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  4. エクシズ・フォルス
≫エクシズ・フォルス
■発売元 アトラス
■開発元 スティング
■ジャンル ロールプレイング
■CERO B(12歳以上対象) ※セクシャル描写あり
■定価 4980円(税別)≪廉価版:2800円(税別)≫
ダウンロード版:2200円(税別)
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 最大50個(使用容量:448KB以上)
■その他 メモリースティックDuo&メモリースティックPRO Duo対応対応、データインストール対応(使用容量:82MB)
■総説明書ページ数 33ページ
■推定クリア時間 11〜15時間(エンディング目的)、72〜90時間以上(完全攻略目的)
遥かなる神話の時代。
破壊の神と創生の神属との間で、『神々の嘆き』という名で伝わる壮絶な戦いが繰り広げられた。破壊の神は地の底へと封じられたが、大陸は瘴気の『漆黒の断崖』によって二つに引き裂かれてしまった。

幾重もの時を経た現代。
引き裂かれた大陸は夜を失った昼の世界『光輝のベルジュ』、昼を失った夜の世界『常闇のベルジュ』として秩序を取り戻し、再び繁栄を続けていた。
だが、破壊の神の復活の兆しが地上に現れ始める。

時を同じくして、神属の力を継ぎし者『エクシズ』も覚醒の刻を迎えていた。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆作風と世界観の異なる二つのシナリオを収録した、一本で二度美味しい作りの本編構成
◆正統派のターン制コマンド選択型バトルという設計と攻撃全般が『スキル』として一まとめにされた、独自の工夫と戦術性が光る戦闘システム
◆店で買うのではなく、戦闘や探索で獲得するという思い切った仕様のアイテム&武器周り
◆周回プレイへの配慮として、程好く短めにまとめられた各シナリオのボリューム(更に神器の性能やレベル等を引き継ぐ周回プレイ用の機能も抜かりなく実装)
◆戦闘敗北時の状況を引き継いで再開可能なリトライシステム、ストーリーを振り返る事ができる『冒険の軌跡』を始めとする、スティング作品らしい良心的な救済処置の数々
◆力押しが効き易いなど、RPG初心者も気軽な気持ちで楽しめる易しめの戦闘バランス
◆ロード時間ほんの僅か、戦闘を高速化させる倍速モードも実装するなど、随所において炸裂したゲームテンポに対するこだわりの数々(歴代のスティング作品の中でも最高峰の出来)
◆エンディングの分岐、隠し難易度等、豊富に盛り込まれたやり込み要素の数々
◆レスポンスの良さと独特のスピード感による快適さが光る、良好な操作性
◆過去のスティング作品のようなデザイン周りでの過度な装飾も無く、正統派RPGとしての真っ当なデザインでまとめられたメニューインターフェース全般
◆やや大人しめながら、緊迫感を演出する作風で仕上げられた音楽(戦闘系の曲が良い出来)
◆変に間延びさせず、派手さも可能な限り追求する作風でまとめられたエフェクト演出全般
◆ビックリするほど低めのデータインストール容量(僅か82MB)

--- Bad Point ---
◆展開こそ王道ながら、専門用語が多過ぎて内容が頭に入ってこない残念な出来のストーリー
◆ストーリーの理解を更に難しくする元凶とも言えるキーキャラクター『フィリア』(主要人物達を別の名称で呼ぶなど、プレイヤーを困惑させる言い回しでイライラさせる)
◆専門用語の多い内容に反する用語集機能未実装という腑に落ちない仕様
◆裏を返せば、歯応えを求めるプレイヤーには物足りなさを覚える戦闘バランス
◆ギミックに乏しく、挙句に無駄に広くて冗長など、作り込みの甘さが目立つマップデザイン
◆シンボルエンカウント方式がアダとなり、育成できるキャラクターに限りが出る終盤の展開(パーティが一気に増えるのもあって、全てを管理し切れなくなる)
◆ほとんど空気で内容的にも味気ない寄り道要素『クエスト』
◆全く少年になり切れてない、演技の稚拙さが際立つラフィルト役の声優(完全にミスキャスト)
▼Review ≪Last Update : 9/13/2015≫
コンテンツアイコンに期待してはいけません。

