Written in Japanese. Japanese fonts required to view this site / Game Review & Data Base Site
  1. ホーム>
  2. Review Box>
  3. PlayStation 3>
  4. バイオニックコマンドー マスターD復活計画
≫バイオニックコマンドー マスターD復活計画
■発売元 カプコン
■開発元 GRIN
■ジャンル 2Dスウィングアクション
■CERO B(12歳以上対象) ※殺傷表現あり
■定価 1200円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜4人
■セーブデータ数 1つ
■必要HDD容量 391MB(セーブ容量込み)
■その他 PSPリモートプレイ対応、PlayStation Network対応、振動機能対応
■推定クリア時間 2〜7時間(エンディング目的)、20〜25時間以上(完全攻略目的)
2029年、前世紀に滅びた、かつての軍事政権の遺物である極秘文書が発見。
実現されなかった兵器計画、通称『アルバトロス計画』の存在が明るみにされた。
これに目をつけた、ファシズムを信奉する帝国軍とその総統キルットは、アメリカ連邦国(FSA)中枢部への攻撃を開始。文書を奪い、計画を実現しようとする。

FSAは、アルバトロス計画の背後にある真実を探るべく、英雄”スーパージョー”ことジョセフ・ギブソンを送り込む。だが、彼の消息はその後、途絶えてしまう。
そして「ジョーを救出せよ!」との命を受け、一人の男が帝国へ飛ぶ。

この物語はここから始まる。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆普通のジャンプでなく、ワイヤーの振り子運動のジャンプと移動で地形を突破していくその過程が秀逸な、爽快感満点のワイヤーアクション(スウィングアクション)
◆仲間への交信、基地への寄り道など、少しRPGチックな味のあるゲーム展開
◆ワイヤーアクションの面白さを絶妙に演出する構成が見事な、全12以上ものステージ
◆硬派ながら、上達する度にどんどん温くなっていくのが絶妙なゲームバランス
◆初心者にも優しい丁寧且つ自由度の高い作りが見事なチュートリアル
◆差別化が丁寧に成された全3+1種類の難易度
◆最短クリア時間を目指すタイムアタックが熱過ぎるやり込み要素『チャレンジルーム』
◆旧作の直感的に動かせる快適さを見事に継承した、抜群の操作性
◆各種性能が修正され、それぞれの個性が色濃く演出された全6種類の武器
◆全面的にリニューアルされ、戦略性に富んだ内容に様変わりしたボス戦
◆突飛さは薄れたが、上手く現代風にアレンジされている見所満載のストーリー
◆気障さとジョークが全開の秀逸な台詞回し(特に主人公のスペンサー)
◆現代風にアレンジされながらも、印象深い旋律はそのままの秀逸な音楽
◆音楽でファミコン音源を混ぜるなど、無駄に徹底したファンサービスの演出
◆最大四人までプレイ可能、対戦までできてしまう充実したマルチプレイヤーモード

--- Bad Point ---
◆ステージ開始時、ボス部屋突入時のロード時間の地味な長さ
◆綺麗だが色使いが激しく、目が疲れ易いグラフィック(特に赤が酷)
◆小さ過ぎる台詞関連の文字フォント(特に基地エリアの兵士の会話)
◆癖が強く、慣れるまでは大変なワイヤーアクション(スウィングアクション)
◆長い上、ゲームオーバーになったら最初からやり直しの仕様が酷過ぎるラストステージ(リトライポイント置くべき…)
◆改悪同然なラスボス戦(旧作とは完全に別物、魅力の薄れた内容に…)
◆ある意味、無駄同然な隠しトンネルのステージ(しかも長い…)
◆オフライン限定の対戦マルチプレイヤーモード(オンラインもあるべきだった…)
▼Review ≪Last Update : 10/9/2009≫
「ああ、貴様が逃れることのできない敗北の音色だ」

無口の男がキザ男に生まれ変わった?


