Written in Japanese. Japanese fonts required to view this site / Game Review & Data Base Site
  1. ホーム>
  2. Review Box>
  3. PlayStation Portable>
  4. イレギュラーハンターX
≫イレギュラーハンターX
■発売元 カプコン
■ジャンル アクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 パッケージ版:4800円(税別)、カプコレ版:1980円(税別)
ダウンロード版:700円(税込)
■公式サイト ≫ソフトウェアカタログ
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 メモリースティックの残り容量によって変化(※使用容量:512KB以上)
■その他 メモリースティックDuo&メモリースティックPRO Duo対応、アドホックモード対応(※ゲームシェアリング)、UMDPassport対応タイトル
■総説明書ページ数 36ページ
■推定クリア時間 2〜3時間(エンディング目的)、10〜12時間以上(完全攻略目的)
21XX年、人間に近い思考回路を持つロボット『レプリロイド』が開発され、人類はレプリロイドとの共存の道を歩み始めた。しかし、レプリロイドの社会が広がるにつれ、レプリロイドの犯罪が増加。これに対応する為、レプリロイドによる警察組織『イレギュラーハンター』が組織される。

これはイレギュラーハンター、エックスの物語である。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆追加要素や変更はあれど、オリジナル『ロックマンX』の良さを生かそうとするこだわりが光る、絶妙なリメイク具合
◆エックスとは異なる武器システム、癖のあるシナリオが光る新要素『VAVAモード』
◆ロード時間皆無、オリジナルと変わらぬスピード感が活きた、抜群のゲームテンポ
◆経験者向けの地形変更などの程好いアレンジも加えられた、サービス精神旺盛で作り込まれたステージ構成
◆配置が変更され、オリジナルとは異なる攻略が求められてくるステージ探索
◆攻撃パターンに多少の変化が加わり、戦い甲斐が増したボス戦
◆ダメージ効果音などオリジナル経験者を意識した、露骨な「お約束」の数々
◆おまけと言うには豪華過ぎる、気合いの入った出来のスペシャルOVA『The Day Of Σ』
◆オートセーブ、難易度選択など、オリジナル以上に親切になったサポート機能全般
◆『ロックマンX8』並に挙動が軽くなり、動かす面白さが大幅に向上した操作性
◆少し変更が加えられたが、オリジナルの絶妙さはきちんと活きたゲームバランス
◆オリジナルを元にした新作と言っても良い、新展開が盛り沢山のシナリオ
◆全編3DCGに描き直され、より美しさが向上したグラフィック
◆やや大人しくなったが、原曲の良さを尊重したアレンジが施された音楽
◆『ロックマンX8』とは異なり、大幅に声がカッコよくなったVAVA

--- Bad Point ---
◆ダッシュボタン(○ボタン)の押し難さ(PSPのボタン設計の都合により、オリジナル以上にぎこちなくなってしまった。但し、このキー配置はオプションで変更できる)
◆オリジナルと同様にやり込み要素が少なく、少し量に欠ける総計ボリューム(これはリメイクなので仕方が無い)
◆一部、陰湿な敵配置とトゲ配置が成された、新シグマステージ(ちと改悪)
◆ボイスだけをOFFするオプションの未搭載(あると良かった気がする…)
◆変更点が多い為、熱心なファンほど賛否が分かれ易いシナリオ(OVA含む)
◆基本、一曲しかない『VAVAモード』のステージ音楽(もう少し用意しても)
◆オリジナルより迫力が落ちた爆発演出(特にシグマステージのボス全般)
◆大幅に弱体化したスパーク・マンドリラー(弱点武器でハメ殺し可能になった…)
▼Review ≪Last Update : 9/20/2009≫
「さあ、続けようエックス!戦いを!苦悩を!破壊を!」

全ての原点がここに「転生」した。


カプコンの看板アクションゲーム、ロックマンXシリーズの原点、初代『ロックマンX』を現代風にアレンジした、リメイク作品。長らく低迷していたシリーズを華々しく蘇らせた、PS2『ロックマンX8』のメインスタッフが実製作を担当。

単なるリメイクに終わらぬ作り込みが光る、新作テイスト満点の傑作だ。

リメイクなので、内容はオリジナルである『ロックマンX』に順序。シリーズお馴染みの自由に選べる8つのステージを攻略し、最終ステージを目指すステージクリア型の2Dアクションゲームだ。
全部で4つのパーツを取得する事で、プレイヤーのエックスが強化される『パワーアップパーツ』、ダッシュ、壁蹴りと言った本家(無印)ロックマンシリーズには無い、異色のアクションの数々など、基本システム周りもこれと言って大きな変更を加えたりせず、オリジナルからそのまま継承。しかし、それ以外の部分は、大掛かりなアレンジが加えられている。
以下、代表的な変更点を抜粋&解説。


