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≫メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・パトリオット
■発売元 KONAMI
■ジャンル タクティカル・エスピオナージ・アクション
■CERO D(17歳以上対象) ※過度の出血、暴力描写等あり
■定価 9240円(税込)<Best版:3990円(税込)>
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 HDDの残り容量によって変化
■必要HDD容量 4600MB以上
■その他 振動機能対応、モーションセンサー機能対応、トロフィー機能対応(※トロフィー対応Best版に搭載、従来版はアップデートを行う事で搭載)
■総説明書ページ数 52ページ
■推定クリア時間 12時間〜13時間(エンディング目的)、40〜60時間(完全攻略目的)
ビッグシェル占拠事件以降、アメリカの派兵方針の大幅な転換により、PMC(民間軍事会社)の影響力が一段と増し、合理的な戦争経済が成立した世界。

オタコン(ハル・エメリッヒ)、雷電と共にオルガの娘の捜索、愛国者達なる謎の組織の調査を行っていたソリッド・スネークであったが、彼の肉体はビッグボスの遺伝子コピーより生まれた因果によって急激な老化が進行。突然の発作に苦しめられるようになるなど、著しくその容姿を一変させてしまっていた。
そんなスネークの元に国連議員となった元FOXHOUND(フォックスハウンド)司令官、ロイ・キャンベルが訪問。世界各国の大手PMCを運営するマザーカンパニー『OUTER HEAVEN(アウターヘイヴン)』を統率し、大規模な軍事蹶起を目論むリキッド・オセロットの暗殺を非公式に依頼する。彼はビッグボスが唱えていた理想郷を実現させるつもりであるらしい。残り僅かな余命をこの任務に賭けたスネークは、任務を遂行する為、リキッドが潜伏しているとの情報があった中東の戦場へと単独で潜入する。そこでスネークを待ち受ける者とは…?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ストーリーが章単位に区切られ、様々な舞台が登場する盛り沢山な内容へと改められた本編
◆章構成に改められた事で、これまで以上にバリエーション豊かになったロケーション
◆戦場での戦い、敵拠点への潜入など、章構成になって様々な潜入アクションを楽しめるよう改められたレベルデザイン
◆敵に見つからずに任務を遂行するだけに留まらぬ、密度の濃さが炸裂したゲーム性
◆敵味方の区別が付かない戦場ならではの恐怖感、臨場感を演出した新要素『英雄度』
◆前作のカムフラージュ機能をよりシンプル且つ、馬鹿馬鹿しい方向にアレンジした新たなステルス機能『オクトカム(オクトパスカムフラージュ)』
◆周囲に居る敵を察知してくれる親切さと見た目の分かり易さが秀逸な新要素『スレットリング』
◆老人の設定を活かしつつも、遊び難さは極力廃した作りの上手さが光るスネークのアクション
◆三人称視点に改められ、移動しながらの射撃も可能になってより使い易くなった『主観撃ち』
◆大きな問題点があるが、不殺プレイなど、豊富なやり込み要素も備わった総計ボリューム
◆ボタン配置が変わったが、これまでの手に馴染むキーアサインは健在の良好な操作性
◆過去のシリーズで残された謎の解明に焦点を当てた、シリーズファン必見のストーリー
◆上位機種ならではの細か過ぎる作り込み具合が異彩を放つグラフィック
◆シリーズ史上最大の物量と言っても過言ではないムービーデモとその作り込み具合
◆シリーズの伝統とも言える緩急の付け方の上手さとインパクトの強さが光る音楽
◆ムービー等の場面を盛り上げる、実力派声優陣による演技(特に夏木マリ氏が秀逸)

--- Bad Point ---
◆悪く言えば、多過ぎてゲーム部分を完全に食い殺してしまっているムービーデモ(ムービーゲーと揶揄されても致し方がないほどの物量)
◆ムービーの多さもあり、ゲーム部分の充実感がいつになく弱めな本編
◆ムービーデモの嫌らしさを助長する、一部におけるクイックタイムイベント(特に終盤にある、ボタン連打を延々と行い続けるイベントのつまらなさはかなりのもの)
◆章単位で行われる長過ぎるインストール(※2013年現在、アップデートでこの問題は解消されている)
◆シリーズファン以外は置いてけぼりを喰らう事必至のストーリー(初代メタルギアソリッドからプレイしていないと、完全にストーリーを理解できない)
◆便利だが、ゲームバランス崩壊も甚だしい新要素『ドレビンショップ』
◆ステルスゲームとしての魅力を損ねてる、人外の敵と戦う終盤の展開
◆ストーリーを考慮してなのか、従来以上に大人しくなった無線イベント
▼Review ≪Last Update : 6/2/2013≫
腕を上げたのか、ハードが上がったのか。

