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  4. 戦場のヴァルキュリア2 ガリア王立士官学校
≫戦場のヴァルキュリア2 ガリア王立士官学校
■発売元 セガ(現:セガゲームス)
■開発元 メディア・ビジョン
■ジャンル アクティブ・シミュレーションRPG
■CERO B(12歳以上対象) ※暴力、恋愛描写、問題言語表現等あり
■定価 5800円(税別)≪廉価版:2800円(税別)≫
ダウンロード版:2476円(税別)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人(※アドホックモード時:2〜4人)
■セーブデータ数 メモリースティックの残り容量によって変化(使用容量:672KB以上)
■その他 メモリースティックDuo&メモリースティックPRO Duo対応、ワイヤレスLAN(アドホックモード)対応、データインストール対応(使用容量:500MB以上)
■総説明書ページ数 57ページ
■推定クリア時間 40〜55時間(エンディング目的)、120〜150時間(完全攻略目的)
征暦1930年代ヨーロッパ、大陸は強大な軍事力を誇る『帝国』と『連邦』にほぼ二分されていた。覇権を争う両国は、遂に開戦、『第二次ヨーロッパ大戦』が勃発した。

征暦1935年、両大国に挟まれ、中立を保っていたガリア公国に帝国が電撃的な侵攻を行った。多大な犠牲を払いながらも、義勇軍の活躍もあり、ガリアは帝国を退け、独立を死守した。

征暦1937年、大戦は未だ終結を見ず、ヨーロッパ各国へと戦火は拡大の一途を辿っていた。ガリア公国では戦災復興が徐々に進んでいたが、一方で政権転覆を狙う反乱勢力の活動が活発化。再生と変革の時を迎えたガリア公国に、内戦の兆しが暗い影を投げかけていた。

同じ頃、将来の軍士官を養成する伝統ある名門校『ランシール王立士官学校』に、それぞれの思いを秘め、新たな士官候補生達が入学する。
彼らはまだ知らない。時代の流れが、激しく動こうとしていることを。
今、ここで初めて会い級友になった者達が、明日には戦友に変わってしまう事を。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆前作同様にサード・パーソン・シューティング(TPS)の要素を取り入れた、斬新な設計と手応えが光る戦闘システム『BLiTZ(ブリッツ)』(携帯機でも前作と遜色ないプレイ感を実現)
◆『キーミッション』、『ストーリーミッション』、『フリーミッション』とマップが細分化が図られ、より密度、やり応え共に濃くなった本編のボリューム
◆スケールダウンこそしたが、敵配置からギミックまで、徹底的な作り込みが成された戦闘マップ
◆35種へと大幅に増量し、『剣甲兵』、『楽奏兵』と言った奇抜な新種も追加され、大幅な進化を遂げたユニット周り
◆上級兵種へのクラスアップ時にどの兵科になるかを選べるようになったほか、更にその上のクラス最上級兵種まで用意されるなど、より深みとやり応えの増したユニット育成
◆移動コストの減少、『装甲車』等の新種も加わって、使い勝手が向上した車両ユニット
◆低難易度モードが実装され、幅広いユーザーに応えた調整が施されたゲームバランス
◆全30人ものユニット一人一人に用意されたサブストーリーと専用マップ(寄り道要素ながら、ボリュームが圧巻)
◆『ポテンシャル』発動時の演出が簡略されるようになったほか、ロード時間も気持ち短めになるなど、若干ではあるが、前作よりもスピーディになったゲームテンポ
◆前作同様に少ないボタンで気持ちよくキャラクターを動かせる、良好な操作性
◆ハードのグレードダウンが顕著に表れてしまっているが、前作の雰囲気はちゃんと残されたグラフィック
◆前作よりも地味になったが、フルボイスによる会話、アニメムービーなどで十分に盛り上げてくれる演出周り
◆ストリーミング方式による重厚なオーケストラ調の楽曲が異彩を放つ、前作譲りの音楽