何の事かはお察しください。


『Riviera 〜約束の地 リヴィエラ〜』や『ユグドラ・ユニオン』等、奇抜なゲームシステムを実装したゲーム製作に定評のあるスティングが放つ、完全新作のロールプレイングゲーム。アトラスとの業務提携発表後、その第一弾としてリリースされた作品でもある。 スティングらしからぬ正統派な作りが異彩を放つ、意外性に富んだ良作RPGだ。

ゲーム内容は、シナリオクリア方式で進行するロールプレイングゲーム(RPG)。異なる二人の主人公のいずれかを選択し、強敵との戦いやダンジョン探索等のイベントを攻略しながら、個別のストーリーを進めていくというものだ。本編はフェイズ単位で用意されたシナリオを攻略していく形で進行。基本的に各シナリオの目的は終盤に待ち構えるボスの討伐、或いは目的地に到達する事で、攻略する事によって次のフェイズへと進む仕組みになっている。また、マップに関しては、世界全体を描いたマップ画面から行き先を選んで探索を行うエリア選択方式を採用。シナリオクリア方式ならではの目的地の探索に特化したタイプになっている。広大なフィールドマップが存在しないのもあり、多少窮屈さもあるが、テンポ良く目的地へと進んでその攻略に集中できるので、RPG初心者に優しい設計。RPG経験者にしても、仕組み自体が正統派なのですんなり入っていけるなど、取っ付き易さを前面に推し出しており、正統派という言葉で一括りにできる、敷居の低さが際立つものになっている。
しかしながら、今作は『Rivera 〜約束の地 リヴィエラ〜』、『ユグドラ・ユニオン』と言った特徴的なRPGを製作してきたスティングの作品。詳細なシステム周りに関しては、独自の個性が炸裂したものになっている。まず最初に本編だが、先の通り、今作には主人公が二人おり、ゲーム開始時にそのいずれかを選び、それぞれに用意されたストーリーを進めていく事になる。各主人公のストーリー、特色に関しては次の通り。

◆セシリア・アーマクライト
大神殿に務める巫女の少女を主人公としたストーリー。創世神話の謎と真理にまつわるイベント、そしてセシリア自身の葛藤と成長にスポットライトを当てた内容になっている。過去のスティング作品で例えるなら、『Rivera 〜約束の地 リヴィエラ〜』に雰囲気は近い。但し、リヴィエラと比較すると、ややシリアス色が強め。エグい描写も僅かながらある。

◆レーヴァント・フォン・シュヴァイツァー
軍事国家帝政『ローゼンバウム』に仕える筆頭騎士を主人公としたストーリー。激動の帝国に蠢く闇と陰謀、神話と戦乱が錯綜する英雄伝を描いた内容になっている。こちらも過去のスティング作品で例えるなら、『ナイツ・イン・ザ・ナイトメア』に近い。特に舞台設定はほぼそのまんまである。更にシナリオにしても人種間対立等、暗い展開が多めとなっている。