◆グラフィックのフル3D化
オリジナルでは2Dドットだったグラフィックが、『ロックマンX8』を髣髴とさせる3DCGに一新されている。但し、あくまでも2Dドットを3DCGに一新した程度であり、『ロックマンX8』のイエロー・ブロンデス戦、ダークネイド・カマキールステージを髣髴とさせる、「3D的に魅せる演出」は控えめとされている。(一部のステージには、3D的に魅せる演出あり)

またグラフィックの変更に伴い、音楽も当然のように全曲アレンジ。これも『ロックマンX8』を髣髴とさせる、メタルテイストに改められている。そして、効果音も『ロックマンX8』で使われていたものを流用。しかし、ボスにダメージを与えた際の効果音はオリジナル『ロックマンX』のものにしているなど、守るべきところはきちんと守られている

◆ステージ構成の変更
基本的な作りは一緒だが、パワーアップパーツの配置がオリジナルとは全く違うものに改められている。その為、オリジナルと同じ攻略法が通用しない。(サブタンク、ライフアップのアイテムの配置位置は変更されてない)更に最後のシグマステージに至っては、4ステージ全てが新しい地形に置き換えられている上、一部のボス戦の内容が変更されている。

◆ストーリー性の強化と内容の変更
オリジナルでは一部にしかなかった会話シーンが増強。
『ロックマンX8』のように8ボス戦前等に追加されている。
また、ストーリーの設定も大きく変更されており、宿敵のシグマが反乱を起こした動機、VAVAのエックスに対する態度やその性格周りなどがオリジナルとは全く異なるものになっている。ケイン博士、女性オペレーターなど、オリジナルでは名前だけ、存在すらしなかったキャラクターも登場する。


それらに加え、以下二つの新要素も導入されている。


◆新要素その1:スペシャルOVA『The Day Of Σ』
シグマのハンター時代と、反乱を起こすまでの過程を描いた、約24分間のスペシャルアニメ。ゲームを一度、クリアするとオプションで閲覧できるようになる。アニメーション製作は、実に『ロックマンX4』以来となるXEBEC(ジーベック)。アニメ版『ロックマンエグゼ』シリーズのスタッフが手掛けている。(シナリオだけはカプコンのスタッフが担当)
更に、このアニメを鑑賞した後に本編をプレイすると、ストーリーの台詞の一部が変更されるおまけも。一度で二度楽しめる、ニクい要素が取り付けられた内容となっている。

◆新要素その2:VAVAモード
ライバルキャラ、VAVAが主人公のパラレルストーリーを描いたモード。
ステージはエックスの本編と同じだが、敵の配置が変更されているなど、全く別物と言っても良い変更が成されている。
また、攻撃アクション周りも、三種の兵装を使いこなすという、特殊なものになっているほか、各ステージ開始前に兵装の変更が行えるオプションがあるなど、ゲームシステム的にもエックスとは大幅に異なる要素を導入。
これまでのシリーズに無い、戦略性に富んだ攻略が楽しめる内容に仕上げられている。


他にも、ボスキャラクターのデザインの一部変更、ボイスの導入、セーブ制の導入、難易度選択機能の追加など、変更された箇所は山ほどある。
全体として、根っ子の部分はオリジナルの『ロックマンX』を尊重しているが、それを取り巻く周りのものが別物になっているという感じ。 もはやリメイクと言うよりは、『ロックマンX』を現代向けに改めた新作と言っても、何らおかしくない内容に仕上げられている。それ故に、単に『ロックマンX』を今風に戻しただけでない、という所に、主にオリジナルに強い思い入れを持つユーザーは、賛否が分かれるかもしれない。

