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≫BioShock(バイオショック)
■発売元 スパイク(現:スパイク・チュンソフト)
テイクツー・インタラクティブ・ジャパン(※2K Collection版)
■開発元 2K Boston / 2K Australia(Irrational Games)
■ジャンル アクションRPG
■CERO D(17歳以上対象) ※過度の暴力、犯罪、出血描写等あり
■定価 6800円(税別)<Spike the Best版:2800円(税別)>
<2K Collection版:2880円(税別)>
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 HDDの残り容量によって変化
■必要HDD容量 25MB以上
■その他 トロフィー機能対応、追加コンテンツ対応(※952円(税別))
■総説明書ページ数 14ページ
■推定クリア時間 12〜20時間(エンディング目的)、40〜55時間(完全攻略目的)
1946年11月5日、科学者アンドリュー・ライアンは大西洋中央に海底火山を原動力として自立する水中都市を建設。「携挙」を意味する「ラプチャー」と名付けた。その目的は科学者、芸術家、エンジニアと言った人々が才能を発揮できる最先端の環境と、宗教、政府による規制に縛られない真の自由を与えることで、新たな成果を出してもらう為のものだった。その為、冷戦時代の科学者にとってラプチャーはまさに理想郷だった。
しかし、女性科学者ブリジット・テネンバウムがウミウシの一種から発見された、人間の能力を飛躍的に変質させる物質「ADAM(アダム)」の抽出に成功したことで、都市では研究競争が勃発。グループ間で武力闘争が起き、遂にはそれぞれのチームが「ADAM」を用いて生体改造を実施するほどになる。だが、その副作用によって人々は人間としての精神を失うことになり、最終的にラプチャーは元人間の怪物「スプライサー」が跋扈するディストピアと化した。更に彼らが殺し合いを繰り返す影響で漏水、水圧による破損も都市全体に広がり、陥没は時間の問題となっていた。

それから時は流れて1960年。「ジャック」と呼ばれる青年は、大西洋上を飛行する旅客機の機内で家族の写真、プレゼントを眺めていた。その後、何らかの原因で旅客機は大西洋上に墜落し、大破。炎上する。幸運にも生還したジャックは、墜落現場近くにあった灯台に辿り着く。そして、中に入るとそこには球体の潜水艇が置かれていた。興味本位で中のレバーをジャックが倒すと、潜水艇が起動。そのまま彼はディストピアと化した「ラプチャー」に行き着いてしまう。そして、潜水艇が都市に到着すると同時に、ジャックは目前で都市の人間がスプライサーによって惨殺される瞬間を目撃してしまう。その直後、潜水艇にあったラジオを通じて「アトラス」という男が語りかけてきた…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ファーストパーソンシューター(FPS)スタイルながら、豊富なRPG要素で独特のプレイ感を表現したゲームシステム
◆プレイヤーを圧倒させる衝撃的な展開が描かれた、見所満載のストーリー(特に中盤が必見)
◆オリジナルの海外版の凄さを日本のプレイヤーにも共感してもらえるよう、非常に丁寧でセンスに溢れた翻訳と細かなアレンジが炸裂した職人技のローカライズ
◆多対一を避け、一対一に持ち込む戦術が要求される独特な戦闘システム&バランス
◆水に発射して敵を感電させたり、行く手を阻む氷を溶かすなど、戦闘と探索で幅広く活躍するほか、バリエーションの多彩さも魅力の超能力こと「プラスミド」
◆探索型アクション的な手応えを演出し、本編に起伏を与える強化アイテム「トニック」
◆近接攻撃主体、更に種類によっては属性も付加されていたりなど、独特の設定が異彩を放つ敵「スプライサー」
