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≫RESISTANCE(レジスタンス) 報復の刻
■発売元 ソニー・コンピュータエンタテインメント
■開発元 Bend Game Studio
■ジャンル アクションシューティング
■CERO C(15歳以上対象) ※暴力、出血、犯罪描写等あり
■定価 4980円(税込)
ダウンロード版:3800円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人(※アドホックモード、インフラストラクチャーモード時:2〜8人)
■セーブデータ数 メモリースティックの残り容量によって変化(※使用容量:736KB以上)
■その他 メモリースティックDuo&メモリースティックPRO Duo対応、ワイヤレスLAN(アドホックモード、インフラストラクチャーモード)対応、UMDPassport対応タイトル
■総説明書ページ数 35ページ
■推定クリア時間 7〜10時間(エンディング目的)、20〜35時間(完全攻略目的)
1920年代、ロシアで発生した新種のウィルスは、感染した人間を未知の生物『キメラ』へと変えていった。異常事態をロシア国内に留めようとした欧州各国の努力も虚しく、1950年にはキメラの脅威がイギリスに達するまでとなった。

1951年7月、アメリカ軍はイギリス上陸作戦を開始。
そして陸軍軍曹ネイサン・ヘイルの活躍により、イギリスのキメラタワーは陥落した。

しかし、それから数週間後。西ヨーロッパ沿岸部の全域で、キメラは大規模で詳細不明な建造を驚くべき速さで進行。既にヨーロッパをキメラの脅威から解放する時間的余裕はなくなっていた。フランスのレジスタンス『マキ』はイギリスのキメラタワー陥落の再現を目論み、イギリス軍に協力を要請。イギリスからルクセンブルクへ上陸し、パリへと南下するオーバーストライク作戦が計画された。

そんな中、脱走罪により銃殺を待っていた一人の兵士がオーバーストライク作戦の重要な一員となる。死刑囚から英雄となる、その男の名はジェームズ・グレイソン。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ボタン数の少なさを豊富なサポート機能で補った、PSPでTPSを実現させる制作陣の意地が炸裂した操作性
◆細かな照準操作をせず、即座に敵に狙いを定めてくれる快適さが見事な照準アシスト機能
◆最も簡単な難易度でも結構手強い、歯応え抜群のゲームバランス
◆豊富なリトライポイント、難易度選択機能など、痒い所まで手の届いた救済処置の数々
◆ルールが多彩、更に遅延皆無で快適性も抜群と、非常に高い完成度を誇る『マルチプレイ』
◆PSPのハード限界を徹底追及した鬼気迫る描き込みが光る、美麗なグラフィック
◆操作を練習する為の展開とプレイヤーを楽しませる展開が絶妙にまとめられた、『キャンペーン』のレベルデザイン
◆水中、ロボットによる進撃など、多彩でユニークな戦闘シチュエーション(特に水中戦は必見)
◆情景曲主体ながら、映画さながらの空気感と戦場の恐怖感を引き立てる珠玉の音楽
◆同じく、映画さながらの空気感と戦場の恐怖感を引き立てる質感抜群の効果音
◆エンディングまでは短めだが、難易度制覇や指令書集め、更にマルチプレイなどやり込み要素が満載で遊び応え抜群の総計ボリューム
◆予想だにしない敵との対決に衝撃的な結末など、見所満載のストーリー

--- Bad Point ---
◆照準アシストなどの恩恵もあって動かし易くもあるが、やはりボタン数の足りなさ故にぎこちなさもある操作性
◆自動方式の為、好きな時に物陰に隠れられないのが地味に嫌らしいカバーアクション
◆キャンペーン中盤終わり頃から呆れるほど沢山出てくる、自爆攻撃主体の難敵『ボイラー』(しかもヘッドショットでないと上手く倒せない。この為、中盤以降の難易度が跳ね上がってる)
◆何故かボイスと一致してない、不可解極まりないムービーデモの字幕
◆ラストも含め、全体的に微妙な強さのボスキャラクター達(正直、雑魚敵の方が強い…)
▼Review ≪Last Update : 10/30/2011≫
予想だにしないあの人の行動に目がテン。

中盤以降のムービーは電車内で見ない方が吉です。(色んな意味で)


