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≫プリンセスクラウン
■発売元 アトラス(現:インデックス)
■ジャンル アクションRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5040円(税込)<廉価版:2940円(税込)>
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 メモリースティックの残り容量によって変化(使用容量:512KB以上)
■その他 メモリースティックDuo&メモリースティックPRO Duo対応
■総説明書ページ数 25ページ
■推定クリア時間 18〜25時間
古き伝承において、世界を統べる魔王ヴォーグロドは、この世界の何処かに鎖で繋がれており、その強大な魔力で世界を支える制裁を負っているという。魔王の下僕、魔族達は魔王を戒める鎖の封印を解く為、そして人間達は魔族の思惑を阻止する為、長きに及んで戦いを続けていた。
25年前には、人間界と魔族の世界が一つのゲートを介して結ばれた為、多くの魔族が人間界へと攻め入る事態となった。しかし、時の女王エルファーランの獅子奮迅の活躍により、魔王軍は敗北。世界を平和へと導いた。

時は流れ、エルファーランはこの世を去る。
そして、その血は三人の娘、長女エリエル、次女シドラエル、そして末娘のグラドリエルに継承された。

そしてグラドリエルが13歳となる誕生日。
母・エルファーランの黄金に輝く冠を継承する日がやってきた。
新たな統治者となるこの少女は、民衆達の魔物に脅かされる生活に心を痛めていた。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆異なるアクションと変わった展開が味わえる、全四+一部の密度の濃いゲーム本編の構成
◆格闘アクションのような構図と独特の戦術性が異彩を放つ、独特の戦闘システム
◆格闘アクション風ながら、複雑なコマンドは一切なしで、直感的に必殺技を繰り出せる手軽な操作性
◆お手軽ながらも生温さ一切なし、常に真剣勝負となるよう調整された良好な戦闘バランス
◆武器装備、細かなステータスなどを廃し、直感的に遊べる手軽さを演出したRPG周りのシステム
◆複雑な謎解きを廃し、戦闘だけを楽しんで欲しいという潔さが現れた独特のマップデザイン
◆エンディングまで大体18〜25時間程度と、適切且つ遊び易い量でまとめられた総計ボリューム
◆芸術的で精微なドット絵と人間臭いアニメーションで魅せる、珠玉のグラフィック
◆美味しそうな雰囲気全開、空腹時には危険極まりない破壊力を持った料理全般のドット絵(おまけに解説テキストでも美味しそうな雰囲気を出す徹底振り)
◆オシャレでほのぼのとした作風ながら、時には徹底的に盛り上げる一面も持った良質の音楽
◆童話のような雰囲気と王道のファンタジーを突き詰めた丁寧な描写が秀逸なストーリー
◆ファイル選択画面、アイテム消滅時の演出等、舞台らしさを徹底追及したこだわりの演出群

--- Bad Point ---
◆エリア、階層切り替え時における長めのロード時間
◆ダンジョンにおけるセーブポイントの異様な少なさ(ゲームオーバーになったら最後にセーブした所からやり直し)
◆中断セーブ機能非搭載など、携帯用ゲームとしての致命的な配慮の甘さ(先のセーブポイントの少なさも相まって痒い所に手が届いてない)
◆潔さは見事だが、案の定平坦でメリハリに欠けたマップデザイン(一応、ストーリー展開で捻りを入れてるが、少し謎解きを入れても良かった気がする)
◆防御のタイミングがシビアな上、威力も高いのが地味にストレスな敵のカウンター攻撃
◆お手軽だが挙動が重く、ノロノロしている為、お世辞にも気持ち良いとは言い難い操作性
◆お使いイベント主体の単調極まりない内容のプロセルピナ編
◆雑魚敵のバリエーションの少なさ(あと2〜3体ぐらいは居ても良かった気が。)
◆4:3を基準とした、狭い画面比率(その為、16:9のワイド表示にすると映像がボケる)
▼Review ≪Last Update : 12/25/2011≫
悪堕ちで年齢も上がる。

どういう原理だ!?


