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≫Entwind(エントワインド)


■発売元:ソニー・コンピュータエンタテインメント(現:ソニー・インタラクティブエンタテインメント) /
■開発元:PixelOpus / ■ジャンル:ソウシソウアイ・フライトアクション /
■CERO:A(全年齢対象) / ■定価:990円(税込)

◆公式サイト / ストアページリンク
≫Entwined | PlayStation公式サイト / ≫Entwined | PlayStation Store

©2014 Sony Interactive Entertainment America LLC.
▼Information
■プレイ人数:1人 / ■セーブデータ数:1つ / ■必要容量:1.8GB以上 /
■推定クリア時間:3~4時間(エンディング目的)、15~25時間(完全攻略目的)


いつもいっしょ、ずっとバラバラ。
▼Pros cons Pick up
--- Good Point ---
◆2匹の鳥を同時操作し、「ポイント」を潜り抜けていく単純ながらも手ごわいゲームシステム
◆個性的なエフェクトと幻想的な雰囲気で、プレイヤーに強い印象を与えるグラフィック
◆静かで、時に情熱的な一面を見せる、グラフィックの作風とマッチした音楽
◆見た目から漂う雰囲気ゲームという先入観を覆す衝撃性を秘めた、硬派な難易度
◆左右のスティック、L1、R2ボタンしか使わない単純明快さと、意外なクセの強さを併せ持つ操作性
◆360度自由に飛び回れる開放感とそれを引き立てる映像、音響表現が光る「ドラゴンステージ」
◆一瞬のミスも許されないシビアさと、己の限界に挑む面白さに富んだ「チャレンジモード」
◆総プレイ時間こそ短めながら、高い難易度も相まって結構な満足感が得られるボリューム

--- Bad Point ---
◆悪く言えば、雰囲気ゲームを連想したプレイヤーの心をへし折る高難易度
◆思い通りに2匹を動かしたいとすれば、相当な練習は避けられない操作性(非常に人を選ぶ)
◆「ストーリーモード」中盤以降における急な難易度上昇(やたらシビアな動作が要求される場面が連続)
◆自由に楽しめる専用モード非搭載なのが惜しい「ドラゴンステージ」
◆一部、鬼畜の極みなトロフィーの存在(中でも「持続」は獲得できたら自慢していいレベル)
▼Game Overview
一緒になりたくば、試練を潜り抜けろ。



◇古代中国から伝わる、引き裂かれた恋人たちの物語をテーマに制作されたステージクリア型アクションゲーム。鳥と魚の2匹を同時に操作して強制3Dスクロール構成のステージを進み、それぞれの色に対応した「ポイント」を潜り抜けながら「キズナのカケラ」を集め、合体してドラゴン形態になることを目指す。開発は開発はアメリカ・ペンシルベニア州ピッツバーグのカーネギーメロン大学、カリフォルニア州サンノゼ市のサンノゼ州立大学の卒業生たちによって結成されたソニー・コンピュータエンタテインメント(※現:ソニー・インタラクティブエンタテインメント)の小規模チーム「Pixelopus」が担当している。

◇ステージを順に攻略していく「ストーリーモード」、スコアアタックが楽しめる「チャレンジモード」の2種類を収録。メインは「ストーリーモード」で、「いのち」という単位で区切られたステージを順番に攻略していく。
各ステージの攻略条件は前述の繰り返しになるが、ドラゴンへと進化すること。そのために「ポイント」を潜り抜け、「キズナのカケラ」を集めていく。単純そうだが、本作では魚と鳥の2匹を同時に操作しなければならない。つまるところ「ポイント」の通過、「キズナのカケラ」の回収も2匹揃って行わないとダメ。

◇画面構成としては右側に取り、左側に魚という形でキャラクターが配置。鳥は左のLスティック、魚は右のRスティックで動かす。いずれも動かせる範囲は90度までに限定され、片側のキャラクターの位置へと移ることはできない。また通過する「ポイント」には2匹それぞれの色(鳥はオレンジ、魚はブルー)が設定。オレンジの場合は鳥、ブルーの場合は魚といった具合に色に応じ、それぞれを動かす必要がある。ポイントの中にはグリーンもあり、この場合は2匹を仮の合体状態にさせると通過できる。やり方としては操作可能な範囲の限界点(上下部分)にまで2匹を動かし、左右のスティックをそのままに保つだけ。上手くポイントとキャラがきちんと重なれば通過、ズレれば失敗となり、画面上部の「ゲージ」が減少する。「ゲージ」はステージの進捗状況(「キズナのカケラ」をどれだけ集められているか)を示していて、満タンに達すればドラゴンに進化できる。つまり、ポイント通過に失敗すればするほど、ドラゴンへの進化が遅れる(ステージの攻略に要する時間が延びる)ことを意味する。ただし、ゲームオーバーはない(※「チャレンジモード」には存在)。それでも長々と挑戦を続けることになるので、ペナルティとしては結構辛い。

