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≫SCOTT PILGRIM VS. THE WORLD: THE GAME(スコット・ピルグリム VS ザ・ワールド:ザ・ゲーム)
■発売元:ユービーアイソフト / ■ジャンル:アクション /
■CERO:B(12歳以上対象) ※暴力、恋愛描写あり /
■定価:1143円(税別)※2014年に配信終了

◇2021年1月以降は「Scott Pilgrim vs. The World: The Game - Complete Edition」が配信中
≫Scott Pilgrim vs. The World: The Game – Complete Edition (英語版) ダウンロード版 | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)
≫Scott Pilgrim vs. The World: The Game – Complete Edition (英語版)(PlayStation Store)
≫Scott Pilgrim vs. The World: The Game – コンプリートエディション
≫Scott Pilgrim vs. The World: The Game – コンプリートエディション(Epic Gamesストア)
▼Information
■プレイ人数:1~4人 /■セーブデータ数:1つ(※ユーザーごとに作成可) /
■必要容量:182MB(セーブ容量:80KB以上) / ■その他:トロフィー機能対応、振動機能対応 /
■推定クリア時間:5~8時間(エンディング目的)、30~40時間(完全攻略目的)
売れないバンド『セックス・ボブオム』のベーシストをしている22歳の青年スコット・ピルグリムはある時、一人の女性ラモーナ・フラワーズと出会い、恋に落ちた。
だが、ラモーナにはかつて付き合っていた『7人の邪悪な元カレ軍団』が存在し、彼女と付き合うにはその全員を倒さねばならないという。
頼りないがケンカは強いスコットは、この恋を成就する為、バンドメンバーの二人とラモーナと共に7人の邪悪な元カレ軍団との戦いに身を投じるのであった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆正統派のステージクリア型ながら、レベルアップやステータス強化等のRPG要素を取り入れた『ダウンタウン熱血物語』のオマージュ全開なゲームシステム
◆ゲームシステムからグラフィックに至るまで、随所に仕込まれた膨大な日本産ゲームネタの数々
◆キャラクターの育成に任せた力押しも可能など、格闘要素込みのアクションゲーム初心者にも配慮されたゲームバランス(難易度選択機能も実装されている)
◆通常の打撃からサポートキャラによる援護攻撃まで、多種多様で戦術性に秀でた攻撃アクション
◆起伏に富んだ地形とゲームネタ、想定外のギミックが光る作り込まれたエリア構成
◆各ステージを彩る、高精細で観る者をあっと言わせる素晴らしいグラフィック
◆本編に当たるストーリーモードから対戦に特化した専用のものまで、幅広く取り揃ったゲームモード(※一部は追加ダウンロードコンテンツ購入で解禁される仕様)
◆ベルトスクロール型アクションゲームという枠組みに捉われない大胆なアイディアと強烈過ぎるデザインでプレイヤーを翻弄させる、ボスキャラこと7人の邪悪な元カレ軍団
◆少し挙動が重いが、自然なボタン配置と技の出し易さで魅せる、快適な操作周り
◆適切な密度の本編と膨大なやり込み要素のバランスの良さが光る総計ボリューム
◆チップチューン全開の最高にクールで、耳に残りまくる珠玉の音楽(名曲揃い!)
◆ビ●チなガールフレンドとの恋を成就させる為に戦いに身を投じるという、(良い意味で)突っ込み所満載のストーリーと演出周り(特にステージクリア後の演出は必見)