◆見た目からは想像もつかない機敏な動き、苛烈な攻撃手段でプレイヤーにトラウマを植え付ける強敵「ビッグダディ」
◆自身の強化の為に少女の命を奪うか、救うかの究極の選択が求められる強化アイテム「ADAM(アダム)」奪取イベント
◆銃器のほか、「レンチ」と言った近接タイプも用意された武器周り(各武器のデザインと設計が物語の舞台となる1960年代に忠実なものになっているのも必見)
◆奇抜ながら、緻密な設定と時代考証の妙が光る、物語の舞台となる海底都市「ラプチャー」
◆荒廃した海底都市を生々しく描く作り込みが光るグラフィック(特に血痕の描写が圧巻)
◆メインキャラクターだけでなく、敵の「スプライサー」までしっかり日本語吹き替え仕様にしたこだわりのボイス演出
◆長すぎず、短すぎずの程よい密度に抑え込められた本編ボリューム
◆戦闘から探索、謎解きまで、適度な塩梅で散りばめられた工夫が光るレベルデザイン

--- Bad Point ---
◆やや長めのロード時間(特に別のエリアに進んでからの切り替えが遅い)
◆衝撃的ではあるが、終盤にかけて急失速するストーリー(締め括りが悪くないのが救い)
◆描写は圧巻だが、苦手な人には応える血痕、惨殺死体の描写(正直、あまりにも鮮烈なので、人によってはレーティングの設定は適切なのかと疑問符が浮かぶ可能性すらある)
◆狙い撃ち(エイム)のアサインに難のある操作性(R3を押し込むというのがやり難い)
◆本編を進める度、増大していく不穏な感情を抱かせるセーブ容量(最終的には25MBを超過する…)
◆弾の補充機会が限られている所為で、近接武器が優位に立ち易い武器バランス
◆表示位置の奇妙さもあって、世界観の雰囲気を壊している感が否めない看板の日本語字幕表示
▼Review ≪Last Update : 10/29/2017≫
恐縮だが、何も調べないで貰えるかな。

これから遊ぶというのなら、そうして頂きたい。


PC向けSFアクションホラーRPGとして発売され、高評価を得た『System Shock 2(システムショック2)』をベースに制作された、完全新規のアクションRPG。開発はIrrational Games(イラショナル・ゲームズ)。テイクツー・インタラクティブの傘下に入る形で制作された為、本編では「2K Boston / 2K Australia」表記になっている。国内版の販売はスパイク(現:スパイク・チュンソフト)。本作PS3版は、先行したXbox360版に続く形で販売された移植作品に当たる。

RPG要素の濃いゲームシステム、巧妙なストーリーで魅せる狂気の傑作だ。

ゲーム内容は、3Dの一人称視点で繰り広げられるファーストパーソンアドベンチャー(FPA)。飛行機事故から逃れた末、海底都市「ラプチャー」へと迷い込んでしまった主人公「ジャック」となり、無線を介して支援を呼び掛けてきた仲間「アトラス」と共に脱出を目指すというものである。本編はアトラスからの無線連絡に従い、ラプチャー内の施設などを歩き回って目標(ミッション)を遂行していく形で進行。フィールドは広大な閉鎖空間となっており、そこを隅々まで探索していくのが主となる為、ゲームデザイン的にはアクションRPGの体裁が強いものになっている。
システム周りも同様にその色が強い。見た目こそファーストパーソンシューティング…FPSだが、行く手を阻む敵を倒すとお金が手に入り、それで武器、弾薬、消費アイテムの購入ができるなど、RPG的な要素が実装されている。無論、プレイヤー自身のステータス強化要素もある。ただ、経験値によるレベル制ではなく、「トニック」となるアイテムで強化を図るというもの。身体能力を向上させる「フィジカルトニック」、アイテム購入額の割引などの効果を及ぼす「エンジニアトニック」、戦闘能力を高める「コンバットトニック」の三種類が作中には用意されており、これらを手に入れてプレイヤーの能力を上げていく形となる。いわゆるアクションアドベンチャー方式。或いは、探索型アクションのアップグレードシステムをなぞった仕組みになっている。『ゼルダの伝説』、『メトロイド』的なものと例えれば、人によっては想像し易いかもしれない。