この二人のどちらにするかを最初に決めた後、今作のストーリーは始まる仕組みになっている。なお、一つのセーブファイルで二人分のストーリーを進めるというのは不可能。並行プレイしたい場合は別途、専用のセーブファイルを作ってそちらで進めていく事になる。また、選ばなかった主人公は選んだ主人公側のストーリーで一切登場しない…という事は無く、ある程度進めると、双方の世界を繋ぐ境界線に当たるダンジョンの探索が発生。そこで選ばなかった主人公と遭遇するイベントが発生するようになっている。このイベントは何回か繰り返され、終盤になると、その主人公が仲間としてパーティに参戦。少しネタバレになるが、そのまま最後の決戦へと向かう流れになるのだ。その仕組みからも明らかな通り、今作のストーリーは双方共に同一時間軸で展開する、強い繋がりを持った内容。いわゆる、ザッピング構成になっているのだ。なので、片方のストーリーだけではその全容を明かす事はできない。全てを明らかにしたくば、両方のストーリーをプレイしなければならないのである。更に、双方のストーリーには選択肢による分岐まで存在。その選んだ行動によって、エンディングまで変わってくるようになっている。しかも、エンディングの種類はそれぞれの主人公ごとに三種類(計六つ)。全ての結末を見るに当たっては、それなりのやり込みまで求められてくるのだ。そんな二本立て&分岐仕様だけあって、中身は濃い目。仕組みこそシンプルだが、周回プレイが避けられないなど、侮り難い一面を持ったストーリーになっている。とは言え、周回プレイを前提とした内容というのも考慮し、引き継ぎ機能も実装。更に、各シナリオ共に一周するのに要するプレイ時間は11〜12時間程度と控え目。なので、パッと見の印象ほど水増し感は皆無。ちゃんとプレイヤーに負担を与え過ぎない配慮も成された設計になっている。その辺は滅時の引き継ぎリトライ、難易度低下機能などを過去の作品で実装していたスティングらしさが現れている感じ。その良心的な作風も炸裂した仕上がりになっている。
また、第二として挙げられるアイテム、装備品周りも独特。簡潔に言うと、今作には『ショップ』に該当する施設が無い。アイテム、装備品と言ったものは『採取ポイント』と呼ばれる場所を調べる、敵を倒す、或いは素材アイテムから『合成・生成』を行うかのいずれかで手に入る仕組みになっている。ゲームに詳しい方に向けて例えるなら、ハック&スラッシュ形式と言うべきか。何とも渋いシステムを起用しているのだ。しかしながら、アイテム、素材共に入手自体は容易。また装備品も、大抵はシナリオが進んで敵が強くなったタイミングに応じ、上位の装備品が作れる素材が手に入るよう、意図的な調整が図られている。加えて、メニュー画面にて何が作れるかも表示して教えてくれるので、そこまでストレスフルな設計でも無い。中にはレシピ的なものが無いと作れない例外もあるが、素材が足りずに詰む事態には陥らぬよう、配慮は万全。あくまでも仕様としての個性を重視した、敷居の低いシステムに設計されている。更に店絡みとしてもう一つ、今作には宿屋も存在せず、回復はメニュー画面で『FP(フォルス・ポイント)』なる、敵を倒した際に手に入るお金代わりのものを消費して行うか、或いは『フォルスサイト』ことセーブポイントで行うかのこれまた特徴的なものになっている。なので、マップ自体がイベントが発生する事に特化していたりなど、何を目的にしているかを明確に現した作りになっているのも見所。そんなコンセプトを明確に打ち出す意図でもこのシステムは働いており、他のRPGの差別化を見せ付けている。
他に戦闘システムも、基本はオーソドックスな素早さ依存のターン制コマンド選択型バトルだが、攻撃全般が『スキル』で一まとめにされてたり、『バーストゲージ』なるものが存在し、それが一定量溜まる事によって必殺技の『バースト』を繰り出せるようになると言った特徴的な要素が盛り込まれている。その戦闘で用いる武器にも、使用回数に制限の無い『神器(ラグナファクト)』と制限有りの『霊器(フォルスファクト)』なる性質の異なる二つが存在し、それぞれを状況に応じて使い分ける独特の戦術が求められてくる。更に『神器』に関してはメニュー画面の『神器成長』でプレイヤーの好みに応じて強化させる事も可能。攻撃重視か、スキル習得を早めるか、或いは消費RP(※いわゆる魔法を使用する際に消費するMPのようなもの)を抑えるかのカスタマイズ的な遊びが楽しめる作りになっているのも必見だ。
こんな具合に骨組みこそ正統派のRPGとなっているが、その詳細なシステムはさすがは過去、リヴィエラを始めとする特徴的なRPGを輩出してきたスティングらしさ溢れる個性的な作り。取っ付き易い…という点では趣が異なるが、プレイしてみると他に類のない個性と遊び応えを味わう事のできる、挑戦的且つ、新鮮さに富んだRPGとして仕上げられている。その尖り具合は過去の作品ほど強めでは無いが、十分に奇妙な味を堪能できる内容だ。