セガとアトラスの共同開発タイトルとして、1997年12月11日にセガサターンで発売。美麗な映像美と童話のような世界観で好評を博したアクションRPG、『プリンセスクラウン』をプレイステーションポータブル向けに移植した作品。

童話のようなストーリーと美しいドット絵で魅せる、アーティスティックなアクションRPGだ。

ゲーム内容は2D横スクロールタイプで展開するアクションロールプレイングゲーム。グラドリエル女王を始めとする主人公を操作し、敵との戦闘やダンジョンの探索を乗り越えながらストーリーを進めていくというものである。
本編は全部で四つのシナリオで構成。各シナリオは1つクリアする事で順次、開放されていき、それに伴い、主人公も変わる仕組みとなっている。主人公となるプレイヤーキャラクターは四人。先に紹介したグラドリエル女王の他に剣士エドワード、海賊ポートガス、そして魔法少女プロセルピナが居る。メインは今作の題名からも明らかだがグラドリエルで、シナリオ上では彼女に最も時間が割かれた構成になっている。また、主人公が変わるという事で当然のように操作感、アクションにも違いがあり、それぞれのシナリオでは異なる操作感が楽しめる作りとなっている。最終的にこの4つのシナリオを全て攻略すると、最後のシナリオが出現。これを目指すのが、今作におけるプレイヤーの最終目的となる。
ゲーム本編に関しては、2D横スクロールで構成されたマップを移動していく形で展開。道中で敵と遭遇すると戦闘モードへと移行し、勝利すると移動モードへと戻る仕組みとなっている。戦闘はアクションとなっていて、最終的に敵の体力をゼロにすれば勝ち。ただ、珍しい仕様として、戦闘は基本的に1対1のタイマン勝負。いわゆる格闘アクションゲーム的な作りとなっている。それ故にアクション全般の操作もジャンプは方向キーの上を入力で行うだったり、防御はプレイヤーが顔を向けている方向とは逆に方向キーを倒す(左を向いているのなら右に入力、と言ったように)など、格闘アクションのお約束を踏襲した作り。ただ、複雑なコマンド入力は皆無。ワンボタンで手軽に連続攻撃や必殺技を繰り出せる、お手軽設計となっている。しかし、繰り返すがベースとしているのは格闘アクション。それだけに挙動には癖があり、攻撃にしろ防御にしろ、僅かに隙が生じるようになっている為、常にタイミングを見極めた操作が求められてくる。手軽に遊べる設計とは言え、その辺はかなり真面目な作りなので、油断すると手痛いしっぺ返しを喰らう。まさに手軽で手強い。直感的に遊べるけど甘さ皆無という、非常に特徴的なシステムに仕上げられている。
なお、戦闘はアクションな仕上がりであるのに対し、マップ構成はそれほどアクション全開な作りではない。基本的にアクション操作が求められる局面は皆無で、如何にもRPGっぽい平坦且つシンプルな作りになっている。ある意味、RPGのマップをそのままアクションゲームのような作りにしてみたような格好なので、その辺の面白さを期待するのは間違いだ。見た目がアクションなだけに少々勿体無い感もあるが、平坦故に移動パートで変なストレスや行き詰まりを味わう事はないというのは結構な強み。あくまでもアクションは戦闘だけと、適切に割り切った設計となっている。
その辺の割り切りはRPG周りのシステムにも現れていて、装備システムは防具系アイテム限定で武器装備は無し、攻撃力や防御力と言ったステータス情報も皆無と、非常に素っ気無い作りとされている。レベルの概念もあるが、視覚的には体力の最大値が増えるぐらいしか情報が入ってこず、強くなったという手応えが得難い。しかし、そう簡素に作られている為に本編の戦闘やストーリーに集中できる。細かい事に気を配らず遊べるので、そういう点ではかなりの強みであり、アクションゲームの直感的に遊べる売りを見事に反映した設計と言えるだろう。無論、簡素であっても防具の装備を変えて異なる戦法で敵に挑むなど、それらしい手応えはしっかり味わえるように作られている。装備とは別にアイテム管理も程好く頭を悩ませる仕様にされているので、RPGとしての手応えと味はバッチリだ。まさにこのストーリー構成と戦闘システムでこの簡素さありと断言できる出来。確かな説得力に満ちたものにまとめられている。
このようにゲームデザイン的にはストーリー重視のアクションRPG。ただ、戦闘の歯応えはなかなか。決して生温いゲームにはなってないし、RPG的な戦略が求められる場面もある。手軽に遊べはするが、全体の密度と遊び応えはなかなかのもの。しっかり遊び込める、良質且つ何処となく懐かしい香りに満ちたアクションRPGとして完成されている。