--- Bad Point ---
◆戦争を題材にしている内容なのに軽過ぎる上、突っ込み所満載な展開だらけの酷いストーリー(特に中盤にて、とある人物が死亡するシーンは白けること必至)
◆ペナルティこそあれど、戦争特有の緊張感が大幅に薄れたユニットロスト制の廃止
◆返って胃もたれし易い内容になってしまった感が否めない一章単位のボリューム(1マップ攻略にかかる時間も前作と変わらないので、一区切り着くまでの過程が凄く長い)
◆マップ攻略中のターンセーブ廃止(それどころか中断もできない鬼仕様)
◆敵を一撃で屠るほどの異様な調整が図られた『スナイパー』と新兵科の『剣甲兵』
◆何故かランダムドロップ方式が採用された、最上級兵種へのクラスアップ時に必要なポイント『単位』(この所為で、ボリューム的に水増しされている感が強い)
◆バリエーションは多彩であれど、基本的に使い回しが多用されているマップ
◆前作同様に微妙な遅延が生じるなど、良好とは言い難いキーレスポンス
▼Review ≪Last Update : 6/26/2016≫
グレードダウンしても、戦場の緊張感変わりなし。

けど、もの凄く強力な兵科が加わっちゃいました。


サード・パーソン・シューティング(TPS)の要素を取り入れた斬新な戦闘システムと歯応えのある難易度、水彩画調の美麗なグラフィック等で話題を呼び、国内外で高い評価を得たアクティブ・シミュレーションRPG『戦場のヴァルキュリア』の続編。前作のプレイステーション3から一転し、プレイステーションポータブル用ソフトとして発売された。また、開発にワイルドアームズシリーズで知られるメディア・ビジョンが参加している。

