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≫ゲームセンターCX 有野の挑戦状
■発売元 バンダイナムコゲームズ
■開発元 インディーズゼロ
■ジャンル ゲームinゲーム
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5040円(税込)<廉価版:2940円(税込)>
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■総説明書ページ数 25ページ
■推定クリア時間 5時間〜7時間(エンディング目的)、35〜45時間(完全攻略目的)
テレビ番組『ゲームセンターCX』の『有野の挑戦』で挑戦に失敗した時、有野課長は思った。

「もっとゲームが上手かったら…」

そんな有野の無念の想いは、ニンテンドーDSに宿り、デジタルな姿となって実体化した!
その名は、ゲーム魔王『アリーノー』!

そして彼は日本中のゲーマーに対し、挑戦状を叩き付ける。
このゲームは、有野から送られた君への挑戦状なのである!
▼Points Check
--- Good Point ---
◆「テレビゲームを遊ぶ」という遊びそのものをゲームにした、革新的なゲームデザイン
◆アクション、シューティング、更にはRPGと、多種多様で遊び応え十分の7種類以上のゲーム
◆往年の名作達をオマージュしつつも、しっかりオリジナルの要素も盛り込むなど、新作のレトロゲームとしての徹底した作り込みが成された各種ゲームのシステム
◆当時のゲーム少年らしい性格付けと台詞の数々でニヤリとさせられるサポートキャラクター『ありの少年』(ボイスも有野課長(有野晋哉氏)本人が担当している)
◆文面からデザインに至るまで、如何にもゲーム黄金期に出たものという雰囲気作りの素晴らしさと丁寧な作り込みが光る、攻略サポート要素でもある『ゲーム雑誌』
◆新作RPGの延期沙汰など、当時を知る人ならニヤリと来るストーリー上のイベントの数々
◆80年代風の如何にもな進化を遂げていく様が面白くて微笑ましい、続編系ゲームの数々(一部、最後の最後にとんでもないフルモデルチェンジを行うタイトルもある)
◆コテコテなポリゴンデザインと抜けっぷりで笑わせてくれる悪役(?)『ゲーム魔王アリーノー』。
◆短時間で遊べる手軽さとツボを抑えたネタの数々が光る、各種ゲームの挑戦状ラインナップ
◆エンディングまでは短めながら、極める度に味が増す奥深さに富んだ全体のボリューム
◆「テレビゲームを遊ぶ」というコンセプトを具現化させた画面構成&インターフェースデザイン
◆レトロゲーム特有の直感的に遊べる触り心地とシンプルなボタン配置が光る、秀逸な操作性
◆優し過ぎず難し過ぎず、そして時に大いに唸らせる救済処置も凝らされた絶妙なゲームバランス
◆鮮やかな色使い等を始め、随所で炸裂するドット絵の芸術が光るグラフィック
◆レトロゲーム特有の印象深い旋律で構成された、如何にもな音楽

--- Bad Point ---
◆消すオプションがない為、時にウザく感じる事もある『ありの少年』のボイス
◆ボタン操作非対応のゲームリセット(タッチ操作でしか実行できない)
◆やや偏りの激しいゲームラインナップ(特に『ハグルマン』関連は少々、多過ぎる感が否めない)
◆ジャンルごとの得意、不得意さが出易い面も持つゲームバランス(特に『ラリーキング』は見下ろし型のレースゲーに慣れてない人だと苦戦し易い)
◆それなりにやり込み要素はあれど、やや物足りなさも否めないエンディングまでのボリューム
◆ファミコン路線に限られた収録ゲームの作風(コンセプトからして致し方が無い所もある)
▼Review ≪Last Update : 1/12/2014≫
あれは教授では無い!魔王だ!

しかも、少し抜けてます。


有野課長こと、よゐこの有野晋哉氏がファミリーコンピュータを始めとするレトロゲームの攻略に挑む個性的な内容で根強い人気を誇る、フジテレビCS放送、フジテレビ721(現:フジテレビTWO)で放送中のゲームバラエティ番組『ゲームセンターCX』を題材としたゲーム。開発は『すってはっくん』、『千年家族』などで知られるインディーズゼロが担当。