『ラチェット&クランク』シリーズなどで知られるインソムニアックゲームズが開発し、全世界で大ヒットを記録した『RESISTANCE(レジスタンス)』の外伝作品。開発はソニーのファーストパーティースタジオ『Bend Studio』が担当。インソムニアックゲームズは監修で参加している。

PSPでTPSを実現させようとする、驚異の”意地”が炸裂した野心作だ。

ゲーム内容は三人称視点で展開するサード・パーソン・シューティング(TPS)。プレイヤーは主人公のジェームズ・グレイソンを操作し、謎の敵『キメラ』との戦闘に身を投じていく。
ゲームモードは全二種類。ストーリーに沿って進めていく『キャンペーン』、ネットワーク対戦プレイが楽しめる『マルチプレイ』が用意されている。メインは『キャンペーン』で、チャプターごとに用意されたエリアでキメラとの戦闘などを繰り広げていくというのが主な内容。本編は基本的に一本道の地続き構成で展開。チャプター内のエリアを全て攻略する事で次のチャプターへと進む、ファースト・パーソン・シューティング(FPS)ではお馴染みの構成を起用している。
なお、正伝『レジスタンス』はそんなFPSとして知られるゲームだが、今作は外伝作品という事で、ジャンルをTPSへと改めている。しかし、銃撃戦をメインとした内容であるので、基本的なゲーム性はFPSと大差ない。かと言って、FPSの正伝をTPSに改めただけの単純な内容でもない。三人称視点ならではの表現として、水中での銃撃戦という摩訶不思議で画期的なシチュエーションが盛り込まれている。他にも、ロボット兵器に搭乗しての戦闘や仲間と協力しながらの戦闘などの新要素が導入されている。特に前者、ロボット兵器に搭乗しての戦闘はそれまでの三人称視点でなく、コックピットの一人称視点で展開されるという、正伝を髣髴とさせる非常にユニークな作りとなっている。また、ロボット兵器ならではのダイナミックな攻撃アクションも充実。通常の銃撃戦とは異なる巨大な兵器で敵を蹂躙していく爽快感に秀でているのも大きな特徴だ。無論、ロボット兵器同士との戦いもあり、そちらもそちらで通常の銃撃戦にはない緊張感と巨大な敵に圧倒される独特の恐怖感がある。そんな少し趣の異なる一人称視点による戦闘も盛り込まれているのもあり、全体的な構成も非常にバラエティー豊か。プレイヤーを全く飽きさせない作り込みが成されている。基本はFPSの手応えながらも、三人称視点ならではのアクション性の強い要素、そして三人称視点ならではの演出とシチュエーションがギッシリ。ある意味、その充実振りはFPSの正伝に勝る密度と言ってもおかしくないかもしれない。それほどまでに三人称視点独特のカラーを押し出した、遊び応えのある内容に仕上げられている。
しかし、PSPでTPSというのには不安も抱くかもしれない。これはFPSにも言える事だが、そもそもPSPで遊べるジャンルなのか、と。実際にTPSやFPSというと、二つのアナログスティックがあってこそ遊べるジャンルと言える所がある。そして、それを使いこなして敵を倒していくのが、両ジャンルの醍醐味であると同時に特徴でもある。だが、PSP本体にスティックは2本も無い。パッドが一つあるだけだ。それでTPSがまともに遊べるのかと、疑問を感じるのも止むを得ない。また、仮に遊べたとしてもぎこちない操作系になるのでは、との懸念も抱いてしまうだろう。
実際に今作が起用した操作は懸念通り、ぎこちなくて無茶全開の操作系となっている。アナログパッドで移動、○×□△ボタンで照準を移動と、正直な所、それなりの慣れを要求される設計だ。ただ、そのぎこちなさを緩和する目的で自動で敵に狙いを定める『照準アシスト』という機能が備わっている為、思った以上に自然に動かせる作りになっている。無論、自由に狙いを定めて撃つ(エイム)時にはある程度の慣れが求められるが、とりあえず敵に銃撃したい際にこの機能は重宝する。また、この独特の操作を考慮し、本編ではチェックポイントを豊富に設けたり、序盤は敵の出現数を控え目にするなどの配慮も施しているので、思った以上にストレスは感じ難い。無論、初期操作が気に入らない方向けに別の操作体系も用意されている。正直、無茶振り過ぎる所はあるし、慣れが求められる作りなのは否定しない。しかし、細かなサポート機能が盛り込まれているのもあり、意外に遊び易さは上々。PSPでTPSを作るなんて無茶、という意見を体現している部分がありながらも、それを否定しようとする入念な配慮と作り込みが成されており、全体的には非常に野心溢れる操作系に仕上げられている。無茶だからってやらない選択肢はない、というその心意気と緩和策を徹底的に打ち出した姿勢には、制作者側の意地が垣間見える。ある意味、今作において最も注目に値する部分と言っても良いだろう。
PSPでは無茶とされるTPSを作るべく、ゲームデザインから操作系に至るまで、意地という名の作り込みとこだわりが炸裂。それでいて、外伝ながらもインパクトのあるシチュエーションや演出が満載と、中身の濃さも申し分無し。ストーリーの設定と名目上は外伝という扱いだが、正伝と言っても不思議でないその濃さと作り込みは圧巻の一言。
まさに野心作というに相応しい、魅力溢れる内容に仕上げられている。