--- Bad Point ---
◆後半にかけて苛烈にし過ぎな感が否めない、ストーリーモードの難易度(特に敵配置と忍者の敵が陰湿。難易度AVERAGE JOEでもその脅威が変わらないなど、調整不足な所も…)
◆主に後半、邪魔者同然の存在へと化けるバット、看板などの武器(投げて跳ね返ってきた際に味方であろうと当たればダメージを喰らうという仕様が影響している)
◆キャラクター名などが英語のままであるなど、全体的に不十分なローカライズ
◆オンライン未対応の最大四人までのマルチプレイ(対応していれば最高だった。なお、2021年現在配信中の『Complete Edition』には実装済み)
◆配置は申し分無しだが、挙動が重めで、気になる人なら気になってしまう操作性
◆長過ぎる上にカットも不可能なエンディングのスタッフロール
◆フリーズバグの存在(特にメニュー切り替え時に時折、発生する事がある)
2015年10月現在、販売終了になってしまっている事(※2021年現在は『Complete Edition』が配信中)
▼Review ≪Last Update : 4/11/2021≫
相手が超人であろうとも、この恋、絶対に成就させる!

例え、日本産ゲームそのまんまな展開になろうとも!


カナダの漫画家ブライアン・リー・オマリー原作の漫画『Scott Pilgrim(スコット・ピルグリム)』とその映画『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』を原作としたアクションゲーム。開発はユービーアイソフトの主力タイトル全般を手掛ける、モントリオール・スタジオが担当。

迸る往年の名作への強烈な愛、美麗なドット絵グラフィックで魅せる力作だ。

ゲーム内容は横スクロールで展開するステージクリア型アクションゲーム。主人公のスコット・ピルグリムとその仲間達を操作し、迫りくる暴漢達を倒しながら七人の邪悪な元カレ軍団の打倒を目指すというものである。
その概略の通り、プレイヤーは全部で七つ(?)のエリアことステージに挑む事になる。各エリアは、要所要所で出現する一定数の敵を撃破する事により、次の道が切り開かれていく『ベルトスクロール方式』で進行。カプコンの『ファイナルファイト』シリーズ等でお馴染みの仕組みだ。エリアのクリア条件も最後に待ち構える邪悪な元カレことボスを倒すというもの。更にエリアには手前から奥までの奥行きの概念とそれを活かした『軸ずらし』のテクニックなど、基本的にはこの手のジャンルの王道を網羅した作りになっている。
ただ、システム周りに関してはテクノスジャパンのくにおくんシリーズこと『ダウンタウン熱血物語』に近い…というか、そのまんまである。というのも、今作にはレベル制が採用されており、敵にダメージを与える事で経験値が入り、それが一定量に達するとキャラクターのレベルが上昇。体力が全回復すると同時に特殊な動作『ムーブ』を会得して、アクションの幅が広がっていくのだ。更に敵を倒すとお金も手に入り、それをエリア上にある『ショップ』で売られている『食事アイテム』等の購入に使う事もできる。特に『食事アイテム』に関しては、体力回復以外にキャラクターの能力値を上昇させる効果も持っている。先程、レベル制と言ったが、実は今作はレベルアップしてもステータスに絡む能力値は一切上昇しない仕様。その為、キャラクターを強化したくば、お金を集めてショップで『食事アイテム』を買って上げるのである。そういう意味でも非常に異色。そして、『ダウンタウン熱血物語』まんま過ぎる作り。アクションゲームというよりは、アクションRPGの色彩が強いゲームデザインになっている。
アクション周りにおいても、基本は素手による肉弾戦がメインになるが、フィールド上に配置された看板、ゴミ箱と言ったオブジェクトを武器代わりに使えるという、ベルトスクロールアクションゲームのお約束に則った要素を実装。また、攻撃は威力低めながら連続攻撃が可能な『ファストアタック』、動作は遅いが一撃が重い『ストロングアタック』の基本二種のほか、特定ゲージを消費する事で周囲に居る敵キャラを吹き飛ばしたり、サポートキャラクターを召喚する特殊な攻撃も用意されている。更に倒した敵を先のバットを始めとするオブジェクト同様、武器代わりに使う事も可能と、これまた『ダウンタウン熱血物語』な要素も実装されている。少し変わったアクションも一つある。その名も『ハイパー状態』。その名の通りに強化モードで、ダメージを一切受けずに規定数の敵キャラクターを倒した際に発動し、プレイヤーキャラクターが光り始め、移動から攻撃と言った全ての動作が高速化するというものだ。これを利用し、敵に『北斗の拳』や『ジョジョの奇妙な冒険』のようなラッシュ攻撃を仕掛けて瞬殺…なんて大技を決める事ができてしまう。しかし、美味い話には裏があるという事で、このハイパー状態は一定時間内且つ、敵の攻撃を連続して受けると時間に問わず強制的に解除されてしまう。その為、イタズラに使うと解除の反動で窮地陥る事も。如何にも強力な技だからこそと言える、妥当なデメリットが設定されたものになっている。ただ、上手く動かせるようになればなるほどに派手なアクションができるというだけあってやり込み甲斐は高く、アクションゲームならではの上達の快感を強く感じ取れる。仕組みこそシンプルながらも、プレイヤーの挑戦意欲を刺激するアクションになっているので、こちらも基本アクションと併せて必見だ。
その他、今作はローカルで最大四人までのマルチプレイに対応しており、本編を四人で攻略すると言ったパーティプレイもできるようになっている(※オンラインには未対応)。また、紹介が前後してしまったが、今作には本編となる『ストーリーモード』以外にある条件を達成する事によって『ボスラッシュ』、『サバイバルホラー』、別売の追加ダウンロードコンテンツ購入によって解禁される『バトルロイヤル』、『ドッジボール』の合計4つが用意されており、それぞれ固有のルールによる多彩な遊びが楽しめるようになっている。マルチプレイ絡みでは主に追加DLCの『バトルロイヤル』、『ドッジボール』が対戦に特化した作りになっており、これに限ってプレイすれば完全な接待ゲームとして化ける。更にこの二つのモード共に前者は『ダウンタウン熱血行進曲』、後者は『熱血高校ドッチボール部』のオマージュという凄まじさ。そんな所に至るまで、今作は徹底してくにおくんラヴ!…となっている。
全体的には正統派のステージクリア方式のベルトスクロール型アクション。だが、その実態は現代に蘇り、海外のクリエイター達の愛によって生まれた海外版『ダウンタウン熱血行進曲』と言わんばかりの内容。同作を知る人には懐かしさとソックリっぷりに刺激を受ける内容であると同時に、知らないプレイヤーには奇抜なシステムとアクションの数々で魅せに魅せまくる、二つの魅力を併せ持った贅沢過ぎる内容になっている。これでも一応、海外のコミックを原作にしたゲームという触れ込みなのだが、そんなのを忘れさせられるほどにゲーム内容が濃い目。ゲーム重視と言わんばかりの作り込みが成された作品に完成されているのである。