しかし、今作が行ってるリメイクは、決して改悪ではない。確かにストーリーなど、色々変えられた所は多いが、オリジナルの『ロックマンX』が持っていた絶妙なゲームバランス、快適な操作性と言ったものはそのまま。それをきちんと残した上で、今の時代を意識した要素の導入と改善、オリジナル経験者と未経験者の双方を意識したサービスを行うという、リメイク作品としては、まさに理想的と言える姿勢を貫いた作り込みが徹底されている。
特に、その姿勢とこだわりが顕著に現れているのが、一部に変更が加えられたステージ構成と、新要素『VAVAモード』。
前者はパーツの配置位置、完全新作の最終ステージと、見方を変えればオリジナルを踏みにじるかのような変更となっているが、それでもオリジナルが徹底した、的確且つバランスの取れた仕掛け配置の姿勢は貫かれており、変に意地悪染みた様になってないのが素晴らしい。パーツの配置位置にしても、変更されたとは言っても、普通にプレイしていれば直に目が付くような所にしてあるし、完全新作の最終ステージしても一部、唐突なトラップ(ステージ2の所がやや陰湿)があったりは するが、限度は考えられており、上級者しか攻略は不可能だ、みたいな傲慢さも皆無。ある程度、プレイヤーを撹乱させるが、それでもオリジナルのバランスの良さは残すその徹底振りは、まさに『ロックマンX』というゲームが持つ魅力を守り通すという姿勢を取ったからこそできた業。流石としか、他に言い様が無い。
また、最終ステージに至っては、オリジナルの欠点…後半以降から尻つぼみになっていく、が新たに改められた事で改善され、よりの深みのあるステージ攻略が楽しめるようになったのも、特筆に値する。新鮮味を出すだけでなく、オリジナルの欠点まで直すそのこだわりは感服の一言。何処まで、『ロックマンX』を理解しているんだと、オリジナル経験者なら、思わず唸ってしまうだろう。
そして後者『VAVAモード』も、既に慣れたステージとシチュエーションで、全く別のアクションゲームを遊ばせるという、大胆なゲームデザインが秀逸。三種の兵装を使いこなす、癖のある攻撃アクションも使いこなせるようになっていく度に面白さが増していく、カプコンらしいスキル上達の快感を取り入れた調整にされているのがニクい。直感的に操作できるエックスとは違うその癖のある操作感は、シリーズの新たな方向性を確立したと言っても過言ではない。
また、ロックマンXシリーズとしても、今まで通りに正義側のシナリオ(X4で例えるならゼロ編など)にせず、悪役側のシナリオという、それまでにない画期的な題材を取り入れたのも新鮮だ。シリーズファンを裏切りつつ、過去に無い衝撃を与えるそのサービス精神は流石、終盤で過去に無いどんでん返しを取り入れた『ロックマンX8』を手掛けたスタッフが作っているだけにある。純粋に一つのゲームモードとしても、本編のエックス編とのセットで一定のボリューム感を出し、今の時代を考慮した深みを演出しているのも見逃せないところ。
大きく変える上で、大事なところは徹底的に守る。そのような変更を行おうとするリメイク作品というのは、何かと変更をし過ぎ、オリジナルの持ち味が殺され、全く別のものに破綻してしまう事がありがちではある。
しかし、今作は大きな変更を行いながらも、オリジナルの持ち味はそのまま。更に新要素もオリジナルの魅力を損ねることなく、きちんと機能していると、その存在感を発揮していると、まとめ方も上手い。それらの事も含め、今作はまさに大規模な変更を行ったリメイク作品の中では、数少ない成功例、と言っても決しておかしく無いだろう。ここまで、経験者・未経験者の双方が新鮮な気分で遊べるリメイクと言うのも正直、凄く珍しい。

上記二箇所以外にも、元の持ち味を損ねず、新鮮な味わいを演出している要素は多い。クリア後に鑑賞できるOVA『The Day Of Σ』、アレンジが加えられたシナリオなどと。
特にOVA『The Day Of Σ』は、オリジナルとは設定が変わっているとは言え、純粋に「ロックマンXのアニメが見れる!」というだけでも、かなり魅力的だ。オリジナルのイメージを壊した黒い過去を持つ、アニメ版『ロックマンエグゼ』のスタッフが作っているのが、ファンにはマイナス材料として映るかもしれないが、そこもカプコンがきちんと監修した上での内容に仕上げられているので、特に心配する必要無し。アニメ化を望んでたファンなら本当、感涙モノな仕上がりになっているので、これだけでも今作を遊ぶ価値は十分にあると言えるだろう。
あと、今を意識して、全ての登場キャラクター達にボイスが付いた事も、オリジナル経験者には嬉しいサービス。声優陣もエックス役には『ロックマンX8』、そして『ロックマンX コマンドミッション』で素晴らしく熱い演技を披露した櫻井孝宏、ゼロとシグマは『ロックマンX4』以降からの古株、置鮎龍太郎、麦人と、豪華な面々を起用。
更にシリーズファンにとって見逃せないのが、VAVA。『ロックマンX8』ではシグマ役の麦人が演じていたが、今回は新たに下崎鉱史が彼を担当。X8の狂った演技とは異なる、「これぞまさにダークヒーロー」なその演技は、X8のVAVAの演技にショックを覚えた方もビックリするほどの素晴らしさ。是非、気になる方はチェックして頂きたいところだ。

他のアレンジされたグラフィックに音楽も、及第点の仕上がり。操作性、バランスも元の持ち味を尊重した手触りの良さ、適切さを演出していて、綺麗にまとめられている。
ハード設計の都合でダッシュボタン(○ボタン)が押し難くなった(※オプションにて、ボタン変更は可能)、ボイスに抵抗のあるプレイヤー向けのOFFオプションが無い、一部バランスが変更されて弱体化したボスがいる、ボスの爆発演出がオリジナルより迫力が落ちたなどは、少し残念だが、完成度の高さは鉄板。
未経験者だけでなく、オリジナル経験者も新鮮な体験ができる要素とサービスの数々、そして守り抜かれた『ロックマンX』の味わいと、全てが高いレベルで仕上げられた今作、『イレギュラーハンターX』。ロックマンファンは勿論のこと、アクションゲームを愛する全てのユーザーが体験すべき、PSP屈指の傑作アクションゲームだ。超お薦め。
この再始動、止めちゃいけない!こいつも、面白い!
≫トップに戻る≪