敵との戦闘もRPGの影がチラつく。基本はFPSスタイルで、ピストル、マシンガンと言った銃器が使えるのだが、それとは別に「レンチ」なる近接武器が存在。更にある程度、本編が進むと「プラスミド」なる超能力をプレイヤーが会得し、それも武器の一つとして扱う形になる。「プラスミド」には電撃を発射する「エレクトロボルト」、炎を放つ「インフェルノ」、物体を手元に引き寄せる「テレキネシス」など、複数の種類が用意されており、敵を素早く退けたりする際に活躍する。中には「インフェルノ」のように行く手を阻む氷を溶かすなど、取得によって行動範囲が広がる恩恵をもたらすものも存在する。使用に当たっても「EVEゲージ」と呼ばれる青い専用のゲージを消費し、回復させるにもアイテムが必要になったりと(ちなみに体力ゲージの回復に関してもアイテムが必要となる)、何処となくRPG風。同ジャンルで言う所の「魔法」を意識させる能力となっていて、FPSスタイルでありながら、どこか異なる手応えをプレイヤーに意識させる作りになっている。
また、敵である「スプライサー」も独特。というのも、彼らは近接攻撃で襲い掛かってくる。その為、戦闘は常に一対一の構図となる。加えて彼らには体力も設定されていて、戦闘に入るとそのゲージが画面上に表示。それを空にしないと倒せないのだ。おまけに打たれ強い。なので、多対一で戦おうとすればタコ殴りにされかねない。その為、集団戦を避ける為、各個撃破を意識して立ち回っていくのが基本戦術となるのである。おまけに彼らには属性が設定された者も存在。その種に対しては相反する属性の「プラスミド」で怯ませなければならないなど、攻撃の使い分けも求められてくる。そんな設定が施されているのもあって、見た目とは裏腹にFPS特有のシューティングの手応えは薄い。勿論、銃器で攻撃してくるスプライサーもいて、それに対してはこちらも銃器で応戦する形になるが、基本的には集団戦を避けるよう立ち回り、属性相関も考えて立ち回るのがほとんど。それもあって、RPG的な香りを漂わせる敵になっている。まさに「ファーストパーソンアドベンチャー」と称した通り。仕組みから対峙する敵に至るまで、それを意識させる作り込みが図られているのである。
そして、その事実をより意識させる敵が本作には登場する。それが謎の少女「リトルシスター」と巨大な潜水服に身を包んだ護衛「ビッグダディ」。またの名を「歩く死亡フラグ」である。この二人はラプチャー内の至る所に二人一組で歩き回っている。ただ、こちらから攻撃を仕掛けなければ彼らが襲い掛かってこない。なので、何もしなければ脅威ではない…のだが。リトルシスターはトニックの強化、新たなプラスミドの入手に当たって必要な物質「ADAM(アダム)」を持っており、彼女を「殺す」ことによってそれを入手することができるのだ。なので、いずれかを実施するのなら、彼らに攻撃を仕掛けなければならない。だが、攻撃を仕掛ければ、瞬時にビッグダディが戦闘モードに移行。彼との戦闘に突入する。よって、ADAM入手の前には彼を倒さなければならないのだが、これが非常に強い。どう強いのかと言うと、その巨体からは想像もつかない俊敏な動きでプレイヤーに襲い掛かり、片手に装着した「ドリル」で風穴を開けようとしてくるのだ。なので、彼との戦闘は必然的に死闘に。まさに「歩く死亡フラグ」の例えを実感させられる、トラウマ必至の展開になるのだ。そんな死闘の末にビッグダディを倒せれば、リトルシスターに手を出せるようになる。彼女には戦闘能力がないので、後は止めを刺すだけだ。それでやっとADAMが手に入り、強化を行えるようになる。まさにRPGで言う所の「ユニークモンスター」。そのような者まで、本作には登場するのだ。
