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≫Never7 the end of infinity(ネバーセブン ジ・エンド・オブ・インフィニティ)
■発売元 サイバーフロント
■開発元 レジスタ、5pb.(音楽)
■ジャンル ミステリアスアドベンチャー
■CERO C(15歳以上対象) ※恋愛、セクシャル描写あり
■定価 5040円(税込)<※Best版:2940円(税込)>
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 メモリースティックの残り容量によって変化(※使用容量:608KB以上)
100個(※クイックセーブ)
■その他 メモリースティックDuo&メモリースティックPRO Duo対応
■総説明書ページ数 17ページ
■推定クリア時間 7〜8時間(1周単位)、25〜45時間(真エンド、完全攻略目的)
4月1日の朝、主人公「石原誠」は最悪の目覚めを迎える。
あまりに現実感の強い悪夢を見たのだ。
その悪夢とは、目の前で女の子が非業の死を遂げるというもの。
しかし、女の子が誰だったのか、場所は何処だったのか詳しい事は覚えていなかった。

ただ一つ、その日が6日後の4月6日だった事を除いて。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆全6話(6日間)を二度に渡って繰り返す、ループ要素を取り入れた独自のシナリオ構成
◆恋愛とSF要素などが複雑に絡み合った、一筋縄では行かないシナリオ内容(特に真相を暴く最終パートで語られる内容とそのトリックは必見)
◆メッセージ、スキップの速度・仕様調整にメッセージウィンドウの濃淡調整まで、充実し過ぎのオプション機能
◆全ルート攻略を目指す際のショートカット機能として、大きな手助けとなるクイックセーブ(最大100個まで保存可能と、領域の広さも圧巻)
◆1ルート7〜8時間ほど、最終パートを目指すと20時間強を要する適度な総計ボリューム
◆基本、総当りの力技で最終パートまで攻略可能な緩めの難易度
◆選択肢完全制覇、エンディング集めなど充実した収集系のやり込み要素
◆複雑な用語も登場するシナリオのサポートとして機能している用語解説機能
◆ストレス皆無の良好なゲームテンポ(ロードも短く、サクサク進む。スキップも速い)
◆世界観と場面に絶妙にマッチした、良質な音楽(ほのぼのとした作風も秀逸)

--- Bad Point ---
◆ギャルゲー色全開の為、人によって好みが分かれ易いキャラクターデザイン
◆キャラクターイラストの統一性の無さ(一部、妙に歪んだデザインや頭身のおかしなものがあったりと、まとめ方が雑。)
◆シナリオの設定と雰囲気からして場違いも甚だしいオープニング主題歌
◆一部、設定の矛盾となる描写の存在(詳細は伏せるが、守野くるみと主人公との関係に絡んだ描写に見受けられる)
▼Review ≪Last Update : 12/12/2010≫
悪夢は真実なのか、虚構なのか。

貴方は真相をどう捉える?


独特の世界観、予想の斜め上を行くシナリオの仕掛けで好評を博した秀作アドベンチャーゲーム『Never7 -the end of infinty-(ネバーセブン ジ・エンド・オブ・インフィニティ)』のPSP向け移植版。開発はレジスタ、音楽全般を5pb.が担当。