そんな今作の魅力は迸る往年の名作愛である。システム周りやアクションは、先の通りに『ダウンタウン熱血物語』をリスペクトしたと言わんばかりの仕上がりになっているのだが、これは序の口も序の口。肝心の本編は『ダウンタウン熱血物語』だけに留まらない往年の名作ネタが注ぎ込まれた、猛烈なまでに濃い仕上がりになっているのだ!
特に演出、ビジュアル全般においてその愛が炸裂している。例えばゲームを始めると、主人公のスコット・ピルグリムを始めとする四人のキャラクターを選択するメニュー画面へと移行するのだが、そのデザインが完全に『スーパーマリオUSA』。選べるキャラクターが四人という共通点から、そのデザインをそっくりそのまま起用してしまっているのである。ちゃんと画面上部に赤いカーテンが飾った上で!そう初っ端から強烈なパンチを受けながらキャラクターを選ぶと、今度はステージセレクトに当たるマップ画面へと移行するのだが、そのデザインが『スーパーマリオブラザーズ3』と『スーパーマリオワールド』を足して二で割ったかのようなもの。露骨過ぎるぐらいにマリオ過ぎるビジュアルになっているのだ。最初に『スーパーマリオブラザーズ2(※注:海外におけるマリオ2は『スーパーマリオUSA』である)』を持ってきて、その次に続編のネタを見せるという徹底振り。製作者が狙いまくりなのがヒシヒシと伝わってくる作り込みっぷりである。そんなマリオコンボが続いた後、『ダウンタウン熱血物語』にリスペクトされた本編開始で沈静化…と思いきや。『ゼルダの伝説』シリーズのトライフォースのロゴが刻み込まれたゴミ箱が出てくるわ、『うっでぃぽこ』で見覚えのある大穴が出てくるわ、お店に『ソニック・ザ・ヘッジホック』めいたものや『バイオニックコマンドー』のバイオニックアームが売られているわのネタに次ぐネタのラッシュ!おまけにボーナスステージに入ったと思ったら『スーパーマリオカート』のレインボーロードに来てしまうわと、今までのは序の口だったのだと言わんばかりにネタに次ぐネタがプレイヤーに襲い掛かってくる。そこから更に進んでボスである邪悪な元カレの所に辿り着くと、背景に『ロックマンDASH』のフラッター号のような空飛ぶ船が描かれていたり、止めの一撃を加えたら『ストリートファイターZERO』でスーパーコンボを決めて相手を倒した時のようにデカデカ且つ、ボイス付きで『KO』と表示される演出が挟まる。そうしてボスが倒された演出が終わってエリアクリア!…と表示されたら、今度はプレイヤーキャラクターが『ロックマン』や『星のカービィ』のようにエリアから立ち去るという始末。もう、躊躇なく入れ過ぎだろ!…と言わんばかりに最初から最後までネタに次ぐネタの応酬が繰り広げられていくのである。
無論、これは一つのエリアに限った話。他のエリアでもファイナルファイト、ロックマンX、ファイナルファンタジー、ビートマニア、バイオハザードと言った何処かで見覚えのあるネタが炸裂しまくる。まさに全編、製作陣の「私達はこれらのゲームに影響されてクリエイターになったのです!」的なメッセージと重過ぎる愛が詰め込まれたかの如き作り!半端じゃない往年の名作(主に国産作品)への思いが詰め込まれた仕上がりになっているのだ。中にはゲームだけでなく、フェリックス・ザ・キャットに似た演出があったり、マジンガーZ過ぎるロボットが登場するなど、アニメネタも盛り込まれていたりするのだが、物量はゲームネタに比べると控え目。ただ、そうもあらゆるネタが注ぎ込まれているだけあって、何処のエリアも終始、既視感と突っ込みが連続する、とんでもなく濃い内容になっている。これはアクションゲームより、ネタ探しが本編のキモなんでは?と錯覚してしまうほど。そうも極端な作り込みが炸裂しているのだ。