更に面白いのが、リトルシスターを殺すか殺さないかはプレイヤー自身の選択によって決める事。実はリトルシスターというのは、引き取り手の無い孤児、誘拐して来た少女を遺伝的に改造した元人間。その為、彼女を殺すことは罪なき少女の命と未来を奪うことを意味するのである。だが、逆に救う選択肢も存在。それを選ぶと人間の少女へと戻し、救済することができる。しかし、逆に入手できるADAMの量は殺す選択肢より減少。強化が遅れる代償を受ける事になる。なので、強化するなら殺す選択肢が適切…なのだが、それはそれで鬼畜の所業を犯す形になる。鬼畜になってまで力を求めるか、或いは人としての情けをかけるか。そんなプレイヤー自身の良心を抉る要素もこのキャラクターに込められている。こう言った所も非常にRPG的。例によって、この時の選択がストーリーの分岐に関係してくることもあったりと、本作が普通のFPSとは異なることを強く意識させるものになっている。
このほかにもラプチャー内には多数の音声メモが散らばっており、集める事で物語の背景が明らかになる要素も。また、本編では助言役のアトラスを始め、登場人物との会話やイベントも豊富に入るようになっていて、ストーリー性の強さを意識させるレベルデザインが図られているのも特色の一つと言える。
まさに「ファーストパーソンアドベンチャー」と表現されるだけにある内容。ストーリー性の強さ、戦闘の戦略性の高さなど、何処を取っても独自の味付けが成された、唯一無二の体験を堪能できるゲームに仕上げられている。

そんな本作の魅力はシステム周り…と見せかけて、ストーリーである。これが非常に衝撃的な内容になっている。大まかなあらすじは上記、ストーリー紹介の項の通り。旅客機事故で大西洋上に投げ飛ばされ、奇跡的に生還を遂げるも、逃げ込んだ灯台にあった潜水艇経由で「スプライサー」なる怪物が跋扈する海底都市「ラプチャー」に流れ着いてしまった主人公のジャックが、無線機で連絡してきた「アトラス」を名乗る男と共に脱出を目指すというものだ。事故後、逃げ込んだ灯台の中で発見した怪しい潜水艇を躊躇いなく動かすなど、のっけから人間としてその迷いの無さはどうなんだと突っ込みたくなるが、そんな経緯と共にラプチャーにやって来たジャックは、件のスプライサーとラプチャー創設者で、荒廃した今も権力者として居座り続ける科学者アンドリュー・ライアンとの戦いに巻き込まれながら、脱出を目指すことになる。そしてラプチャー内を探索するにつれ、都市で行われた非人道的な研究の実態が暴かれ、都市がスプライサーだらけになった背景が明らかになっていく。また、何故かジャックの過去に繋がる情報も見つかっていくのだが、それが実際の自分と著しく矛盾した内容になっているという奇怪な現象が起きる。更に都市からの脱出を目指す一人にして、ライアンだけでなくアトラスにも敵意を向ける女性科学者ブリジット・テネンバウムなる生存者も登場し、事態は混迷を深めていく。何故、ラプチャー内に自分の情報があるのか、ライアンは執拗な妨害を行うのか、そしてテネンバウムはアトラスにも敵意を向けるのか、そうした謎が積み重なっていき、ライアンの居城に近づいた時……衝撃の真実が明らかとなる。
それが何かは伏せるが、これが衝撃的の一言。誰もが想像だにしなかった真実の暴露が行われるのだ。その展開には呆気に取られること必至。しかも、そこにはゲームの”とある要素”も強く絡んでくる。例によってそれも秘密だが、知れば「そういうことだったの!?」と困惑確実。同時に本作の物語の想像を上回る緻密さを痛感させられることになる。このストーリーだけでも、本作をプレイする価値がどれほどあるのか、語るまでもない。仮にもFPS系タイトルのストーリーで何を興奮しているのか…と怪訝に思ったかもしれないが、是非、ここは騙されたと思ってプレイし、ライアンに接近する中盤まで辿り着いてみて頂きたい。さすれば、これほど推している理由を嫌というほど痛感させられるはずだ。