恋愛モノと思いきや、実はSFサスペンス?
想定外のトリックが仕込まれたシナリオが光る、秀作アドベンチャーゲームだ。

ゲーム内容はテキストアドベンチャーゲーム。登場人物の会話を追いつつ、その途中で頻繁に登場する『選択肢』を選び、物語を進めていくというものである。ストーリーは4月1日から4月6日の6日間、6話構成で展開。プレイヤーは主人公の石原誠となり、複数の女性キャラクター(ヒロイン)を中心とする登場人物達との会話を交わしていく。この説明だと、ヒロイン達とのコミュニケーションを楽しむアドベンチャーゲーム(もの凄い言い方をすると、イチャイチャするゲーム)と言った感じの内容をイメージするだろう。それは間違ってはいない。今作の最終的な目的は、そのヒロイン達の一人と、親密な関係を作り上げる事である。しかし、今作にはそれとは別にもう一つの目的が用意されている。
それは予知夢が告げる結末を阻止する事。
上記、ストーリー紹介の通りだが、今作では冒頭の4月1日、主人公がとんでもない夢を見る。仲の良い女性が非業の死を遂げるという夢だ。しかも、その女性が死を迎える日は4月6日。1日から丁度6日後である。ただの夢が現実になる筈が…と疑ってしまうだろうが、ストーリーは本当にその夢が現実となるかの如く展開していく。更にこの6日後に非業の死を遂げる女性が、正確に誰なのかは不明。ただ一つ判明しているのは「主人公と親密な関係である」という事だけで、プレイヤーはその女性が誰なのかを探りつつ、6日後の結末を阻止する為に行動していく事になる。とは言え、基本的に行動と言っても、やるのは『選択肢』を選ぶぐらい。そんな複雑な行動は求められず、シンプルにその過程を楽しめる。ただ、選んだ選択肢により、後のストーリーが大きく変動するので、選択には慎重を呈す必要がある。また、その選んだ選択肢によって、関係を持つ女性も大きく変化し、応対もそれに合わせたものを心掛けていかねばならなくなる。やる事自体は単純であり、尚且つ関係が持てると、男性にとっては夢のような展開もある訳だが、最後には悪夢が訪れる事が決定されている。それを如何にして防ぐか、あれこれ模索するのは結構、緊張感あり。
ストーリーの目的やジャケットの印象からは、まさに見たまんまの恋愛モノをイメージしがちだが、実際はその要素を含みつつも、最悪の結末を阻止するという謎解きの要素も詰め込まれた、なかなかユニークな内容となっている。なので、ジャケットの印象から抱くイメージを持ってプレイすると、盛大に裏切られるのは必至。その予想外な緊張感には、思わず関係を作るのを忘れてくぎ付けになってしまうだろう。
また、本編で登場するヒロインは全部で5人。この5人全てが選んだ選択肢によって主人公と関係を持つようになる。そして、関係を持った末には例の最悪の結末が訪れるので、上手く事を運んでいかなければならない。基本的にこの内の誰かだけ最悪の結末が訪れないというのは無いので、尚更だ。関係を作り上げるのも、そうスラスラとはいかない。一応、フィクションのストーリーとは言え、その容易ならぬ描写には現実にも通ずる何かを、人によっては感じてしまうかもしれないだろう。最悪の結末を迎える構成にそれまでの展開と言い、シビアな作りなのだ。なかなかの鬼っぷりである。

そして、そんなシビアな描写と設定が凝らされたシナリオが今作の売り。というよりも、このシナリオに凝らされた仕掛けこそが最大の魅力である。
いきなりだがネタバレしよう。このシナリオ、実は6日後まで進めると関係を持った女性も主人公も死んでしまう。どんな選択肢を選ぼうとも死ぬ。足掻いても絶対に死ぬ。予知夢は現実になり、物語は終わってしまうのだ。「バッドエンド確定済みのシナリオなのかよ!?」とか思うかもしれないが、そうではない。というのも、この結末を迎えた後、予想だにしない事態が発生。時間が4月1日へと戻り、以前と同じ日常が繰り返される。いわゆる『ループ』が生じるのである。
実は今作のシナリオは全6話構成の一本道でなく、全6話が繰り返されるループ構成。予知夢の告げる悲劇が訪れる一周目、悲劇の阻止に向けて関係を持った女性と共に行動する二周目で構成されているのだ。つまり、最初は女性との関係を持つ事に集中した上で悲劇を向かえ、次に悲劇の阻止を行うというのが基本的な流れ。あまりに奇想天外な仕掛けが凝らされたシナリオになっているのだ。
しかも、関係を持つ事に尽力するのは最初の一周目だけの話。二周目以降は最悪の結末を迎えない為の行動を取るという謎の解明が中心になるなど、シナリオの雰囲気も展開も全てが別物になってしまう。もはやそれは、ミステリーも同然。ループだけに留まらず、作風の変更という仕掛けまでもが、このシナリオには仕込まれている。まさに「羊の皮を被った狼」とはこの事。ジャケットは恋愛アドベンチャーそのまんまなのに中身はミステリー、或いはサスペンスと、見た目と中身の差が驚くほどかけ離れた内容になっているのである。女性との関係を作りながら死を防ぐ為に行動する、それだけでも十分インパクトはあるのに、それを凌駕する仕掛けが仕込まれてるという中身の濃さ。今作をいわゆる『ギャルゲー』と括って見るのが如何に間違っているか、もはや言うまでも無いだろう。その要素はあくまでもストーリーを盛り上げる一つの要素に過ぎず、最大のテーマはそのループを始めとする「謎」となっている。
故にシナリオ上でも、女性の性格や関係以上にそれらの描写が強調されるのも特徴。話のあちこちで登場する『鈴』、『神社』、主人公が口走る既知の事実など、実際にプレイすると、関係を作る事や最悪の結末を防ぐ以上にそちらに目が行ってしまうだろう。
更に先程、5人のヒロインが登場し、全員が主人公と関係を持つと語った通り、シナリオには5通りの結末が用意されている。そしてその5通りの結末を迎えると、最後の第6のシナリオが出現。このシナリオは、作中の謎に焦点を当てた内容で、初期の一周目も含め、それにまつわる展開が繰り広げられる。何故、ループが発生するのか、そして主人公は知らないはずの事を覚えているのか?ここだけは深刻なネタバレになる為、詳細は控えるがただ一つ、事の真相は予想を遥かに上回るもの、とだけ言っておくとしよう。
強いて言うなら、このシナリオに辿り着くまで、そこそこ長い時間を必要とするので、モチベーションが落ち易いのがちょっとした欠点ではあるが、それほどの時間を必要としただけの価値のある展開が待っている。是非、全てのヒロインとの関係を作ってハッピーエンドを迎え、この深層に辿り着いてみて欲しい。このシナリオを体験した時、ほとんどの人は今作を典型的なギャルゲーとは絶対に呼べなくなってしまうだろう。プレイする前、今作にそういうイメージを強く抱いていた人なら罪悪感すら覚えるかもしれない。それほどのインパクトが、今作のシナリオ及び最後の真相を追うパートにある。見た目の印象から敬遠を覚える人もきっと多いと思うが、あえてそんな先入観を持ったままの状態で最初からプレイしてみよう。言葉では表し難い衝撃をお約束する。