小さくなっても、独自の戦略性とゲームシステムは健在の力作だ。

基本的なゲーム内容は前作と変わらない。シナリオキャンペーン方式で展開する、サードパーソンシューティング(TPS)要素を取り入れたアクティブシミュレーションRPG。個性豊かなユニットを動かしてマップ上の敵を撃破し、プレイヤー側と敵のターン(行動順)を繰り返しながら勝利条件達成を目指していくというものである。
システム周りもTPSをベースとした独自の戦闘システム『BLiTZ(ブリッツ)』はそのまま継承。ハードがPS3からPSPへと大きくグレードダウンしたが、携帯機上でも完璧に再現されており、前作と全く遜色ないプレイ感を実現している。また、このシステム特有の要素であるTPSではお馴染みのヘッドショットのほか、ユニットを行動させるに当たって消費する『CP(コマンドポイント)』、ユニット行動時において消費し、全てが尽きるとそれ以上の行動ができなくなる『AP(アクションポイント)』、CPを一定量消費して部隊全体に特殊効果を与える『オーダー』と言ったものも健在。ハードこそ変わったが、前作を遊んだ経験のある方なら全く抵抗感なく入っていける仕上がりだ。勿論、チュートリアルも実装されているので、シリーズ未経験者でも大丈夫。そう言った初心者プレイヤーに対する配慮も前作同様、万全に成された設計となっている。
ただ、本編の構成とマップの作りは、前作とは趣の異なるものへと一新されている。本編に関しては、今回は『士官学校』を舞台にストーリーが展開していくという事で、『章』ではなく『〇月』単位で進む方式へと改められた。更に前作では1章当たりのマップは1〜2つだけだったが、今回は複数のミッションからなる構成へと大きく一新。『キーミッション』と呼ばれる課題ミッションを複数こなし、その後に出現する『ストーリーミッション』に挑むという流れになった。この『ストーリーミッション』は一種類のみで、攻略する事で現在の『月』が終了。次の月へと移行するという仕組みになっている。前作は複数のエピソードを挟んだ後、メインのマップ攻略に挑むというシミュレーションRPGのスタンダードに則った構成だったが、今回は複数のマップとミッションからなる構成になった事で1章単位のボリュームが大幅にアップ。加えて、シミュレーション本編の比重も高まり、前作以上に多彩な戦闘が楽しめるようになっている。
マップも前作のような広いマップを舞台にした戦闘では無く、複数のエリアから成り立つ小さなマップを舞台とした戦闘が展開していくスタイルへと一新。故にこじんまりとしたものになっているのだが、マップの密度は前作に引け劣らない。加えて、本編のボリュームにしても前作の二倍近くに膨れ上がっているので、やり応えもそれ以上のものになっている。
また、本編とは無関係の『フリーミッション』なるものも追加されたほか、今回は学校という事で同じクラス内のキャラクターに関連したサブイベントも豊富に用意され、それにちなんだ専用マップも展開されるようになっている。全体的に細分化された格好だが、前作以上のボリュームと豊富なストーリー描写を実現。スケール、デザイン共にハードのグレードダウンに等しい作りになってはいるものの、前作特有のシミュレーションRPGとしての手応えは健在どころか、しっかりと前作からの進化を感じられるものに仕上げられている。
また、システム周りも基本こそ前作と一緒だが、新たな要素を複数追加。更に既存要素にも改良が施されている。新要素関連で特に象徴的なものとして挙げられるのは、『モラルシステム』。部隊全体の士気を示す数値が表示されるようになった。この数値は0〜6まで変動し、高ければ高いほどユニットのポテンシャル(特殊能力)発動頻度が上がるなどの恩恵が得られるようになる。主に敵を倒したり、拠点を占拠したり、味方を救出したりする事によって上昇。逆に、味方が敵に倒される、自軍の拠点が奪われると減少。0になってしまうとゲームオーバーになる。この為、今回は如何にミス無く、且つ効率的に攻略する事が求められてくるようになっている。
そして、既存要素関連では車両の追加、兵種の追加、そしてユニットロスト制の廃止の三つが挙げられる。車両に関しては前作は戦車のみだったが、今作では新たに機動性に秀でた『装甲車』を追加。歩兵を運ぶなどの新たな戦術が実施できるようになった。また特定の『パーツ』を事前に装備しておく事で、仮設橋の設置、進路上を邪魔する岩の破壊と言った工作行為も可能になっている。更に戦車の中には移動コストが僅か1という軽量型も追加されるなど、ユニットとしての使い勝手も進歩している。カスタマイズ性のアップに活用場面の増加と、まさに順当な進化を遂げた感じ。前作の種類の少なさ、活躍場面が限られてくる点に物足りなさを感じていたプレイヤーには嬉しい改良と言えるだろう。
兵種に関しては、前作の10種から、35種と大幅に増量。近接攻撃専門の『剣甲兵』、楽器で戦う(!?)『楽奏兵』等の個性的過ぎるユニットが登場し、戦略の幅が広がっている。また、レベルアップの仕組みも変わり、兵種の属する『兵科』の中から枝分かれでクラスアップしていき、二種類の『上級兵種』、更にその上の4種類の『最上級兵種』へと変更できるようになった。主人公以外のキャラクターは変更できる兵種に制限があるが、これによって育成周りも劇的にパワーアップ。更に深く、やり応えのあるキャラクター育成を楽しめるようになっている。
そしてユニットロスト制の廃止。何と、今作から戦闘でやられてマップから消失してしまっても、ロスト扱いとならなくなった。逆に『入院』となり、3ミッションクリアするまで出撃不可というペナルティが課せられるようになった。これにより、気軽に戦闘を楽しめるようになった反面、戦争を題材にしたゲームとしての緊張感は薄れた。一応、ペナルティこそあるが、ここは正直、賛否の分かれる変更点と言えるだろう。そのリアリティがあるからこそ面白かったと感じた前作経験者なら、嫌悪感を抱くかもしれない。また、併せて増援要請が1ターンで可能になった点も、軟化と見て取られかねないところだ。とは言え、難易度自体はそれほど落ちては無い上、その仕組みを前提としたバランス調整が図られているので、温くなった訳では無い。ちゃんと手応えのある難易度である所はせめてもの救い、と言えるかもしれない。かと言って初心者を反故にはしておらず、前作ではクリア後の特典だった難易度選択システムがデフォルトで搭載され、簡単な難易度『イージー』を別途用意するなど、対策は万全。その難易度の変更も本編で好きなタイミングで切り替え可能と、良心的な設計にもなっている。シビアさこそ薄れはしたが、逆に幅広い層が楽しめる作りへと一新されたのは、素直に前作からの大きな進化と言ってもいいだろう。この他、細かい所でも、ポテンシャル演出の簡略化、ロードの僅かながらの高速化と言った前作の欠点にも修正が図られている。また、通信対戦も盛り込まれ、シングルプレイ以外の遊びも広がっている。
こんな感じに携帯機へのハード移行によるグレードダウンのイメージとは裏腹に、前作以上に密度が濃くなっているという意外性の強い内容。システム的に劣化した箇所もまるで無く、欠点もちゃんと改善され、難易度の幅まで広がるなど、紛れもない正統進化系の続編に仕上がっている。正直、それでも劣化しちゃっているんでしょと前作経験者は思ってしまうかもしれないが、プレイすれば思い知らされるだろう。ちゃんと再現されている上に進化している!…と。