そんな尖り具合の弱さが今作の売りであったりする。そもそも、スティングのゲームと言えば、先にも挙げた『Rivera 〜約束の地 リヴィエラ〜』、『ユグドラ・ユニオン』等のD.H.Eシリーズに代表されるように複雑且つ、唯一無二のゲームシステムを特徴とする作品というのが、同社を知るユーザーが抱くイメージかと思われる。D.H.Eシリーズ以前にも、『トレジャーハンターG』等のやはりゲームシステム面に独自の個性を持ったRPGを幾つか輩出しており、『スティング=奇抜なシステム』というのはもはや作風と言っても過言では無いものになっている。そんな同社が製作した今作も、先のシステム詳細から、従来の作風に準じたゲームをイメージしてしまうかもしれない。だが、肝心の中身は全くと言って良いほど尖ってない。非常に取っ付き易い、イメージとは裏腹の内容になっているのである。
特に戦闘システム周りはその象徴と言えるだろう。中身を掘り下げていけば、神器と霊器の異なる二つの武器、『スキル』としてひとまとめにされた攻撃、位置の概念など、癖のある要素が出てくる。だが、基本は素早さのステータスに依存したターン制コマンド選択型バトル。目前の敵に攻撃を行って倒す事に徹すれば良いので、ほとんど直感で遊べるのだ。なので、個々のシステムの理解は強要されない。戦闘バランスにしても、それを前提としておらず、知っていればよりテクニカルに戦えるようになるなど、あくまでも戦闘の幅を広げる調整。プレイヤーに対して過度の負担を与えないのだ。システム周りの理解、活用を求められた過去のスティング作品と比べても、如何に敷居が低いかはそれだけでも大体、察する事ができるだろう。さすがに終盤になると、その辺の理解が皆無だと厳しい戦いが展開されたりもするが、それでもレベル差に任せた力技が多少は通用するので、難易度自体は低め。加えて、過去のスティング作品同様、今作にも戦闘で敗北した後、ステータスを引き継いで途中から再開できる良心的なリトライシステムを実装。詰みが発生する事も絶対にない。そんな細かい所まで配慮されているので、RPG初心者にも非常に易しい。細かなシステムを組み込んで作られている割には、軽い気持ちで楽しめる作りになっているのだ。先の詳細を見る限り、想像し難いかもしれないが、実際に触れてみれば痛感させられるだろう。見た目以上に正統派だ、と。
更にリトライシステムに代表されるように、今作は遊び易さ、快適さに関しても相当こだわって作られている。戦闘速度を倍速にできたり、冗長な演出を省くなど、随所において、プレイヤー側に過度なストレスを与えない事を念頭にした作り込みが炸裂。特に戦闘速度を倍速にできる『倍速モード』は圧巻で、これに切り替えれば雑魚敵との戦いはものの数十秒の内にケリが付いてしまうなど、急激にテンポが良くなる。その早さたるや、同じく高速モードを取り入れていたPSP版『ユグドラ・ユニオン』を超越するレベル。レベル上げも快適に行えたりと、無駄な時間を作らせまいとするこだわりに満ちたものになっているのだ。これに加え、今作はデータインストール機能にも対応。適用すれば、戦闘中に発生する僅かな読み込みを完全に無くせるほか、本編の進行でもマップ切り替え時のロードをほぼ無くす事ができるようになって、更にテンポが良くなる。しかも、インストールに必要な容量は僅か82MB。メモリースティックの容量を圧迫しないという点でも極めて秀逸だ。他に細かい所でも、フィールドマップ上では画面右上にミニマップを表示して現在位置や目的地を分かり易く提示したり、キーレスポンスも変にもたつかないものにする、キャラクターの移動速度も早めに設定し、マップ上でのエンカウント方式はプレイヤー側の任意回避を容易にするシンボルエンカウント方式を採用するなど、遊び易さを演出する工夫は随所において成されている。そのような作り込みが徹底されているだけあって、手触り感も極めて良好。そして、そのテンポの良さは過去の『トレジャーハンターG』等のテンポの悪さが課題として残されたスティング作品を知る方ほど、「何があったの!?」と驚愕必至の凄さとなっている。むしろ、ここ近年のRPGの中でも屈指と言え、このシステムを他のRPGも真似してくれよと言いたくなったりするかもしれない。敷居の低さのみならず、ゲームとしての遊び易さに関しても、違った路線を追求する。そう言った所からも、今作が今までとは違う作品であるというのが大体、想像できるだろう。
全編にて炸裂しているのは、個性の強いRPGとしてではなく、遊び易いRPGとしての作り込みの徹底。それまでの路線からの転換と見て取られても不思議では無い、(スティングとしては)意外性抜群のこだわりが炸裂した内容になっているのだ。勿論、それが皆無と言う訳では無く、アイテム管理や店などの施設が存在しない点からは、従来のスティングらしさを感じ取る事ができる。しかし、そこの目立ち具合が弱めというだけでも、近年の作品としては極めて奇抜。何よりも、軽い気持ちで手を伸ばしても何らしっぺ返しを喰らわない、というだけでも決定的だと言ってもいいだろう。それほどまでに、今作は尖っていない。満を持して現れた、万人向けのスティング作品とも言うべき、突出した魅力が炸裂しているのだ。