逆に全てを知らないユーザーだと楽しみが半減する…という事は無く、単品のアクションゲームとしても楽しめるよう、エリアごとに仕掛けや敵、ボスの差別化を徹底するなど、肝の部分もしっかり作り込むなど抜かりはない。特にエリアごとの作り込みは秀逸。ネタに目が行きがちだが、敵の配置や地形の特徴、ボスの攻撃パターンなどが結構入念且つ、単調に感じないように作り込まれているので、終始、刺激を感じながら楽しめる内容に仕上げられている。どのエリアも攻略に6~8分近くかかるなど、規模的には大きめなのだが、そこも変化に富んだ背景グラフィックと音楽の曲調が派手になっていく演出、唐突に雑魚敵とは違う脅威にさらされるイベント等を仕込むなど、アクションゲームらしく刺激を絶やさない配慮が徹底されているのが見事。ジャンル及びシステム面では別物であるが、さすがはレイマンシリーズ等で2Dアクションの製作経験も十分に持ったユービーアイソフト、と言わんばかりの熟練の職人技が光る仕上がりになっている。
その背景からキャラクターに至るまで、全てがドット絵で描かれているというのも刺激的なフィーチャーだ。今作はキャラクター及び背景は3DCGではなく、スーパーファミコンのゲームを髣髴とさせるドット絵で描写されており、全体的に懐かしい香りとHD仕様ならではの圧倒的な美しさが光るものになっている。このグラフィックが「色んな種類のものを見てみたい!」という関心を抱かせるぐらいに強烈。実際に本編もその欲求に応えるように、一切の使い回し無しでインパクト溢れるビジュアルをエリア一つ一つでお披露目する。そんなこだわりが成されているのもあって、自然とコントローラを握って先に進みたくなってしまう。アクションゲームなので、レベルデザインとゲームバランスが第一で、グラフィックは二の次…な所もあるが、今作はこのグラフィックも作品を構成する上での重要な存在と言わんばかりに存在感を放っており、往年の名作に造詣の深いユーザーは言うまでもなく、そうでない若いユーザーにも他のゲームでは到底味わえない刺激を感じさせられるものになっているのだ。何より、3DCGが隆盛を極める昨今で、あえてドット絵で描写したというだけでも、今作の唯一無二の個性を一層高めている。グラフィックを拝む目的で今作をプレイするだけでも十分に楽しめる、そんな『スーパードンキーコング』のような強みがあるのも今作が如何に珍しいゲームなのかが察せるだろう。ネタも凄いし、アクションゲームとしても強烈な個性を持つ。普通にネタを注ぎ込むタイプなら、そっちに偏ってアクションゲームの方がイマイチになりがちだが、今作の場合はそこが上手い具合に成り立っているどころか、アクションゲーム単品としても強烈な個性を出す等、二つの異なる顔を持つ内容に完成されている。そうもしっかり作る辺りに製作者が単なる往年の名作マニアでない事を思い知らされるばかり。ある意味、日本人なら嬉しくなること必至のゲームになっている。
だが、これだけよく出来ているのにローカライズが不十分というのが惜しい。全編日本語化されていないという訳では無く、ちゃんと行われているのだが、キャラクターの名称が英語のままだったりと肝心な所が分かり難い。このレビューでは原作の漫画版及び映画版の『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』をベースに名乗っているのだが、実際のゲーム本編は英語名そのままで全く日本語化されていない有様。別に英語だからやり難いという訳では無く、普通に遊べる作りになっているのだが、手抜きとみられても止む無い所がある。
バランス面での粗も目立つ。難易度選択機能を実装しているが、最も簡単な『AVERAGE JOE』でも結構手強い。特に後半になると回避の難しいトラップ、厄介な動きをする敵が数の暴力で襲い掛かってくるなど、少し調整の甘い部分が散見される。ステータス強化を施しても僅かに苦戦を強いられるなど、安易な力押しを封じる点では適切と言えなくもないが、敵配置はもう少し調整の余地があったのでは。特に忍者系の敵は一考の余地があったように思う。