そんな携帯機にグレードダウンした事を全く感じさせない、大ボリュームの本編と更なる進化を遂げた『BLiTZ(ブリッツ)』が今作の売りである。特にボリュームに関しては本当に圧巻の一言。一つの章で複数のマップが用意されたので、攻略に要する時間は前作の倍以上に増えたし、肝心のマップにしても使い回しがありながらも敵配置、ギミック等で多様な戦略性を描くなど、徹底的に作り込まれている。複数のエリアから成り立つ構成になった事で、前作の砂漠のような開放感のあるマップが無くなってしまい、局地戦のイメージが強くなってしまったきらいはあるが、『BLiTZ(ブリッツ)』によって描かれる3Dである事を最大限に活かした戦闘と戦術は健在。もっと色んなマップと色んなシチュエーションでシステムを楽しみたいという物足りなさを感じた前作経験者には、色んな意味でたまらない内容に進歩している。
新規ユニットの追加、既存ユニットの改善が図られ、更に深みが増した戦略性も見逃せない。中でも戦車は前作以上に使い勝手が良くなっている上、戦闘以外の面でも活躍する場面が設けられた事で、より存在感が高まっている。新ユニット『装甲車』も最速ターンでの攻略が狙い易くなるなど、よりスピーディな展開が楽しめるようになっているのも特筆に値する。更にパーツを装備するか否かでマップ攻略の流れが変わるようになった事で、戦車をカスタマイズする楽しさも飛躍的に向上。パーツを装備して裏をかく戦術で攻めるか、或いは何もつけずに真正面からぶつかるか、そう言った多様な手段でマップ攻略に挑めるようになったので、一つのマップだけでも二回以上楽しめる。
並行してユニット兵種の増加も、攻略の面白さに更なる深みを与えている。ユニークなのは、何と言っても近接攻撃で戦う『剣甲兵』。盾で敵の銃撃を防ぎつつ、近付いて斬撃するという戦法はTPSベースの戦闘システムにおいては異色も異色だが、このシステムだからこそ描けた緊迫感と攻撃を加えるしてやったり感が溢れていて面白い。特に敵に気付かれず、後ろを取って致命的な一撃を当てられた時はさながらステルスアクションゲームで相手をハメたのに近い快感が味わえる。武器も剣以外にハンマー等、変わったものが揃っており、銃一辺倒だった前作から見違えるほどバリエーションが増え、戦術の幅が広がっているのも注目すべき所。銃で距離を考えながら戦うというその構図だけでも、十分にシミュレーションRPGとして革新的なインパクトがあるのだが、そこに近接武器を入れ込む事で更なる新しい戦術とシステムの広がりを見せているのには、本当に驚かされるばかり。改めて、『BLiTZ(ブリッツ)』というシステムの可能性の大きさ、深みというものを実感させられるところだ。
また新ユニットだけでなく、継続ユニットも前作から再調整が図られて使い勝手が変わっている。特に前作ではポテンシャルとの並行もあって強過ぎた『偵察兵』は随分と大人しくなり、平均的なユニットへと改められている。こう言った問題点に適切な修正を図っている所にも好感が抱けるほか、正統進化系の続編としてのらしさを強く実感する事ができる。
また、話は本編に戻るが、シナリオ(イベント)のボリュームアップも圧巻。。特にサブイベントの充実は、メインストーリーにそれほど強く絡まないサブキャラクターの更なる掘り下げに貢献している。前作も前作でそのようなエピソードが用意されていたが、今回はマップ攻略も挟むという事でゲームとしてのやり応えも増し、より魅力溢れる作りへと進歩している。しかも、そのサブキャラクターの数は実に30人!その一人一人に固有のイベントを設けているというのだから驚かされるばかり。こう言った所においても本編のボリュームアップを実感させられる。そして、サブイベント攻略が本編の難易度に絡んでくるのも面白い所。ポテンシャルの開花と関連しているので、その進捗によっては高難易度のマップが一気に下がってやり易くなるなんてことも。あくまでもストーリーを楽しみたい人向けにせず、興味が無い人でもやる意義はあると強烈な付加価値を付けた作りにしている辺りにもこだわりと徹底して作り込んでいる事を実感させられる。残念ながら、ハードがPS3からPSPへとグレードダウンしたのもあり、イベントシーンはイラストによるものになってしまっているが、それでも見せ方や盛り上がり所ではアニメムービーを流す等、演出面はバッチリ。何より、イベントの物量が圧倒的に増えているので、あまりパワーダウンした事は感じさせられない。ハード特有の制限を受けつつも、しっかり続編としての進化を見せるべく工夫を凝らす辺りには、製作陣の強烈な熱意を実感させられるばかり。例え性能的に下でも中身の濃いものは作れるんだ!…というその鬼気迫る作り込みには、さすがは過去にそう言ったゲームを多数手掛けてきたセガだけにあると納得させられるところだ。
ただ、良い事ばかりでは無い。進化と改良が逆に新たな欠点を生み出してしまっているところもある。特にマップは本当にボリューム満点なのだが、どの月もメインストーリーに絡まない『キーミッション』を3つ以上攻略しなければならない為、イマイチ盛り上がりに欠ける。挙句、1マップの攻略に時間がかかる欠点も前作と変わらないので、非常に胃もたれし易い。さりげなく今回はターンごとのセーブもできなくなり上、中断も不可能なのも痛い。
ユニットにしても『偵察兵』こそ修正は図られたが、逆に『スナイパー』の火力が異様な方向に強化されてしまった。だが、それ以上に問題なのは新ユニットの『剣甲兵』で、ほとんどの攻撃が敵を一発で葬るレベルともはや完全なチート。入れればほぼ勝利が確定するような壊れっぷりだ。一応、移動力で弱点を設定してはいるが、それでも不十分な感は否めず。この辺に関してはまだまだ調整に関して一考の余地ありと言ったところである。兵種絡みでは、最上級の兵種への変更に当たって必要となる『単位』なるポイントが、ランダムで手に入る仕様にしても疑問符が浮かぶ。
そしてシナリオに至っては、何と前作以下に酷くなっている。戦争をテーマにした内容の割には軽過ぎる上、前作以上の突っ込み所満載な展開のオンパレード。特に中盤であるキャラクターが死亡する露骨過ぎるお涙頂戴な展開には誰もが「はあ?」と白けてしまうだろう。前作も前作でストーリーの出来は良くなかったが、それ以下のものを出すとは如何なものか。サブイベントの作りは悪くない勿体ない限りである。
そう残念な欠点が浮上してたり、一部に至っては前作以下になってしまってたりと散々な所はあるが、それでも携帯機へ移った事をまるで感じさせないやり応えとゲームとしての進化には目を見張るものがある。あんなに規模の大きなゲームの続編は同じハードで作るべきだろう、と前作の良さを味わった人なら思ってしまかもしれないが、案ずるより産むが易し。プレイすれば、シナリオ以外ではそれが間違った認識である事を存分に痛感させられるだろう。そうも今作は立派なまでに続編として完成された内容。2を名乗る素質を十分に持った内容なのである。