また、ローカライズの巧みさも特筆すべきものがある。特に台詞の翻訳はまさに芸術的としか言い様の無い意訳が成されている。これも例によって、何の台詞が芸術的なのかは伏せるが、一通りクリアした後、海外版の台詞…英語で書かれたものを検索エンジンなどで探り出し、ご覧になって頂きたい。本作の日本語版に携わったスタッフの驚くべきセンスの高さ、そして日本のプレイヤーにも驚きを共感してもらいたいという作品に対する深すぎる”愛”を実感させられるだろう。
全編日本語吹き替え仕様とされたボイス演出も見事。声優陣も森川智之、石塚運昇、園崎未恵、麦人と言った洋画吹き替えのベテラン揃いで、演技周りは申し分が無い。更に驚くべきことに、吹き替えされているのはメインキャラクターだけにあらず。なんと、スプライサーの声も日本語に吹き替えられている。彼らは戦闘突入前…プレイヤーが気付いてない時に不気味な独り言を口走っていたりするのだが、これが完全な日本語。普通ならオリジナル版のまま(英語のまま)にしておくものをちゃんと日本向けにしているのだ。それもあって台詞が分かり易く、余計に彼らの異常性が実感し易くなっている。演じる声優陣も素晴らしい演技をしており、まさにプロの技と言わんばかりの狂った感情表現には度肝を抜かされること請け合い。そんな細かい所にも手を加え、分かり易くしている所にもまた、ローカライズ担当者の作品に対する愛情と共感できる事へのこだわりを感じさせられるだろう。只でさえ衝撃的なストーリーをより分かり易く、日本のプレイヤーにも共感してもらえるように手直す。この素晴らしいこだわりと愛情の注ぎ方には、海外製タイトルのローカライズかくあるべしと言った、ある種のスタンダードがプレイヤーの脳内に刻み込まれるかもしれない。
勿論、ゲーム部分も丁寧に作り込まれている。特にスプライサーとの戦闘は緊迫感充分で、多彩な武器と的確な立ち回りが要求されるRPGとアクションの魅力を活かした、戦術性の高いものに完成されている。各個撃破を心がけないと窮地に追い込まれる安易な力押しを封じるバランス取りも秀逸で、アドベンチャーを謳うが故の説得力を実感させられる。
マップ探索も舞台となるラプチャーのユニークさも相まって、細部をしらみ潰しにしていくだけでも楽しい。特に世界観の掘り下げを行う「音声メモ」の存在はその楽しさをより引き立たせ、プレイヤーを能動的に全容解明へと導く訴求力に長けている。「早くここから脱出しなければ」、という気持ちを高ぶらせるロケーションの作り込みも見逃せない。そもそも、かつて楽園と謳われた都市が、今はスプライサーによって荒廃してしまったという設定があるだけに、何処も彼処も不気味。壁や地面に大量の血痕がこびり付いていたり、ある部屋ではテーブルの上に血塗れの惨殺死体が放置されていたり、更に芸術が飾られたエリアがあるのだが、その作品というのが生身の人間を殺して作られたものだったりと、見るもおぞましいものばかり。そうも凶悪過ぎるロケーションが立て続けに出てくる上、スプライサー達は独り言を呟きながら襲い掛かってくるので、自然とその場から逃げ出したくなる。脱出を目的とするゲームとしてはこの上ないほど見事な作り込みと言えるだろう。ロケーション一つ一つにも、実際の歴史と絡め合わせた細かな設定が付けられているのだが、これについて語ると長くなってしまうので割愛。ただ、見れば誰もがストーリー全般を担当したライターが如何にやりたいこと詰め込みきったか、そして現代史に対して如何に深い造詣を持っているのかと思い知らされるだろう。
ただ、こうもストーリー、背景に至るまで素晴らしく作り込まれながら、中盤を過ぎた後から失速していくのが惜しい。ここで更に一捻りあると申し分が無かったのだが、既に通った道を行き来する展開が中心。結果的に序盤から中盤の真相発覚がやりたいが為、今回のストーリーを作ったという狙いが現れてしまっている。折角、ストーリーを完璧なまで魅せたローカライズという最強の武器を持っていながら、こんなまとめ方になってしまっているのには勿体ないとしか言い様がない。