操作性もやや挙動が重めなのが気になるところだ。しかしながら、キーアサインなどに変な所は無く、自然にキャラクターを動かせる仕上がり。コマンド技もそれほど複雑なものはなく、直感的に繰り出せる敷居の低い仕上がりになっている。ただ、方向キーとの組み合わせによる操作を頻繁に使うとだけあって、少々手を痛め易いのが難点ではある。
ボリュームに関してはエンディングを目指すだけならば3~4時間ぐらいで到達できる。ただ、キャラクターの育成などに時間を割いたりすると結構、時間がかかる。また難易度別チャレンジ、隠しモードの攻略と言ったやり込み要素も豊富に実装されているので、極め甲斐は十分。手軽にも楽しめてやり込むと深いバランスの取れた構成になっている。
また、これはボリュームとはあまり関係しない小ネタではあるが、隠しコマンドによる裏技があるのも面白いところ。どんなコマンドがあるのかはネタバレになるので伏せるが、入力する事で無敵に近い能力にパワーアップしたり、先に紹介したゲームモードの一部を解禁させるなど、、如何にもな90年代のゲームを髣髴とさせるものになっているので、その年代を知る人ならばニヤリとしてしまうだろう。こう言った所においても往年の名作への愛が溢れている。
往年の名作愛に溢れているのはグラフィックだけでなく、音楽もまた然り。これがまた強烈で、古き良き時代のゲームを髣髴とさせる素晴らしい仕上がりになっている。往年の名作なビジュアルを考慮して、楽曲もチップチューンによる懐かしさ溢れる作風となっており、その作曲担当もチップチューンバンド『Anamanaguchi(アナマナグチ)』というこだわりぶり。正直、この楽曲を楽しむだけでも今作の元が取れるどころか、この音楽の為に今作をプレイしても絶対に後悔しないと言い切れるぐらいにハイクオリティでインパクト抜群の出来になっている。はっきり言って、ゲーム音楽好きならチェック必至も必至!この素晴らしき音楽を聴かずしてゲーム音楽好きを名乗るんじゃない!…と言いたくなるぐらい。どんな音楽なのか、気になる方はサウンドトラックがiTunes等で配信されているので、是非、試聴してみて欲しい。90年代のゲーム音楽が好きな方ならば間違いなく、全身に電撃が走るはずだ!