◇「ゲージ」は単純に満タンに達すればドラゴンに進化できる訳ではない。進化するには最大値まで溜めた後、L1とR1ボタンの同時押しをする必要がある。するとステージの進行速度が上昇し、ドラゴンへの進化に向けた最終モード(※勝手に命名)へ移行する。この最終モード状態で「ポイント」をノーミスで通過し、「ゲージ」が最大値まで溜めることで、ようやくドラゴンに進化できる。当然、ここでミスすれば「ゲージ」は減少し、再び「キズナのカケラ」を集め直すことになる。さすがに「ゲージ」がゼロまでリセットされることはないが。
また、ドラゴンに進化した後には箱庭の3D空間を飛び回るパートへと移る。ここでも「キズナのカケラ」を集めるのだが、通常ステージよりも難易度は低く、特殊なテクニックもなく集められるボーナスステージ同然になっている。そして、カケラを集めきるとL1、R1ボタンの同時押しを促すアイコンが表示され、押すと飛行の軌跡が描けるようになる。それを全て描き終えるとゴールとなる光がフィールド上に出現。そこまでドラゴンを移動させて到達すれば、ようやくステージクリアになる。

◇文字に起こすと複雑に見えるが、やることは単純。だが、ゲームとしては割とガチガチで、コアなプレイヤーも唸らせる手ごわい内容に仕上げられている。ゲーム全体を彩るグラフィックが幻想的かつ芸術性を推し出したものになっていることから、雰囲気ゲームと見なしてしまうかもしれないが、実態は真逆も真逆。よくも悪くも見た目と中身が一致しない作りになっている。
▼Review ≪Latest Update :8/6/2023 | First Publication Date:1/22/2017≫
雰囲気ゲームの皮を被った、尖りすぎた意欲作。
特に難易度は見た目とは裏腹の高さで、軽い気持ちで挑めば火傷は避けられない。
「まるで『ICO(イコ)』や『風ノ旅ビト』みたいだ」と、本作のグラフィックを見ると思うかもしれない。ダウンロード配信専用タイトルという点では『風ノ旅ビト』と被っていて、そこからゲームとしても難易度は低め、雰囲気を味わうことにフォーカスしたゲームという先入観を持つだろう。しかし、実態は真逆。そんな先入観から入ってきたプレイヤーにカウンターで羽交い絞めにするかの如き、尖りまくったアクションゲームに仕上げられている。

とりわけその印象を強固に与えるのが操作全般。左右のスティック、2つのボタンしか使わない特徴から簡単そうに見えるが、これが思いのほか難しく、プレイヤーの脳を混乱状態にさせる。ポイントの通過は象徴的な一例だ。慣れていない時なら殊更で、一緒に動かしたつもりが僅かにズレてしまうなど、思い通りにならない展開が連続する。しかも、ミス判定は非常にシビア。ほんの少しでもズレれば問答無用でミス判定が下されるスパルタ仕様である。『ゴッド・オブ・ウォー』のクレイトス”さん”が裏で審判しているのではないのかと疑ってしまうほどだ。さらに基本的にキャラクターはスティックで動かす都合、入力時の力加減が細かく反映される。そのため、相当な微調整も必要に加え、動かす際にも半円を描くようにスティックを回すことから、指にも多少の負担がかかるというおまけ付き。負担云々は個人差もあるため、人によってはノーダメージかもしれない。だが、そうも特殊な操作が試され、スパルタ流の判定が行われるというコラボレーションもあって、ノーミスで進めようとなれば、正確かつ適切な力加減を加える操作が必須。プレイヤー自身の実力、そして根気がすべての結果を左右するとも言うべき調整が施されているのである。

ステージもその手ごわさを引き立てる作り込みが成されている。さすがに序盤はポイントの配置など、大人しめの構成で高度なテクニックが求められる場面は少ない。だが、中盤に達すると「もう慣れきったよね?」と言わんばかりに激化。ノーミス突破を前提としたポイントが登場するだけに留まらず、事前の操作からの急転換を求める類の配置が増える。さらには動的なポイント、その場に留まらずに動き続ける厄介極まりない類まで登場。単に位置に沿ってスティックを動かせばいいだけでは済まない、高度なテクニックが試されてくる。それに混ざってノーミス前提、長距離といった配置も混ざってくるので、気が休まる瞬間はほとんど無し。まさにプレイヤーに牙を向くがごとき、過酷でおもてなし精神もない展開が繰り広げられるのである。序盤が天国なら、中盤以降は地獄と言っても過言ではないぐらいだ。それゆえ、その辺りになれば初見ノーミスクリアもほぼ不可能。加えて、ミスを重ねやすくなるため、ステージの攻略に要する時間も延び、プレイヤーにかかる負担も大きくなる。同時にポイント配置の激化もあって、ステージ全体の雰囲気を味わう余裕も皆無。完全に硬派系のアクションゲームも同然な様相へと一変してしまうのだ。