例によって、今作の魅力は操作系を始めとする制作者の『意地』の数々だ。PSPでは難しいとされたTPSを遊び易いものとして仕上げ、プレイヤーに提供しようとする尋常無きこだわりと作り込みの数々には、職人の熱き魂が込められている。
特にこの操作の練習になるよう設計された、『キャンペーン』序盤のレベルデザインは秀逸の一言。いきなり正確な照準操作を求めるのは酷という事で、敵の出現量を控え目にしたり、仲間キャラクターとの共闘シーンを多めに設けるなど、初期段階のプレイヤースキルを考慮した入念な配慮が成されている。その配慮の恩恵により、自然と操作や各種敵への対応の仕方を掴む事ができる。更にテキストでダラダラと解説せず、最初からストーリーに則った戦闘を展開させ、それらを教えていくようにした作り方も見事。強制的にやらされている感じがしないのも素敵だ。プレイヤーに対する配慮を図りつつも、ストーリーとそれに基づく戦闘を描き、練習という事を全く意識させぬように作る。その巧みな作り方には、職人技というものを痛感させられる次第だ。この自然な設計には本当に驚かされる。
肝心の操作性にしても、始めこそその癖のある設計に戸惑うものの、序盤の親切な展開と『照準アシスト』機能の恩恵もあり、手に違和感なくフィットする仕上がりになっているのが素晴らしい。中でも『照準アシスト』は使い勝手が申し分なく、ただでさえ癖が強いボタンによる照準操作のストレスを緩和させる機能として、見事にその役割を果たしている。狙いの定め方も申し分なく、狙いたいと思う敵にサッと合わしてくれるのも有り難いところだ。そして、自動的に狙いを定めてくれるからと言って、照準操作に慣れなくても良いという設計になってないというのもミソ。自動的に狙いを定めてくれるとは言え、ヘッドショットは自分で狙いを定めなければならないし、敵の中にはそのヘッドショットで倒さないと瀕死の重傷を負わせられる凶悪な存在も居る。そして、中盤以降からはその敵が沢山現れるので、余計に照準操作をものにしなければならない必要が生じる。そんな便利機能だからと言って、万能ではないという弱点の部分があるのも非常に上手い。サポートしつつも、プレイヤーのスキルを試すそのニクい調整には、PSPでも確かな手応えと面白さを併せ持ったTPSを作ろうとした、制作スタッフのこだわりを感じ取れる。そして、その調整の恩恵もあり、多少の癖はあれど他のハードと遜色の無いTPSを完成させてしまっているのだから凄い限りだ。PSPはアナログスティック(パッド)が一本しかないから、TPSなんて作れる筈がない。そんな厳しい制約がありながらも、様々な工夫を凝らし、しっかり遊べる本格的なTPSを作り上げた今作のスタッフには、TPSに対する強烈なまでの愛とゲーム作りのプロとしての意地を痛感させられるばかりだ。まさに愛と意地があってこそ誕生した作品と言っても不思議ではないだろう。
また、『キャンペーン』のレベルデザインはネタの多彩さも大きな見所だ。ロボット兵器に搭乗しての戦闘、水中で繰り広げられる物理法則完全無視の銃撃戦など、あまりに個性的で嘘っぽさ全開のシチュエーションの数々は、プレイヤーの関心を惹き付けて離さぬ、強烈な魅力に秀でている。中でも水中で展開される銃撃戦は突っ込み所満載の仕上がりで、他のTPSに無い馬鹿馬鹿しさが素敵。そんなどう考えても変な場面で、主人公のグレイソンと水中で登場する敵が真面目に張り合うのだから、余計に笑いを誘う。元々、『キメラ』という人外の生命体が敵として登場するストーリーなだけに、こんな展開が描かれるのも不思議ではないが、硬派でシリアスな世界観を全面に出しながら、こういう奇妙なシチュエーションを描くセンスは(良い意味で)理解し難いものがある。さながらコナミの『魂斗羅』シリーズを髣髴とさせる、その無茶苦茶な展開は今作をプレイするにおいて最も見逃せないシーンと言っても良いだろう。
様々な配慮が成されてるとは言え、やはりボタン操作なだけに癖の強さが抜け切れてない所もある。しかし、PSPという制約の多いハードで、ここまで本格的なTPSを作り上げた手腕は高い評価に値する。硬派な世界観に似合わぬ展開など、基本の作りもしっかりしており、遊び応えも申し分無し。それほどまでに、細かい部分の作りが火傷必至の熱さ。職人魂炸裂の仕上がりとなっているのだ。例え大きなハンデがあろうと、本格的なTPSを作ろうとした今作は、まさにPSPの数あるタイトルの中でも飛び抜けた『意地』に満ちた作品と言っても良いだろう。これこそ正真正銘の野心作と言える作品だ。