ファミコン黄金時代を錯覚させる懐かしい雰囲気と丁寧な作りが光る、意外な傑作だ。

ゲーム内容はオムニバス形式のバラエティゲーム。アクション、シューティング、レースと言った全5種類以上の異なるゲームをプレイし、『魔王アリーノー』から課せられる『挑戦』を攻略していくというものである。
本編は『ありの少年』と呼ばれるキャラクターの自宅にある居間を中心に展開。基本的には一本道のシナリオに沿う形で、対象となるゲームに課せられる『挑戦』の攻略に挑む。シナリオは年単位で区切られており、各年代で課せられる挑戦全てを攻略し終えるとシナリオクリア。次の年代へと進む。そしてシナリオが進むと、挑戦対象のゲームも変化。最初はシューティングゲームだったのが、次の年代ではアクションゲームになったりと、進む度に違ったゲームがプレイヤーの前に立ちはばかる。例によって、挑戦も各ゲームに合わせたものに変化。また、挑戦の内容も最初こそ目標スコア達成など、単純なものが中心だが、ある程度本編が進むと、普通にプレイしては到底達成できない反則紛いなものまで登場するようになる。その手の挑戦を攻略する為、ありの少年と相談してヒントを探ったり、時には居間の本棚にある『ゲーム雑誌』を読んで情報を集めたりなど、ゲームをプレイする以外の事も求められてきたりする。
基本的には挑戦対象となるゲームをプレイして達成を目指すだけと、流れ自体は単純。しかし、その単純さとは裏腹にその起伏は激しい。更に相談と情報収集というアドベンチャーゲーム的な要素が、単にゲームを遊べば良い訳ではないという奥行きと挑戦を仲間(友達)と協力して攻略する難しさ、楽しさを演出している。まさに「テレビゲームを遊ぶ」という事をそのままゲームにしてしまった感じ。如何にも『ゲームセンターCX』を原作にしているだけにある、らしさと独自色に富んだ作りになっている。なお、本編の舞台となる『ありの少年』の居間は、メニューセレクトの体裁となっており、中を移動したり、探索したりすると言った要素は皆無。基本的には項目を選ぶ形で挑戦対象のゲームの選択、相談(雑談)、情報収集などを行っていく仕組みとなっている。そして、挑戦の舞台となるゲームは先も述べたようにアクション、シューティング、レースと言った5種類以上を収録。各ゲームは1980年代のファミコンゲームを模した作りとなっており、全てが完全新作であるというのが最大の特徴。エンディングが用意されていたり、コマンド入力による裏技があったりと、単品でも十分に遊べるゲームに仕上げられている。
そんな今作に収録されているゲームの一部は以下の通り。

■コズミックゲート
最新鋭戦闘機『インフィニティー』を捜査し、迫り来る『マス・インセクター』達を倒していくシューティングゲーム。ナムコの『ギャラガ』のオマージュ作品で、システムや画面構成はそれを強く意識したものになっている。基本的にギャラガと同様、全ての敵を撃墜すればステージクリアとなる。ただ、3ステージごとに『アステロイドゾーン』と呼ばれる無数の隕石が飛び交うステージが挿入されると言った特徴がある。

■からくり忍者ハグルマン
主人公のハグルマンを捜査して、ほおずき姫を救い出すアクションゲーム。手裏剣、ジャンプによる踏み付け攻撃などで全ての敵を倒し、最後に出てくるボスを倒せばステージクリアとなる。各ステージには『カラクリ扉』と呼ばれる扉が配置されており、これに入ると身を隠して敵を回避できるという、特殊なアクションを特徴としている。
ゲーム的にはジャレコの『忍者じゃじゃ丸くん』のオマージュ。だが、踏み付け攻撃など、少しだけ『スーパーマリオブラザーズ』を髣髴とさせる要素が仕込まれている。

■ラリーキング
ラリーカーを操作し、ライバル車を避けながらゴールへと走る、トップビュー視点のレースゲーム。各コースを2周すればクリア。但し、7位以内に入れなかったり、ラリーカーのダメージが蓄積するとゲームオーバーになるなど、アーケードゲーム的な要素が豊富に盛り込まれているのが特徴。ゲーム的にはナムコの『ファミリーサーキット』のオマージュ色が強い。しかし、ラリーカーを操縦するキャラクターが『マーサー・アリオ』という、何処かで聞いた覚えのあるヒゲオヤジだったりする。元ネタは語るまでもないので省略。