ワイヤーアクションなる特殊なアクションから醸し出される高いゲーム性、衝撃的なストーリーでカルト的な名作として評価されたファミコン用ソフト『ヒットラーの復活』のリメイク作。
開発は新作『バイオニックコマンドー』も手掛けた、スウェーデンの製作スタジオGRIN。

高いアクション性と独特の中毒性はそのままの、愛溢れるリメイク作品だ。

ゲーム内容は、横スクロールで展開するステージクリア型アクションゲーム。主人公スペンサーを操り、舞台となる『帝国』の全体マップ各地に点在するエリア(ステージ)を順に攻略していくというものだ。基本的には一本道だが、エリアは通常のアクションステージのほか、FSA軍の基地という情報やアイテムが獲得できるステージの二種類が用意されており、基地ステージでアイテムを獲得しないと突破できないエリアがあるなど、ちょっとだけRPGチックな要素も盛り込まれている。また、全体マップ上には敵の輸送車が徘徊しており、これに接触すると遭遇戦(※見下ろし視点のアクションシューティング風ステージ)が始まるなんてものも。基本はステージクリア型でありながら、随所にイベントが沢山用意された、結構至れり尽くせりな構成になっている。
通常エリア(アクションステージ)の流れも特殊。最終的に最深部で待つボスを倒せば、エリアクリアとなるのだが、そこに至るまでに『通信室』と呼ばれる施設に必ず立ち寄って、仲間に交信しなければならないという、少し手間を要す構成となっている。仮に交信を怠れば、ボスが待つ部屋への入口が開かないままで、行き詰まり。素直に前へ前へと進むのを禁じた、思い切った仕様となっている。ただ、通信室は比較的見つかり易い所に配置されているので、探すのに手間取ることは皆無。物探しが当たり前とは言え、ゲームテンポ自体は普通のアクションゲームと変わらぬ快適さとなっている。また、通信室の配置場所に関しても、正規ルート内と限定されているので、アクションゲーム独特の前進して行く感覚も失われてない。実際に遊んでみれば、作業っぽくありながら、全く面倒臭さが無いその上手さには、驚かされるだろう。
しかしそれら以上に今作最大の特色と言ったら、ワイヤーアクション(スウィングアクション)だ。
アクションゲームにしては珍しく、今作にはジャンプの概念自体が無い。更に言うと段差をまたぐと言ったような、軽い動作すら無い。その代わりとして、デフォルトで斜め上方に射出する『ワイヤー』を床や天井、或いは照明機等のオブジェクトに引っ掛け(フックし)、ターザンのように振り子運動(スウィング)し、その勢いで飛ぶという特殊なアクションを駆使し、穴や段差と言ったものを乗り越えていかなければならない。他のゲームでは無い、特殊なテクニックを駆使してステージを攻略していかねばならないのである。なかなか衝撃的な設定だけに、その癖もかなりのもの。何より、ジャンプが無く、スウィングの勢いを付けて飛ばねばならないので、その感覚を掴むのに始めは誰しも、苦労させられるだろう。ワイヤーの長さ、スウィングの大きさから測られる飛距離など、緻密な計算も求められてくる為、単に一回経験すれば直に上手くなる、また直感的にできるようになる訳ではないので、敷居もやや高い。
だが、逆に慣れてしまえば、非常に快適且つ、他のアクションゲームに無いダイナミックなアクションが味わえるようになる。特に、連続してスウィングして渡って行かなければならない地帯を、ミス無くスムーズに行えた時に味わえる快感は格別。そして、更にスムーズに進めたくなる欲求までもが爆発し、クリアした後もその快感を味わいたいが為に最初からプレイしてしまう。アクション自体の中毒性も、結構なものなのだ。
ほぼ思い通りに動かせるアクションゲームだと、上手く動かした時の感動は結構、最初の方に来てしまいがち。それ以降は「当たり前の動作」みたいに捉えて、動かす感動も何もなくなっていく。しかし、今作の場合は、癖が強いが故にその感動が大変凄まじく、尚且つ発展性・応用性にも秀でているので、最後の最後まで感動が持続する。それどころか、クリアした後にまで、面白さが全く色褪せない。最初だけではない。終始、動かす面白さが衰えない、アクションゲームらしい楽しさ・面白さが満ち溢れた、独創的なアクションに仕上げられているのである。動かすだけで、麻薬的にはまってしまう中毒性がある。それだけでも、このアクションの完成度の高さ、凄さが実感できるだろうと思う。
このアクションの面白さを余す事無く引き立てるステージ構成の上手さも見逃せない。活用されるテクニックからギミックの配置まで、どのステージもきちんと差別化が図られているので、どのステージでも独立したアクションの面白さを味わえる。ステージの難易度推移もシビアだが、変に理不尽でない絶妙なバランスとなっており、プレイ欲を程好く刺激する。更にチュートリアルから難易度選択機能まで、初心者への配慮も幅広く凝らされている。コア向けかと思いきや、実はそうでもなく。こんな意外な懐の広さも、今作の大きな売りの一つと言っても良いだろう。