ゲームバランスも良好。リトライポイントが豊富に設けられているので、例えやられながらでも確実に前へと進んでいける、モチベーションの殺がれ難い調整となっている。更に難易度選択機能も実装し、初心者から上級者まで幅広く対応。各種難易度の調整具合も見事で、最も簡単な難易度でも確かな歯応えを実感できる絶妙なバランスとなっている。
ボリューム周りもエンディングまでは大体8〜9時間ほどと短めだが、指令書集めなどの収集要素が豊富で、長く遊び込める。ネットワーク対応の『マルチプレイ』も極めるとなるとほぼ一生モノだ。また『マルチプレイ』はラグ(回線速度の遅延)が皆無で快適にプレイできるのみならず、ボイスチャットにまで対応しているなど、仕様周りが豪華なのも大きな見所だ。特にラグの少なさには、人によっては感動すら覚えるかもしれない。
グラフィックもPSPのハード限界を追求した仕上がりで、全体的に非常にクオリティが高い。要所要所で挿入されるムービーも非常に綺麗で、据え置き機ゲームと比べても何ら遜色の無い仕上がりとなっている。音楽も基本的に情景曲主体だが、どれも場面にマッチしており、映画のような雰囲気を醸し出しているのが実に印象的。効果音も戦場の雰囲気を嫌というほど引き立てる生々しい音が満載で、戦闘を大いに盛り上げてくれる。

ストーリーも初っ端から陰惨な展開が描かれたり、終盤に意外な人物が敵として立ちはばかるなど、見応えがある。また、戦闘の駆け引きなどはフルボイスで展開。声優陣も井上和彦、朴路美、立木文彦など実力派揃いで、各場面を大いに盛り上げてくれる。ただ、ムービーシーンにおいて、ボイスの台詞と字幕が別物になっているのは実に不可解。何故、こんな事が?折角、基本的な演出の出来が良いのに、こういう所で落としてしまっているのは残念な限りだ。
他にも終盤になると自爆攻撃を仕掛けてくる敵が大量に登場したり、ストーリーが駆け足な展開になったりするなど、少し惜しい部分が散見される。操作に癖がある為、万人に薦められない作りというのも惜しい部分といえば惜しい部分である。ただ、PSPという制約のあるハードで作ったTPSとしては、極めて高い完成度を誇る作品ではある。優れたサポート機能に練り込まれたレベルデザインと、唯一無二の魅力が詰まったこの『レジスタンス 報復の刻』。正伝シリーズのファンはさることながら、PSPで変わったゲームをプレイしたいコアなプレイヤーには特にお薦めの野心作だ。携帯機の枠を超えた本格的な銃撃戦を是非、その手で実感してみよう。
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