また、今作で素晴らしいのはシナリオだけではない。プレイ環境全般に関しても、非常に優れた完成度を誇っている。
特にサポート機能の充実っぷりは凄いの一言では済まない。ループするシナリオと何度もそれを体験するゲーム性の構成を考慮した、高速スキップ(早送り)、メッセージスピード調節、クイックセーブ(一時保存)など、プレイ時のストレスを軽減させる為の機能が沢山実装されている。しかも、スキップは既読から強制まで好みに応じたパターンが用意されているほか、メッセージスピードに関しても驚くほど細かいレベルまで調整できるなど、設定可能な範囲の広さもずば抜けており、あらゆるプレイヤーの欲求に応えてくれる。幾ら何でも、これはやり過ぎではないのかと、逆に突っ込みを入れたくなってしまうほどだ。しかも、この設定は本編プレイ中のあらゆる場面で自由に変更が行えるという手の届きっぷり。
冗談とか無しに快適過ぎて逆に恐怖を覚えるほど、徹底した作り込みが成されている。また、設定範囲が広い故にプレイ中にテンポが悪くてストレスを感じる事も皆無。むしろ、そう言った事など、設定で全部潰してしまえば、絶対に起こり得ないという隙の無さ。これを凄いと言う以外に何と言うべきか。ユニークな仕掛けが凝らされたシナリオも魅力的ではあるが、この環境周りの出来栄えも結構なもの。この恐ろしいほど痒い所まで手の行き届いた作りには、実際に触った人のほとんどが衝撃を受けること、間違いなしだ。幾ら何でも、スタッフの気配り…常軌を逸し過ぎだろと、人によっては溜息が出てしまうかもしれない。
その他、操作性も良好で、これと言ってケチの付け所なし。インターフェース周りも見易く、また選択済みの選択肢は色を変えるなどの気配りも徹底されており、非常に遊び易い。
ボリュームも一人単位のシナリオは6〜8時間ぐらいと手軽だが、完全クリアを目指すと25〜30時間以上と結構充実している。また、選択肢の完全制覇やCG集めなど、寄り道のやり込み要素も揃っていて、意外と長く遊び込める。CGを閲覧するギャラリーやサウンドテストなど、おまけ要素が豊富に用意されているのもなかなかニクい。
音楽も場面にマッチした良質な曲が満載。見た目の印象とは打って変わって、少し悲しげな作風になっているのが何処となく面白い。一方でグラフィックは主にキャラクターの作画に少々難アリ。時々、一枚絵のCGと画風が違っていたりなど、微妙に統一感の無い部分があるのが気になる。背景は言う事無しな出来だけに、もう少し統一には気を配って欲しかったところだ。演出周りも本編は特に言う事無しだが、オープニングムービーの主題歌はどうにかならなかったのか。歌っている人に申し訳ないが、あれは今作のストーリーの雰囲気からかけ離れ過ぎてる気がしてならない。

また、キャラクターデザインも結構、ギャルゲーっぽさ全開の画風なので、人によって好みが分かれ易い。ただ、この画風だからこそ終盤のストーリーとテーマ性に強烈なインパクトがあるので、一概にダメだとは言えないのが難しくもある。でも、一番今作にとって一番の欠点は、そう言ったデザインを起用しているが故にギャルゲーと誤解され易い事かもしれない。実際、それは間違いではないのだけども。
ただ、改めて強調させて頂く。今作はその描写以上にミステリーに焦点を当てた内容なのである、と。ジャケットの印象からは想像もできないようなストーリーになっているのだと。断じて見た目で判断しないで欲しい。プレイする際は、その見た目をイメージしたままにすると、面白い事になる訳だが。ともあれ、色んな意味で見た目とのギャップの激しさが立つこの『Never7 -the end of inifinity -』。アドベンチャーゲーム好きは言うまでも無く、PSPを持ってるユーザーなら食わず嫌いせずにプレイしてみて欲しいお薦めの傑作である。しつこいが、今作はミステリーに焦点を当てたアドベンチャーゲームだ。「そんなまさか」とか思う人ほど、プレイしてみて欲しい。想定外の衝撃をお約束する。
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