なお、今作はファミコンの『ヒットラーの復活』のリメイクと言う事で、ステージ構成からゲームシステム等は基本的にそちらのものをそのまま踏襲している。
ワイヤーアクションの魅力もそのまま。先の通りだが、癖の強さにアクションの面白さまで、全てがオリジナル順序で、極めてレベルの高い再現となっている。オリジナルを遊び込んだプレイヤーも、納得の仕上がりと言っても良いだろう。
ただ、簡単な難易度やチュートリアルなど、今作において新たに加えられた要素、変更点も結構あり。他にも以下のようなものが変更、追加が行われている。(一部に絞って抜粋)

◆各エリア終盤に行われるボス戦(全面リニューアル)
◆プレイヤーアクションの追加(ドラム缶投げ、敵投げ、ボルト解除など)
◆ステージ総数・構成(新ステージ追加)
◆中立エリア(FSA基地エリア)の発砲ペナルティ廃止
◆武器システム・各武器性能の全面アレンジ
◆ストーリー、登場キャラクター全般の変更
◆通信室の盗聴機能変更(ミニゲーム追加)
◆グラフィック・音楽の全面アレンジ

特にこれらの中で大きな変更点は、ボス戦とプレイヤーアクション、武器システム、ストーリー全般の4つだろう。 ボス戦は『ヒットラーの復活』の動力装置を破壊するだけの内容と打って変わり、かなり本格的な内容のもの…一体の大ボスとの一騎打ちという、まるで違ったものになっている。ボス戦自体もなかなか凝った出来で、倒すにはワイヤーやギミックを駆使しなければならないなど、なかなか考え抜かれたものに仕上げられている。動力装置を破壊するだけの内容に物足りなさを感じた当時のプレイヤーにとっては、結構嬉しい変更点と言えるだろう。
プレイヤーアクション、武器システムも大きく変更。アクションは上記の通り、できる事が増え、武器に関しては入手に応じてL1ボタン、R1ボタンで切り替えられる『ロックマン』風のものに改められている。更に武器は性能全般も再調整され、例としてバズーカの弾の爆発に当たり判定が加えられ、ダメージを喰らうようになったなど、使い勝手も異なる。これに関しては、旧作ファンの間で賛否が分かれるかもしれない。ただ、使い分けによる新たな戦略性が打ち出されてるのも事実で、新たな手応えが味わえるようになったのは評価に値するところだ。これはこれで、面白いアレンジとなっている。
そしてストーリー。言うまでも無いが、『ヒットラーの復活』のナチス・ドイツを連想とさせるもの(ナチスの単語、ハーケンクロイツなど)は全てカット。ストーリーのキーパーソン、ヒットラーも『マスターD』と改められ、完全オリジナルの内容となっている。ただ、帝国軍がファシズムを信奉しているなど、少しだけ元の設定を活かしているところもあり。ストーリーラインも基本は『ヒットラーの復活』準拠なので、元のファンも満足できるはずだ。
また登場キャラクター全般もライバルキャラが登場したり、主人公のスペンサーが気障な男に様変わりしたりなど、なかなか面白いアレンジが加えられている。特にスペンサーはかなり面白く、ボス戦時に頻繁に放つ気障でジョークの利いた台詞には、クスッと笑ってしまうだろう。ある意味、今作のストーリーは彼の為にあると言っても良いかも。
全体的にアレンジに関しては、『ヒットラーの復活』の持ち味を殺さず、そこに現代的な味付けを加えると言う、バランスの取れた仕上がりとなっている。中でも、ボス戦の増強は今作の数あるアレンジの中でも秀逸で、只でさえ起伏に富んだゲーム展開に更なる起伏を付け加えている。戦闘の内容もワイヤーアクションの面白さを最大限に活かす工夫に富んでおり、「らしさ」を出そうとするこだわりに満ち溢れているのが良い感じだ。
また、上記では取り上げなかったが、新たにやり込み要素として『チャレンジルーム』なるモードが加わったのも必見。基本的に課題を攻略していくないようなのだが、タイムアタックの要素もあり、それがまた熱い!ワイヤーアクション独自の面白さも相まって、コンマ一秒を争う中毒性の高い内容に仕上げられている。ボリュームもなかなかのもので、十分におなかいっぱいになれる仕上がり。ある意味、これだけ遊ぶのに今作をプレイする価値はあると言っても良いだろう。
一部、改悪されている所もあり(※最後のボス戦、盗聴など)、アレンジの全てが完璧という訳ではないのだが、それでも全体的なレベルは高く、オリジナル『ヒットラーの復活』に対するリスペクトの念が感じ取れるものになっている。
まさに、愛のあるリメイクとはこの事だ、と言っても良いだろう。リメイクというと、どうにもごく稀に排出される愛の無い作品をイメージしてしまったりするかもしれないが断言しよう。今作は本物だ。