操作性に癖があるのも褒められないところだ。特にFPS系のゲームで敵に狙いをつけるエイム操作だが、このキーアサインがおかしい。何とR3ボタン、右スティックの押し込みで実施するのである。その為、使い勝手が非常に悪い。プラスミドなどのアクションを他のボタンに割り振った所為でこうなったのかもしれないが、それでもR3ボタンは配置的に悪過ぎる。ここは普通にL1かL2など、FPSにおいてはメジャーなアサインにして欲しかったところだ。並行して照準の操作もイマイチ鈍く、それでいてアシストの効きが良くないのも惜しい。一応、オプションで調整は可能だが、アドベンチャー要素の強いゲームなら、『メトロイドプライム』のようなロックオン機能を導入するのも一つの手では無かったのではないだろうか。あくまでもFPSとしてのこだわりがあったのかもしれないが、正直、この所為でFPSに手慣れてないプレイヤーにはかなり苦難を要する仕上がりになってしまっている感は否めず。色々と人を選ぶ作りになってしまってるのが残念だ。
ゲームバランスもこの操作性の難点もあって、やや理不尽に感じるところがある。ただ、全体的には適度にまとまっていて、敵配置や謎解きなど、適度に難しく、優し過ぎずのバランスが表現されている。難易度選択機能もあるほか、探索を特色としたゲーム特有のガイドアイコン等のサポート機能も万全だ。
ボリュームもエンディングまでは大体15〜20時間ぐらいと長過ぎず短過ぎずの程よい長さ。やり込み要素もトロフィー関連など、上級者を唸らせるものが揃っているほか、一周では選ばなかった選択肢を取って全く違う感覚で戦闘と探索を楽しむなど、リプレイ性も高い。特に最高難易度はFPS好きも唸るバランスなので要チャレンジである。
グラフィックも非常に美しく、それでいて残酷。特に先に紹介した死体の描写は、思わず目を背けたくなるほど凄惨な仕上がりになっている。さすがに臓器までは描かれてないが、その異様に描き込まれたビジュアルには息を飲むこと必至。海底都市が舞台だからこその水の描写も素晴らしく、そちらも生々しく、且つ美しいものに仕上がっているので必見だ。
一方で音楽は雰囲気重視なので、これと言って書くことは無い。ただ、そのような作風故に恐怖感が際立っていて、主にスプライサーの存在感を高めるのに一役買っている。強力な敵との戦いにおいても、非常に緊迫感があり、且つ狂気を感じる楽曲がバックに流れるなど、独自の作風が炸裂した仕上がりになっているので注目だ。

演出周りも先のボイス以外で、リトルシスターとビッグダディの狂気めいた関係性とその動きなど、ホラーゲームと称しても違和感が無い描写は圧巻の一言。イベントデモも秀逸で、既に語った中盤の衝撃的展開が描かれる描写はその真骨頂。制作スタッフのストーリー描写に対する異様なまでのこだわりを実感させられるだろう。
後半からのストーリーの失速に操作性、そしてセーブに使用する容量が本編が進むにつれて膨れ上がっていくなど、粗削りや作り込みの甘さが際立つ部分があるのも事実。だが、それでもストーリーとゲーム部分、戦闘と探索周りが優れていることに変わりは無い。世界観も独自性が強く、他では到底真似できないこだわりに満ちた仕上がりになっているので、プレイすれば嫌でも記憶に刻み込まれる。エグい描写が多い上、ホラー要素も強いので人を選ぶ所もあるが、それを覆い隠すほどの大きな魅力を持つ本作。PS3をお持ちで、主観視点のゲームに抵抗がないプレイヤーには是非とも遊んでみて頂きたい狂気の傑作だ。PS3版以外にXbox360版、PC版も発売されているので、本体をお持ちでない方もそちらで是非。お薦めです。2017年現在では、PS4、XboxOne、PCの現行機向けリマスター版も発売中だ。
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