時代は変わった…。


敵に見つからぬよう任務を遂行していく緊張感溢れるゲーム性とストーリーの濃さで好評を博した戦略諜報アクションゲーム、メタルギアソリッドシリーズ第四作目。シリーズとしては第二作目のその後のストーリーを描いた作品で、ソリッド・スネークの物語完結編でもある。

ゲームとムービーの比率を盛大に誤った、残念感溢れるメタルギアソリッドだ。

ゲーム内容は過去のシリーズ三作と同じ、戦略諜報(ステルス)アクションゲーム。主人公のソリッド・スネークを操作し、敵に見つからぬよう隠密行動を展開しながら、与えられた任務の遂行を目指すというものである。
システム周りも前作『3』をベースとした、過去三作の良い所取りで構成。但し、本編に関してはこれまでとは大きく趣が異なるものになっている。というのも、今回は『ACT(アクト)』単位で区切られたシナリオを攻略していく、いわゆるキャンペーン方式で進んでいく仕組みに改められた。それに伴い、シナリオクリアという明確な区切りが設定されたほか、ACTごとに全く別の地形が舞台になるなど、地続き進行だった過去三作とは一味も二味も違う展開が繰り広げられるようになっている。また、舞台ごとに潜入の仕方も大幅に変化。これ自体は前作にもあったものだが、今回は舞台ごとに敵の種類まで変化するようになり、その度合いが一層仰々しくなっている。
ただ、基本は一本道な為、大まかなプレイ感覚には変化はない。しかし、シナリオごとにあらゆる要素が一変するその構成には、これまでのシリーズに無かった大胆さと仰々しさが満載。様々な種類のメタルギアソリッドを堪能できる、凝った構成に仕上げられている。更にスネークのアクションやステルス周りにも新たな試みが成されている。特に注目なのはステルス周り。先のACTの舞台ごとに戦術が変化するのもさることながら、肝心の戦術自体も新たに追加された奇抜な要素により、ぶっ飛んだ行動が取れるようになっている。
その行動を実現する新要素として、まず第一に『オクトカム』。『オクトパスカムフラージュ』の略で、その名の通りにタコのように擬態する新たなカムフラージュ機能である。タコの擬態というと、体の模様を回りの風景と一緒のものに変化させるという、いわば同化のようなものとして知られるが、それと全く同じ行動が今回、できるようになった。具体的には周りの風景に合わせて、スネークの服装を変える事ができるようになったのだ。しかも、対象となるものに触れるだけで、だ。前作はジャングルなら緑の服装を選択し、それを装備すると言った如何にも現実的な仕組みになっていたが、今回はいわばスネーク自身がタコそのもの。周囲に合わせ、「スルッ」と自由に服の模様を変更する事ができてしまう。「どんな技術だよ!?」と思わず言いたくなってしまう、驚愕の機能となっているのだ。それ故に今回は前作のような面倒な手数を踏まず、快適にカムフラージュによる欺きプレイが楽しめるようになっている。また、その人間離れにも程があるシチュエーションの数々には、「いいのか、これで」と思わず呟きたくなるほどの突っ込み所が満載。周囲の背景に解け込む戦術自体は前作にもあったものだが、今作ではそこに嘘っぽさを取り入れ、より個性的で(いい意味で)馬鹿馬鹿しいものへと刷新。前作経験者も突っ込まざるを得ないほど、インパクト抜群の新要素に仕上げられている。
そして、更なる新要素として『英雄度』。今作では、新たに紛争地帯…戦場が舞台として登場し、現地の武装勢力である民兵達とPMC(民間軍事企業)の軍隊が戦闘を繰り広げている中、ミッションを遂行するという驚愕の展開がある。この場面において、現地の武装勢力にアイテムを提供したり、PMCの兵士を倒すと言った手助けを行うと、この『英雄度』が上昇。高い値になっている時に武装勢力側に自身の姿を晒すと、彼らはスネークに攻撃行動を取らなくなり、支援行動を取ってくれるようになるのである。逆に武装勢力を攻撃する行動を取ってしまうと敵と見なされ、PMCとの双方から狙われる危険な状態に陥る。また、PMC側は終始、敵のままなので、味方にする事はできない。なので、如何に現地の武装勢力を支援し、不利な状況を打開していくかが求められてくる。そう言った、仲間に成り済まし、危険な戦場を乗り越えていくという要素までもが今作には追加されているのだ。成り済ましという点では、PSPの『ポータブルオプス』を髣髴とさせるが、今作のものはそれをより、巧妙な形で進化・発展させたものになっているのが大きな特徴。また、敵味方の区別が付かない戦場ならではの恐怖感、臨場感も相当なもので、兵士達の動きや行動等に舞台設定がしっかり活かされている。戦場の舞台限定の要素な為、一発ネタ的な面も強いのだが、仲間に成り済ます難しさと緊張感はこれまでのシリーズに無いステルスの面白さが満載。小さいとは言え、なかなか侮れない要素になっている。
この他にも、敵の気配を察知するサーチ機能『スレットリング』、戦闘中ですら(!)弾薬補充、武器の売買までもが可能なアイテム購入システム『ドレビンショップ』など、意欲的且つ、大胆な要素が満載。また、シリーズお馴染みの『無線』の通信にしても、今回はセーブ専用の項目が設けられた事で、完全に情報集めに徹したものに刷新されたほか、キャンペーン方式になった事で、これまでゲームクリア時に表示されていたプレイヤー評価がACTクリアの度に表示されるようになったと言った細かな変更点もある。
その変わりっぷりと言い、もはやフルモデルチェンジと言っても何ら不思議ではないほど。前作も前作で、画面構成が三人称視点に改められると言った大きな変化があったが、今作もそれに引けを取らない変更と新たな試みが多数成された内容に仕上げられている。
それでいて、今回のスネークは年老いたおじいちゃん。これだけでも、今回の作品が今までのシリーズと毛色の事なるものであるというのは、嫌というほど想像が付くだろう。色々と挑戦しまくりのメタルギアソリッドになっているのだ。

