新作と言ったところ。何もかもが新しく、シリーズ経験者から未経験者まで新鮮に楽しめる内容に仕上げられている。しかもナンバリングの続編でありながら、ストーリーも前作の続きではあらず。作品としての入口の広さもシリーズ屈指だ。

そんな今作の魅力は、何と言っても擬態こと『カムフラージュ』が醸し出す新しい潜入の緊張感、ジャングルや洞窟と言った自然環境の舞台追加に伴って大幅に向上した、アクションゲームとしての冒険感の二つに集約される。
前者は環境に溶け込んで敵の目を欺くという、その基本的な作りからして既に新鮮。まるで自らカメレオンになったかのような不思議な手応えと優越感を満喫できる。そう環境に溶け込み、気付いてない敵に咄嗟に不意打ちを仕掛ける事も、要塞などの人口建造物では到底味わえない面白さと緊張感に秀でており、新しいステルスアクションの形を確立しているのが実に見事。正当進化系ではない、シリーズ経験者と未経験者共に新しさを共感できるメタルギアソリッドを作り上げようとする、強い意気込みとこだわりに満ち溢れたものとして完成されている。
また、新しい格闘攻撃『CQC』により、敵兵への不意打ちがより奥深いものへと進化している点も見逃せない。単に背後を取って気絶させるだけでなく、ナイフで脅して情報を聞き出したり、羽交い絞めにした状態で攻撃から身を守る盾(人質)として利用するなど、これまで以上にこちらの思うがままに翻弄させる事ができる。邪魔になるから気絶させるのではなく、時には利用してまで難局を突破するその過程もまた、新しいメタルギアソリッドとしてのゲーム性を演出。その華麗なる攻撃と多彩な選択肢には、007などのスパイ映画が好きな方ならばドツボにハマること間違いなしだ。
そして後者、自然環境などの地形増加も本編の展開に起伏を付ける要素として見事に機能している。これまでのシリーズでも随所に特殊なミッションを仕込むと言った趣向を凝らしたレベルデザインでプレイヤーを終始、楽しませてくれたが、今回は地形の増加でそれがより仰々しいものに進化。最初はジャングルだったのが、少し進むと廃棄された工場になったり、更にそこから先に進むとトンネルがあり、抜けると同時に敵の要塞が「ドドン」と現れたりと、もの凄く「冒険している」という手応えを実感できる構成になっている。
また、この構成ならではの潜入スタイルの変化も大きな見所だ。ジャングルでは周囲の環境に溶け込む『擬態』がカギになるのに対し、要塞を始めとする人口建造物では物陰への退避と言った『かくれんぼ』を意識した潜入がカギになるなど、地形ごとに違うステルスアクションが楽しめるので、一粒で二度美味しい充実感を堪能できる。更に地形ごとに個別のネタが凝らされているのも面白い。ジャングルでは沼地限定でワニが登場したり、岩山ではヘリコプターが巡回している為、空からの警備にも神経を尖らさなければならないなど、それぞれの地形だからこそできたネタの数々がふんだんに盛り込まれている。それらの脅威を回避しながら敵地への潜入を目指す過程もまた、『カムフラージュ』と同様、新しいメタルギアソリッドとしてのゲーム性を演出しており、プレイヤーに新鮮な体験を提供してくれる。
また、今回はシリーズ恒例のボス戦も大変な事になっている。はっきり言って「特撮か!?」と突っ込みたくなるほどに面子が濃い!数百匹の蜂を操る覆面男、炎の使い手、幽霊(!)などなど、まさに奇人変人ショー。さすがにふざけ過ぎな所があるのも事実だが、そうも無駄に濃い奴らが立ちはばかる為に自然とコントローラを握ってしまう。戦い自体も珍妙なものが盛り沢山で、良い意味でプレイヤーを失笑させてくれること間違いなし。そんなもはやステルスアクションですらない展開が楽しめるのも、今回の見所の一つだ。
前作までの人口建造物を主体としたレベルデザインでも、十分過ぎるほどのネタとイベントでプレイヤーを楽しませてくれたが、今回は更にその幅が広がってネタの範囲も増えたので、密度とやり応えは劇的に強化。それも、地形ごとに違った潜入が求められるなど、一筋縄では行かなくなっている。単に地形が増えただけでも十分なのに、それ以上のネタを徹底的に仕込むというこだわりぶり。その作り込み具合と密度には、良くも悪くも舞台となる地形が増えた事の脅威というものを思い知らされるだろう。
装備の切り替え、栄養管理など、前作までシンプルだった所が複雑な作りへと改められた事により、システム面での敷居が上がったのは否定できず、そこは大きなマイナス点ではある。しかし、マンネリを打破する為の試みを多数行っている事、それらの要素が自然且つ綺麗にまとめているのには素直に驚かされるものがある。それでいて、シリーズならではの魅力もしっかり残した上で、猛烈に濃いものに仕立て上げるという徹底振り。そのしっかり作り込まれた内容には、本当に製作スタッフの手腕の高さを痛感されられる次第だ。まさに究極進化系。シリーズの新たな方向性と面白さを突き詰めた作品として、申し分のないものに仕上げられている。