そんな今作の魅力は例によって、格闘アクション風味の戦闘システムである。相手との間合いを図りながら攻撃を仕掛け、一気に畳み掛けていく過程は、他のアクションRPGとは一線を欠く緊張感と独特の手応えに満ち溢れている。
特に複雑なコマンド入力などが一切求められず、直感的に連続攻撃と言ったコンボ技、必殺技を繰り出せる敷居の低い設計が大変秀逸。格闘アクションというと、必殺技を出すにも複雑なボタン操作を入力しないといけないのがある意味、お約束となっているが、今作はほとんどワンボタン、それもガチャガチャプレイで気軽に技を繰り出せるお手軽設計。なので、誰もが格闘アクション独特の間合いを取りつつ、一気に攻め込んでいく爽快感を存分に味わう事ができる。
無論、お手軽だから難易度が温い訳でもない。先も解説したが、攻撃や防御には決まって隙が出るようになっているので、少しでもタイミングを誤れば簡単に敵の返り討ちを浴びる地味にシビアな調整。がむしゃらにボタンを押しまくればどうにかなるほど、甘いものにはなってないのだ。それに、敵も例えどんなに雑魚であれ、全力でプレイヤーに襲いかかってくる。こちらの攻撃を中断させ、大ダメージを与えるカウンター攻撃を仕掛けてきたり、なかなか隙を見せずに俊敏な動きをしてきたりと、意外に強敵ばかり。冗談抜きに舐めてかかると痛い目に遭う面子ばかりが揃っている。そういう真面目な作りをしている為、勝利後の達成感も結構なもの。格闘アクションに手馴れたプレイヤーでも、十分過ぎる手応えを堪能できるものに仕上げられている。
そうなると、実は苦手な人には辛い作りと思うかもしれないが、回復用アイテムは簡単に入手できるほか、レベルを上げればゴリ押しも効くようになるなど、大らかさはきちんと残している。苦手な方はレベルを上げたり、或いはアイテムを大量に持ち込んで押し通す。対し、得意な方は操作テクニックで乗り越えるなど、腕に応じたやり方が遊べる幅の広さはちゃんと持ち合わせているので、基本的にはどんなプレイヤーでも難なく遊べる設計だ。まさにRPGと格闘アクションの融合とも言うべき良好なまとまり具合。新鮮味もなかなかで、唯一無二の魅力を持ったものに完成されている。
また、この戦闘システムを象徴する、ベルトスクロール型格闘アクション風味のマップデザインも印象的。道中を歩いて敵と遭遇するとその場で戦闘が始まる仕組みとかは思いっきり、ベルトスクロール型格闘アクションのそれで、あのシステムをRPGにするとこうなるのかという妙な味わい深さがある。
更にこう言った設計故、RPG特有の謎解きもほとんどなく、ダンジョンなども探索主体で直感的に遊べてしまう敷居の低さも魅力的だ。しかし、それ故に平坦過ぎるのも事実。ロケーションこそ多彩ではあるが、道中にせよダンジョンにせよ、一直線の道ばかりなのであまり面白くない。最初こそ楽しいと感じられるものの、中盤以降からはダレてきてしまう。一応、ストーリー展開などで単調さを出さない為の工夫こそちゃんとされているが、正直、レベルデザインとしてのまとまり具合はイマイチと言わざるを得ない。戦闘システムが戦闘システムなだけに、これが限界だったのかもしれないが、願わくばもう少しパズル的な謎解きを盛り込むなど、メリハリを付けて欲しかったところだ。
他に、気持ちよく遊ぶ為の配慮が欠けているのも惜しい。特にダンジョンは単調のみならず無駄に長く、それでいてセーブポイントを全く配置してないとか、さすがにシビアに作り過ぎだ。2時間以上かけて辿り着いたボス戦でも、負けたらまたダンジョンの入口からやり直しというのはあんまり。中にはセーブポイントを置いた所もあるが、片手で数えられる程度しかない事が今作の配慮の甘さを如実に表している。それでいて次の階層、街に入った時などに長めのロードが生じるので、テンポ周りでもストレスが溜まる作りになってしまっているのだからどうしようもない。このロードに関しては技術的な問題もあったと思うので擁護の余地があるが、さすがにセーブポイントの少なさは大いに問題あり。携帯ゲーム機のゲームなのだから、そういう直に止められるような救済処置は無理にでも押し込むべきだった。元々ベタ移植な為、オリジナル版そのままにしたのだろうが、それでも十分に問題な所なので、願わくば直して欲しかったところだ。
誰もが手軽に格闘アクションの面白さを味わえる戦闘システムは、大変魅力的だ。手軽でありながら結構歯応えがあり、大らかさも併せ持ったバランスも良い。しかし、それを支えるレベルデザインや配慮があまりに甘く、折角の魅力が損なわれてしまっているのは実に惜しい。それらがもっとしっかり作られていれば、更に魅力溢れるゲームになっていた。戦闘システムの出来は悪くないだけに残念の一言に尽きる。ただ、それでも戦闘システムの魅力は本物。シンプルだけど本格的なその作りは、一度でも体験する価値がある。