しかし、今作には致命的な欠点がある。それが『ムービーゲー』と揶揄されても致し方が無い、ゲーム部分の希薄過ぎる本編だ。今までのシリーズでも、ゲームの進行に合わせて度々挟まれるムービーデモはかなり長めに作られており、それが良くも悪くもメタルギアソリッドらしさの象徴にもなっていた。ただ、ゲーム部分もそれ相応の作り込みが成されており、特に前作では数々のシステムの刷新によって、ステルアクションゲームの新境地を開拓した傑作に完成されていた。その前作のシステムを土台とし、『オクトカム』や『英雄度』と言った新要素を追加した今作。普通に想像すれば、複雑ながらも、更に密度の濃いステルスアクションが楽しめる内容に進化していそうと考えるだろう。ところが、実態はムービーだらけで、肝心のゲーム部分は存在感が無いという、何とも散々な内容になってしまっている。数字で表すなら、今まではゲーム部分4、ムービー部分6だったが、今回はゲーム部分2で、ムービー部分8。明らかにゲームがおまけと言ってもおかしくない構成になってしまっているのである。
何故、そのような事になってしまったのかは、今作のストーリー自体がこれまでのシリーズで謎と扱われていた部分(伏線)に迫る完結編となっている事に起因する。しかも、それらの真相というのがまた酷く複雑。その解説だけで30分以上を費やすなんて事が普通にあったりするのだ。それがゲーム部分を完全に喰ってしまっており、嫌でもプレイヤーに今作がムービーゲーであるという事を強く印象付ける。
また、ストーリーを重点的に描く為か、強制スクロールで展開するアクションイベントがやたら多く、これもゲーム部分をより希薄なものにしまっている。しかも、やる事といったらこちらを執拗に追跡してくる敵を銃撃で倒していくだけ。酷いものでは、ボタン連打だけを長い時間やり続けるという、クイックタイムイベント(QTE)的なものもあったりする始末だ。
当然ながら、それらのイベントに面白さなんてものは皆無。製作者のやりたい事に無理矢理付き合わされているという、不快な印象を抱かせるものになってしまっている。そして極め付けとして、これらを乗り越えた後に訪れるエンディングも異常に長く、全て見終えるだけでも1時間は裕に超えるほど。もう、ゲームである必要が無いじゃないかと突っ込みたくなる酷さだ。ここまで長くしたのも、全ては完結編だからこそ、丁寧且つ抜け目無くする為だったのかもしれない。しかし、だとしてももう少し短くまとめる努力をすべきだったのではないだろうか?今までのシリーズもムービーは長めとは言え、ゲーム部分もしっかり存在感が出ていただけに、今回のこの間違った力の入れ様は正直、やり過ぎとしか言い様が無い。ゲームというメディアの強みである、尺に縛られ難い点が悪い形で活かされてしまっている。ムービーがそんな具合であるが故、今までのシリーズの売りにもなっていた変化に富んだレベルデザインも今作では散々。ストーリーに引っ張られている故に『オクトカム』、『英雄度』と言った数々の新要素の大半が一発ネタ止まりになってしまっている。ACTごとに舞台が変わるなど、それなりに変化には富んでいるのだが、先の強制スクロールによるイベントが多く、プレイヤーが自由にスネークを動かせる場面が少ないのはさすがに難あり。また、後半のメインとなる人外を相手にするミッションの多さは、まさに新要素殺しも同然の酷さ。こういう所にも、今作がゲームよりもストーリー、ムービー優先で作られている事を実感させられる。そのストーリー自体も過去作との矛盾が多く、これまでのシリーズをプレイしてきた方なら強烈な違和感を覚える内容になっている。またシリーズ完結編故、過去のシリーズの知識がないとほとんど訳が分からないストーリーになっている点もきつい。正直、これだけでも今作がシリーズ初心者向けの作品でない事は明白である。
一応、完結編故にシリーズファンには見逃せない内容にはなっているし、ファンサービスも充実している。また、奇妙な技を展開してくるボス達との戦い、後半のロボットアニメのようなイベント戦闘など、見所もそれなりにある。だが、それでもゲームとしての作りの甘さは否めず、完結編という設定が悪い影響した内容になってしまっている。ムービーゲーと揶揄されがちとは言え、ゲーム部分もそれなりの充実感と手応えがあったシリーズだったのに、何故こうなってしまったのか?せめて完結編であっても、従来のゲーム部分の手応えだけは失わないようにして頂きたかったものである。