操作性もハードの設計上、右スティックが無くなってしまったが、前作と全く変わらない良好なものになっている。地味ながらレスポンスも向上しており、特に射撃時のスピーディな演出には前作からの進化を実感させられる。ただ、メニュー周りの操作が気持ち鈍いところは前作から変わってない。なので、気になる人は気になってしまうかもしれない。
難易度も選択機能が設けられた事で幅が広がっているが、敵の火力と耐久力が低めになるなど、やや温くなったと感じる所がある。ユニットロスト廃止で緊張感が失われた所も前作経験者には賛否が分かれるだろう。ただ、バランスブレイカーなユニットがいるとは言え、前作の偵察兵みたいな一方的且つ、突撃可能な展開が発生し難くなっているのは素直に評価できる部分と言えるかもしれない。(それでも、戦術は一方的なものになってしまうが…)
グラフィックに関しては、さすがにハード移行によるグレードダウンが顕著に表れてしまっている。とは言え、3Dモデルの出来は悪くなく、可能な限り元のイラストに忠実なデザインになっている。その辺はかつて、アニメっぽい3DCGを表現した実績のあるメディアビジョンと言ったところ。手慣れた職人の技が光る仕上がりになっている。音楽に関しては前作とほとんど変わらぬクオリティを実現。ストリーミング方式を採用しているだけにある、壮大で重厚なオーケストラ調の楽曲が豊富に揃っている。勿論、前作同様に作曲担当は崎元仁氏率いるベイシスケイプ。盤石の出来栄えだ。