これら以外にも数種類のゲームが登場。その中には上記で紹介したタイトルの続編のほか、まさかのロールプレイングゲームまで用意されていたりする。特に続編は、進化具合も1980年代のファミコンゲームを強く意識しているのがユニーク。高い難易度を売りとするスペシャリスト仕様、システムを完全一新した別物など、当時を体験してきた世代なら思わずニヤリとしてしまうこと、間違いなしだ。
更にこれらのゲームをじっくりプレイしたい方に向けたフリーモードも用意。先に挑戦を全て攻略しなければならない条件付きだが、一つのゲームを徹底的に際みたいという欲求にも応える懐の広さをも今作は持ち合わせている。他にも、操作説明からストーリーの詳細までもが記された取扱説明書も個別に用意されているほか、そのデザインもまた1980年代を強く意識したものになっているなど、徹底したこだわりが炸裂しているのも見逃せないところである。
『ゲームセンターCX』の名物コーナーを追体験するかのような本編の展開と独自色溢れるゲームデザイン、個性的なファミコン風ゲーム達。一見、単に原作の名を使っているだけの作品に見える所もあるが、その中身は間違いなく『ゲームセンターCX』のゲームと断言できる内容。実際の有野課長と同様の気分で、色んな手を使ってゲーム攻略に挑むという原作の魅力とそのコンセプトに忠実過ぎる作り込みが成されている。まさに原作の魅力を余す事無く注ぎ込んだとも言える一品。題名からサブタイトルに至るまで、確かな説得力を持った、独自色と魅力を持った作品に仕上げられている。

そんな今作の魅力は、1980年代のファミコン黄金時代の素晴らしき日々(?)を忠実に再現した、オールドゲーマーのノスタルジーを喚起する演出の数々だ。これがまた、当時の世代のみならず、まだインターネットが台頭して来ていない頃にゲームと共に育って来た世代をも懐かしい気分に浸らせてくれる、「分かり過ぎた」ものになっていて素晴らしい!
例えば、挑戦攻略の情報を集める際に閲覧する『雑誌』では、個性的な編集者がお薦めのゲームを熱く語っていたり、また今後発売される新作は凄いと期待を煽るコメントを載せていたりなど、直撃世代なら「あったな〜!」と思わず当時を振り返ってしまうほどに懐かしい描写が満載のものに仕上げられている。しかも年が進むと、今度は話題作が延期した残念な情報が記されたり、編集者が交代する事になってお別れのコメントが記されるというこれまた、当時を知る世代なら苦笑いしてしまうような展開まである徹底振り。まだ、ゲームというものが未知の文化であり、ユーザーを始め、多くの人達がそれに熱狂していた1980年代という時代の変移をもしっかりと再現したものになっているのだ。一応、本編では情報収集の素材という扱いではあるのだが、それで済まない程度に雑誌としての再現度は高め。それでいて、懐かしい気分にも浸らせてくれるという、実に驚くべきものに仕上げられている。架空のゲーム雑誌でそんな事があるかと、疑問に感じる方ほど是非、ご覧になってみていただきたい。きっと、昔は良かったな…的な虚しさに襲われる事だろう。
雑誌だけでなく、プレイヤーの頼もしい相棒である『ありの少年』もまた、オールドゲーマーのノスタルジーを喚起させてくれる存在。ゲームをプレイしている際、声を挙げて場を盛り上げてくれたり、雑談の中では新作ゲームの話題のほか、親に対する愚痴を吐いたりなど、如何にも当時のゲーム少年だなと思わせる、とても可愛らしいキャラクターになっている。その一言一句に当時の友人をオーバーラップし、昔の良き思い出が蘇ってしまう事もしばしば。純粋にキャラクターとしても現代の世代でも愛着が持てる性格付けが成されており、単にオールドゲーマーを狙っている訳ではない辺りも見事。更にボイスは実際の有野課長こと、よゐこの有野晋哉氏が担当しているのも大きな見所だ。こう言った部分でも「懐かしさ」を刺激する作り込みを徹底。「ゲームを遊ぶ」とはどういう所が面白いのか、それを突き詰めたこれらのこだわりの数々には、如何に今作の制作スタッフがこの遊びについて研究したのかをうかがい知る事ができる。
また、本編のメインたるレトロゲームの出来も秀逸。見た目、進化の流れなどで懐かしさを演出しつつ、ゲームとしてのシンプルな面白さ、遊び易さにもこだわった内容に仕上げられているのが素晴らしい。レトロゲームという事で、少し難易度面で理不尽なものを連想するかもしれないが、そういうのもほぼ皆無。難易度設定から操作性に至るまで、徹底してストレスを感じさせない配慮と作り込みが成されている。「昔のゲーム=不親切で遊び難い」という穿った考えをせず、純粋な面白さと手強さを追求したその作りには、当時の良き思い出を絶対に汚させまいとする制作側の慎重な配慮を窺わせる次第。懐かしさもさることながら、ゲームとしての楽しさを最優先にして作る辺りに、プレイヤーを喜ばせる事を第一とする制作スタッフの姿勢を実感させられる。また、そういう遊び易さを第一とした作り故、各ゲームは単品としても十分に遊べる程度に密度も濃い。極める面白さも申し分ないので、やり込み派のゲーマーも遊ぶ価値、大いにアリだ。そんな具合に面白さをも伝える辺りにもまた、今作の完成度の高さと原作に対する理解の深さを実感させられる。そういう部分がしっかりしているのもあり、番組を全く知らない方でも遊べる懐の広さをも実現しているのだからさすがとしか言い様が無い。
ゲームを遊ぶ事を楽しむ、この革新的なゲーム性と手応えは、まさに『ゲームセンターCX』という題材だからこそ実現し得たもの。ここまで原作の題材を追求し、尚且つ番組を見た事が無い方でも楽しめてしまう原作付きのゲームというのも非常に珍しいケースだ。それほどまでに今作の『ゲームセンターCX』とレトロゲームに対する理解度、ゲームとしての作り込みはほぼ完璧に近い域。懐かしさと新しさ、それを同時に体感できる作品に仕上げられているのである。