操作性に関しては、格闘アクションをベースにしているだけに挙動が重く、癖がある。特にガチャガチャボタンを押してもテンポ良く技が出ない、間の開いたモーションが展開される構図は少し気になるかもしれない。ただ、キー配置は全体的に悪くなく、手に違和感なくフィットする仕上がり。インターフェース周りのレスポンスも総じて良好な出来となっている。
ボリュームも四つのシナリオと最後のシナリオを含め、大体18〜25時間程度と適切。ただ、プロセルピナのシナリオに関しては、お使いイベント主体という内容なだけに非常に退屈。その他のシナリオは構成がちゃんとしており、それなりに退屈せず遊べるのだが、ここだけは調整ミスと言わざるを得ない。願わくば、このシナリオ上で回収する事になるアイテムの数を減らすと言った配慮が欲しかったところだ。
ドット絵で描かれたグラフィックに関しては非常に良い出来というか、もはや芸術そのものである。精微な描き込みと滑らかで人間臭いアニメーションの数々は、単に見ているだけでも圧倒してしまうほどの出来栄え。背景周りも非常に美しく、こちらも思わず見惚れてしまうほどの仕上がりだ。この芸術的なグラフィックを見るだけでも、今作をプレイする価値は大いにあり。ドット絵の一つの到達点とも言えるその出来栄えは、何が何でも要チェックである。

音楽もファンタジックな世界観にマッチしたお洒落で、何処かほのぼのとした作風の曲が充実。対し、オープニングデモでは異様に格好良い曲が流れたりするのも面白い。グラフィックに比べるとこちらはインパクトに負けるが、それでも水準以上の仕上がりとなっている。その他、シナリオも非常に良い出来で、童話のような独特のほのぼのとした雰囲気が良い味を出している。無論、魅せるところではきちんと魅せるなど、構成もとてもしっかりしている。登場人物も個性的な面子ばかりで、先のプロセルピナは必見だ。演出周りも童話の世界観を意識した舞台的な表現が多く、アイテム消滅時には敵のゴブリンがこっそり回収するなど、凝った仕上がりになっているのが面白い。
レベルデザインと配慮の不備により、プレイするのに少し覚悟の必要な作りになってしまっている為、傑作とは言い難いが、意欲作とは十分に言い切れる出来。格闘アクション風味の戦闘システムに適度に歯応えのあるゲームバランス、そして芸術的なドット絵と童話風味のシナリオなど、沢山の魅力を兼ね備えた内容に仕上げられている。
携帯ゲーム機のゲーム的に重過ぎるところもあるが、唯一無二のゲーム性と世界観が異彩を放つ今作。少し風変わりなアクションRPGをプレイしたい方にはお薦めの一本だ。ストーリー重視のRPGが好きな方にもお薦め。ただ、結構シビアなので、その点だけはご注意を。
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