とは言え、それが裏目に出ている所も。特に戦闘バランスは力押しが効き易いのもあり、やや大味。システムを理解すれば戦略的な攻め方ができるとは言え、バランス調整の方針もあってやや空気な感は否めない。また、マップデザインが冗長気味で無駄に広いエリア(部屋)が目立つなど、調整を誤っている箇所が見受けられるのも気になるところ。移動速度が速め且つ、シンボルエンカウント方式を採用しているので、ある程度ストレスは抑え込んではいるが、それでも無意味に広くし過ぎな感は否めないので、できればもう少し狭めて無駄を排する努力をして欲しかったところではある。
また、ストーリーの出来もいま一つ。二つの異なる世界を舞台に、破滅を導こうとする巨悪と世界全体の真実に迫っていくという内容こそ王道のファンタジーではあるのだが、如何せん、専門用語が多過ぎて内容が頭に入ってこない。徹底して、プレイヤーを置いてきぼりにする内容になってしまっている。それでいて、展開自体も淡々としており、キャラクターにしても地味な面子が目立つ為、どうにも盛り上がりに欠ける。周回プレイをしないと、ストーリーの全容が明らかにならないのも賛否を分けるところだろう。一応、フルボイスのアニメムービーが挟まれるなど、演出的には頑張っているのだが、その頑張りが専門用語の多さによる分かり難さで打ち消されてしまっているのがもどかしい。素材自体は悪くないだけに、もっとプレイヤー視点に立ったシナリオ作りというものをライターには心掛けて頂きたかったところだ。折角、システム周りが頑張ってるのに、勿体ないにも程がある。
演出周りではボイスにも少し難点があり、特にセシリア編で登場するラフィルトの声優はミスキャストも良い所。少年のキャラクターなのに全く少年になり切れてないとか、素人の目線から見ても実力不足にも程がある。演技が棒読みでは無いだけマシと言えばマシだが、ちゃんと少年の声を出せる声優をキャスティングして欲しかったものである。それ以外の声優陣が概ね悪くない(というか、実力派揃い)だけあって、余計に目立ってしまっているのが痛々しい。ただ、幸いにして、今作にはボイスを消せるオプションが実装されている。もし、耳に障る方はこれで調整して消してしまうのがベストだ。
また、グラフィックに関しては2Dドットに定評のあるスティングにして珍しく、全編3DCG。全体的に少し地味だが、表情の変化等、基本は抑えた仕上がりとなっている。そして音楽に関してはさすがの出来。特に戦闘曲はピカイチで、スピーディな戦闘を大いに盛り上げてくれる。フィールド曲も地味ながら、印象的な楽曲が揃っているので要チェックだ。

その他、操作性周りにしても、レスポンスの良さと独特のスピード感もあって、ワリと快適。インターフェース周りにしても変な装飾と制約も無く、正統派RPGとしてのスタンダードなものを起用しているので、使い勝手は悪くない。それまでのシナリオを振り返る事ができる『冒険の軌跡』、キャラクター紹介等のブランクの開いてしまったプレイヤーへの配慮も成されていたりと、細かい所に至るまで気を遣って作られているのは好感が持てる。
そう粗削りで、至らない所もありはするが、それでもスティング初のRPGとしては傑出した敷居の低さは圧巻で、これまでシステムの独特さからスルーしてきたプレイヤーに薦め易い内容になっている。バランス調整の難点もあり、少々普通過ぎるRPGになっているきらいもあるが、それでもその特徴的なシステムと快適さへのこだわりは一見の価値あり。単品のRPGとしても、そのストレートで気の利いた作りは光るものがあるので、RPG好きなら要チェックの一品と言ってもいいだろう。バランス周りやストーリーにおける欠点も散見されるが、正統派RPGとして無難に完成されており、且つ軽い気持ちで楽しめる作りになっている今作。
気軽に遊べて、テンポの良いRPGを求めているプレイヤー、そしてこれまでのスティング作品にアレルギーを感じていた方にこそ手に取って遊んでみて欲しい良作だ。個性は薄めだが、その分、圧倒的な安心感が満載。過去のスティング作品を楽しんできた方も、細かいシステム周りにおいてはそのらしさが炸裂しているので、是非、お試しあれ。
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