こんな作りだけに、本当にゲーム開始時とクリア後でゲーム全体の印象は急変する。雰囲気ゲームとして遊んだはずが、『グラディウス』や『魔界村』を遊んだ気分になっていたという感じである。それほどまでにギャップが大きい。
逆に言えば、エンディングまでやり終えた後の印象の濃さも半端なものではない。そもそも、初見の印象が180度覆るだけでも察せるはずだ。同時に取っつきやすそうな見た目にしながら、プレイヤーに噛みつくがごとき難易度設定、ステージ設計にしている所にも開発スタッフの攻めの姿勢が現れていて、返って面白さすらある。
悪く言えば、おもてなし精神皆無。それこそプレイヤーにケンカを吹っ掛けているような感じだが、雰囲気ゲームの定説に則らず、自分たちの求めるものを作り通した姿勢にはクリエイターとしての意地と潔さが現れている。ダウンロード配信専用タイトルという、パッケージ以上に尖った作品を作りやすいという強みを活かしているのも見事だ。

とは言え、もったいないゲームになってしまっているのも事実。何より雰囲気たっぷりなグラフィックを採用し、音楽もそれっぽいものを採用しながら、味わう余地が皆無なのは手痛い欠点。せめて「フリーモード」なる、それぞれのステージやドラゴン進化後のフィールドを自由に飛び回れるモードも用意して、雰囲気ゲームを求める声にも多少、応えて欲しかった。
また、中盤以降の難易度上昇はさすがにやり過ぎの感が否めない。プレイヤーがある程度慣れたことを前提にし、苛烈にしたのかもしれないが、ただでさえ操作にクセのあるゲーム。個人差も大きく現れるだけに、もう少し遅いタイミングで上昇を図るなどの配慮があってもよかったように思う。
ボリュームもステージ総数は2桁に行かない量と控え目。ただ、難易度の高さもあって密度は濃く、エンディングを目指すだけでも相応の充実感と疲労感を得られる内容になっている。やり込み要素も「チャレンジモード」のほか、トロフィーにタイムアタックといったものも用意されているので、すべてをやり尽くすとなれば相応に長く遊べる作りだ。ただ、トロフィーに関しては上段抜きに鬼畜。誇張抜きに数あるプレイステーション向けゲームの中でも3本の指に入る難しさだ。何を大げさな、と思うかもしれないが事実だ。一度、「持続」のトロフィー獲得に挑戦してみるといい。嫌と言うほど、その実態を思い知ると同時に「見なかったことにしよう」となってしまうはずだ。

他に見所として、チュートリアルのハイテンポな構成が痛快。ゲームルールもこれを一通りプレイすればすぐに分かってしまう程度に要点を押さえている。この辺りは元の分かりやすさも影響しているが、少し触れるだけでどんなゲームで、何が醍醐味か把握できる飲み込みやすさは、往年のプレイヤーほど古き良きゲームの強みを感じさせられるかもしれない。
何度か言及してきたグラフィックの完成度も高い。とりわけ背景の美しさは圧巻で、息を飲むようなビジュアルが画面いっぱいに展開される。雰囲気重視の音楽も素晴らしい出来。必要以上にうるさくなく、難易度の高い本編に集中し易い程度に自己主張を抑えているのもバランスが取れており、その計算された作りには作曲者の本気を痛感させられるだろう。

演出周りも盤石。特にそれぞれのステージの背景と何らかの関連を語るかのようなストーリー描写が秀逸で、音楽との相乗効果もあって、非常にインパクトのある仕上がりになっている。その他、日本語ローカライズ、ロード時間などの部分も良好で、遊ぶに当たって没入感を阻害することはない。

見た目は雰囲気ゲーム。だが、実体はガチガチなアクションゲーム。そんなギャップの激しさと中盤以降の難易度の高さがタマにキズで、軽い気持ちで手を出すことは推奨されない作品である。『ICO(イコ)』、『風ノ旅ビト』のようなゲームを求めて手を出すなんてもってのほか。火傷では済まされない。だが、そんな雰囲気重視なゲームとは真逆の方向を突き詰めた難易度を始め、独自の魅力を持った作品なのも事実。そういう事からも、他に類を見ない個性を持った本作。正直、そんなプレイヤーがどれだけいるのか未知数だが、雰囲気とゲームとしてのやり応えの双方を求める人なら、遊んでみる価値はある尖った佳作である。

念のためだが、悪い作品では無い。しかし、声を大にしてお薦めできるゲームでもない。とにかく、尖ったゲームなので、遊ぼうと考えている方は是非、事前確認を徹底して頂きたい。さすればギャップから来るダメージを最小限に抑えられる……はず。
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