操作性も良好。画面構成とカメラ操作全般こそ変わったが、基本は前作のものを継承しており、快適にスネークを動かす事ができる。ただ、『CQC』の操作がやや複雑で、一定の慣れが必要とされるのは残念。特に尋問の操作はもう少し簡略化して欲しかったところだ。
難易度に関しては概ね問題なし。いつも通りの適度な歯ごたえと緊張感を味わえるバランスにまとめられている。無論、難易度選択機能も実装。一番低い難易度では『カムフラージュ』までサポートする反則紛いな麻酔銃が登場するなど、初心者対策も入念に図られており、手軽に潜入の醍醐味を堪能できるようになっている。
ボリュームも基本的には前作と大差はないが、ジャングルなどの地形が増えた事で全体的な充実感が倍増。また、不殺プレイ、最高難易度への挑戦と言ったやり込みも充実。今回も遊び込めば遊び込むほどに奥深さが増していく、スルメな内容にまとめられている。
グラフィックも非常に綺麗。特にPS2のハード性能の限界を突き詰めた、鬱蒼としたジャングルの描写は必見。その他の人口建造物などの地形も今まで以上に泥臭いものとして描かれていて、サバイバル要素を追加したメタルギアソリッドとしてのらしさに富んでいるのが非常に印象的だ。音楽も魅力溢れる楽曲が満載。中でもオープニングで流れる、思いっきり007シリーズのオープニングを意識したテーマソングは必聴の価値アリだ。

シリーズお馴染みの濃い目のストーリーも前作の複雑路線から一転。王道のスパイ映画を髣髴とさせる内容にシフトし、大分分かり易くなったほか、先に紹介した奇人変人なボスキャラクター達の存在もあってエンターテインメント色が一層濃くなっている。但し、複雑な人間関係などのお馴染みの濃い目の描写も満載。印象的なシーンも今回は盛り沢山で、中でもラストのシーンは人によっては涙無しには見られないだろう。
その他、『無線通信』もサポート内容からネタ要素に至るまで大幅に進化。今回は仲間の面子が無駄に個性的なのもあり、お笑いネタも今まで以上に盛り込まれている。中でも主人公ネイキッド・スネークのお茶目の人柄は必見だ。
全体的にシステム周りが複雑になり、敷居は上がったがゲームとしては着実に進化どころか、新作と言っても差し支えないほどに一変。『カムフラージュ』がもたらす新しい緊張感と冒険している手応えに満ちた濃密なレベルデザイン、そして優れたストーリーなど全てにおいて優れた完成度を誇る今作。シリーズファンは言うまでも無く、これまでメタルギアソリッドシリーズを経験した事のないアクションゲーム好きな方も是非、体験してみて頂きたい力作だ。それまでとは趣の異なる新しいメタルギアソリッドがここにある。お薦めの逸品です。
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