演出絡みではボイスもアニメムービー以外に豊富に盛り込まれている。残念ながら、全編フルボイスではなくなってしまったが、実力派の面々が参加しているだけあって、盛り上がり具合は十分。特に学校長のローレンスを演じる青野武氏の演技は注目。中盤で魅せる狂気めいた慌て様と迫力ある叫びにはベテランの風格を存分実感させられるだろう。
その他、前作同様にダウンロードコンテンツも配信されており、それらも含めて遊べばボリュームはさらに膨れ上がる。しかも、ゲストキャラクターが参戦するタイプのDLCは無料、その他に至っても100円と非常に良心的な価格設定が成されているのは賞賛に値する。気軽に手が出せるという点でも非常に魅力的なものになっている。他にも最大四人まで参加可能な通信対戦&協力プレイなど、シリーズの新たな可能性を切り開く要素が幾つか。
ボリュームが出過ぎた所があったり、シナリオが更に残念な事になってたりと、褒められない所もあるが、ハードのグレードダウンというハンデがありながら、しっかりと続編として進化を遂げた内容に仕上がっているのには感服するしかない。携帯機でも独自の戦闘システムを継承しつつ、更なる進化と可能性を切り開く等、順当なパワーアップを遂げている今作。前作経験者は勿論のこと、シリーズ初心者の方もシナリオ上の繋がりがあるとはいえ、ここから入っても問題ない内容なので是非、プレイしてみて頂きたいPSP屈指の力作シミュレーションRPGだ。この3Dだからこそ成し得た戦闘システムとボリュームは一回でも味わう価値あり。体験版も配信されているので、興味のある方は是非、そちらで。お薦めです。
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