また、ゲームバランスも練り込みが甘い。特にアイテム購入システム『ドレビンショップ』は完全なバランスブレイカーとして働いてしまっている。そもそもボスとの戦闘中ですら、弾薬の補充や武器の購入ができてしまうという時点で無茶苦茶だ。一応、高い難易度では購入制限がかかるようになっているものの、このシステムの存在もあって今回は先頭の緊張感と手応えもイマイチ。せめて戦闘中は購入不可能にしても良かったのではないだろうか?
ボリュームも前作より少し増えているが、先の通り、本編の8割がムービーなので、全体的な満足度は低い。ただ、シリーズ恒例の不殺と言ったやり込み要素は万全。今回は舞台が異なる所為で求められる戦術も変わる為、今まで以上に歯応えのあるプレイが楽しめるようになっているというのは、今作の数少ない良点と言ってもいいだろう。
操作性もボタン配置が変わったが、手触り自体は良好。また、主観撃ちが三人称視点に切り替わり、構えた状態で移動が可能になると言った改善が図られているのも好感触だ。
グラフィックに関しても上位機種に移行したというのもあり、大幅にパワーアップ。特に人物関係は美形度が恐ろしく上がっている。音楽にしても印象深いものが盛り沢山で、ムービーデモからイベントまで、適度に盛り上げてくれる。

演出周りは言わずもがな。ただ、シリーズ恒例の小ネタは少なく、無線も真面目な会話が増え、笑いの要素が減ってしまっているのは楽しみにしていたファンには辛いところだ。全て無くなった訳ではない辺りがせめてもの救いだが。
また、声優陣に関しては今回も非常に豪華。スネーク役、大塚明夫氏の父でもある大塚周夫氏が参加しているほか、女優の夏木マリ氏も重要な役で参加するなど、シリーズ屈指の面子となっている。何気に夏木氏は演技自体も全く文句の付け所分無し。その熱演ぶりは必見だ。
そんな具合に演出周り、映像周り等にはいい部分が多いのだが、肝心のゲーム部分はイマイチという出来になってしまっており、やり応えが過去三作よりも乏しいのが残念。ACTをクリアする度に長いインストールが挟まれるなど、快適性の面でも難があり、本当に今回のゲーム部分に対する作り込みの甘さは信じられないの一言だ。シリーズ完結編故、完全に経験者向けどころか、その経験者にも納得の行く内容になっているかと言うと、そうとも言い難い今作。
残念感溢れる佳作だ。新要素を詰め、ムービーの比率を抑えれば良作になる可能性を秘めているだけにこの出来はあまりにも勿体無い。また、繰り返しになるがシリーズ初心者は間違っても今作に手を出してはダメ。どうしてもやりたい場合はまず、初代メタルギアソリッドから順にプレイし、その後に今作をプレイする事をお薦めします。
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