演出絡みではストーリー絡みもちょっとした見所。それほど深いストーリーが描かれる訳ではないが、あまりにもビ●チなガールフレンドの元カレ達と戦っていくという流れだけでもシュール。その元カレ達もかなり奇抜な容姿をしており、なんでこんな奴らと付き合っていたんだと思わず突っ込みたくなること請け合いである。



ちなみに、この元カレ達がぶっ飛んでいる点自体は、れっきとした原作の再現でもあったりする。今作の事から話が脱線してしまうが、その無茶苦茶な設定に関しては映画版である『スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団』でも忠実に再現されている。ただ、ゲームとは描写が異なる元カレもいるので、双方ソックリという訳では無い。そんな映画とセットで違いを楽しむのも今作の強みの一つ。映画に関してはブルーレイ及びDVDで発売中なので、興味のある方は是非、ご覧頂きたい。また、この映画はゲームをネタにしているだけあって、その手のネタも沢山出てくるのだが、その詳細はこちらにて(※上記の画像からも飛べます)。

あまりにも『ダウンタウン熱血物語』で、懐かしさ全開の演出の数々で魅せに魅せまくる今作。元ネタとしているものが物だけに、極端なまでにプレイヤーを選ぶ上、ゲーム的にもバランスやローカライズ周りなど、粗くて手抜きに見られる部分が見受けられるが、その強烈過ぎる作風は遊んだ者の記憶に深く刻まれること間違いなし。何より、往年の名作に対する愛情の深さは半端無く、製作者達がどれほど日本製のゲームを愛しているのかが伝わってくる。そその年代の人間であれば今作がプレイして然るべき一本である事はもはや言うまでもないだろう。まさにこれこそ、海外のクリエイターから日本に向けられたファンレターそのもの。原作付き作品という枠組みを超越した魅力と濃さを併せ持つ作品なのである。プレイステーション3及びXbox360をお持ちの方ならば是非、プレイして頂きたい。これこそ稀代の力作アクションゲームにして、濃過ぎるキャラクターゲームだ。
なお2021年1月、国内では配信されずに終わった複数のダウンロードコンテンツを収録した事実上の完全版『Scott Pilgrim vs. The World: The Game - Complete Edition』Nintendo SwitchPlayStation 4Xbox OnePC(Epic Gamesストア)向けに発売された。PS3とXbox360版は既に配信終了となってしまっているので、今後プレイを検討されている場合は『Complete Edition』をどうぞ。(※プレイするに当たっての支障はないが、日本語には未対応なので注意)
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