その他、先も触れたが操作性やゲームバランスも大変良好。前者は全てのゲームで挙動が不自然で動かしていて気持ち悪いと言ったものは皆無で、動かす気持ちよさにこだわったものになっているほか、難易度にしても易し過ぎず難し過ぎずの絶妙な調整となっている。メインの『挑戦』にしても、変に難しい内容のものはなく、ある程度のテクニックと入念な情報収集などを心掛ければ自然と攻略可能な難易度で、それほどゲームが得意でないという方でも気持ちよく遊べる作りになっている。その人を選ばないバランスは、任天堂のゲームを錯覚させるほど。元々、開発のインディーズゼロはこれまで、任天堂とタッグを組んで幾つかゲームを作った事があるだけに、そのノウハウが活きた仕上がりになっている。
全体的なボリュームもエンディングまではそれほど長くないものの、各ゲームの完全攻略を目指すと言ったやり込みや寄り道要素が充実しているので、結構長く遊べる。また、本編で課せられる挑戦も種類が多彩なほか、そのバリエーションも多彩でプレイヤーを飽きさせない作り込みが成されているのが見事だ。
グラフィックと音楽の質も総じて高い。特にグラフィックに関してはまさにドット絵の芸術とも言える職人芸が炸裂しており、レトロゲーム全般でその凄味を堪能することができる。それでいて、魔王アリーノーはコテコテのポリゴンであるなど、変なセンスも炸裂。こういう所でも楽しさを第一とした凝った作り込みが成されている。

細かな演出に関しても、挑戦クリア時には成功を祝う仰々しいエフェクトが挟まれたりなど、結構凝った作りになっている。また、ありの少年は台詞の面白さばかりでなく、動きも非常に可愛らしい。主人公とはしゃいでいる姿など、人によっては萌えかねないほどだ。他にもインターフェースも快適さと使い易さにこだわった作りになっているなど、メインのゲーム部分以外でもストレスを感じさせない為の配慮が徹底されている。
それなりにやり込みがあるとは言え、エンディングまではワリと短めであっさりしていたり、ジャンルごとにプレイヤーの好き嫌いが出易い、また『ラリーキング』は操作面で慣れが必要とされるなど、欠点も幾つかあるが、『ゲームセンターCX』の魅力を余す事無く再現したゲームデザインと独自のゲーム性、1980年代の雰囲気作りなど、その完成度は非常に高く、他に類を見ないゲームに仕上げられている。『ゲームセンターCX』を知っている・知らない方でも楽しめる、底知れぬ魅力が沢山詰まった今作。
番組のファンだけでなく、ニンテンドーDSをお持ちの方なら是非、プレイして頂きたい意外過ぎる傑作だ。この『ゲームを遊ぶ』という独自のゲーム性と懐かしい空気感は他では味わえないものがある。機会があったら是非、お試しあれ。
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