その他、操作性も申し分無し。オリジナル『ヒットラーの復活』の操作を継承しつつ、程好い位置に新アクションを足した良好な仕上がりになっている。動作自体は3Dグラフィックだけにか、多少もっさりしているが、それもほとんど気にならないレベルなので、文句の付け所が無い。
ゲームバランスも上質。難しいが、頑張れば何とかなる絶妙の難易度を実現している。各難易度の差別化も見事で、イージーでは落下し易い所に救済ブロックを設置するなど、気の利いたアレンジがされているのがナイスだ。音楽もアレンジが個性的。テクノ風でありながら、ファミコン音源も流すと言うユニークな仕上がりとなっている。勿論、曲自体もクオリティ高し。ファミコンらしい、印象深い旋律による楽曲の数々は、否が応にもゲームプレイを盛り上げてくれる。
しかし反面、グラフィックは難あり。綺麗なのだが色使いが極端で、目が疲れ易い。特に赤をメインとしたグラフィックの疲れ易さはかなりのもの。もう少し、大人しい色に直せなかったものかと、この点に関しては悔やまれる。また夜系のステージで、光の表現もあってか、暗過ぎて足場が見えない場所があるのも難点だ。せめて、オプションでこの辺の調整が可能であれば話は違ったのだが…。そこだけは残念としか言い様が無い。

また、おまけで対戦プレイもあるのだが、これがオフラインのローカルプレイ限定になってしまっていて、オンラインには対応していないというのも少し物足りなさが残る限りだ。
ただ、全体的な完成度としてはかなりのもので、『ヒットラーの復活』のリメイクとしては申し分の無い仕上がりとなっている。ワイヤーアクションの楽しさと中毒性も相変わらずで、一回クリアしただけでもまた遊びたくなる衝動に駆られるほど。ダウンロード配信タイトルでありながら、やり込み要素など内容が充実しているのも見逃せないところだ。 癖の強い一面はあるが、アクションゲームが好きなプレイヤーならは遊ぶ価値は大いにある、いや、ありまくりの『バイオニックコマンドー マスターD復活計画』。
色褪せぬ魅力に秀でた、アクションゲームの傑作だ。これは文句無しにお薦め。ネット環境がある方ならば、是非DLしてプレイすべし。アクションゲーム好きを虜にした、伝説のアクションをその手で体感せよ。
≫トップに戻る≪