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≫がんばれゴエモン東海道中 大江戸天狗り返しの巻
■発売元 KONAMI
■ジャンル アクションアドベンチャー
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5229円(税込)<Best版:2000円(税込)>
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1〜16人
■セーブデータ数 3つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DSダウンロードプレイ対応
■総説明書ページ数 32ページ(縦読み式)
■推定クリア時間 5時間〜6時間(エンディング目的)、15〜20時間(完全攻略目的)
ひょんな事から犯罪者に間違われ、役人に追われる事になったゴエモンとエビス丸。
真犯人を捕まえる為、西へ西へとゴエモン達は東海道を下って行く。

さてはて、ゴエモン達の旅の運命やいかに。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ステージクリア型のシステムとアクションアドベンチャーのシステムを絡めた、ゴエモンらしい一本道構成のゲーム展開
◆何故かプレイヤーキャラが離れてるのに動かせる、ゴエモンらしい荒唐無稽さが炸裂したマップ上の仕掛け群
◆陶芸、習字、福笑いなど、タッチペン操作を活かした工夫が光る各種ミニゲーム
◆統一感に欠ける所もあるが、アクション部分は適度にまとめられたゲームバランス
◆『鉄人28号』を髣髴させる、リモコン戦闘が秀逸な新ゴエモン・インパクト戦
◆数は少ないが、相変わらず見た目のインパクトが強烈なプレイヤーアクション全般
◆長過ぎず短過ぎずの丁度良い量にまとめられた全体ボリューム
◆どんな場面でも可能の自由度の高さが秀逸な、携帯ゲーム機に適したセーブシステム
◆これまでのゴエモンとやや趣の異なる、シリアス感が強めのシナリオ
◆日本のゲームらしい味わいと職人技が光る、墨絵仕立ての独特のグラフィック
◆シリーズ伝統の良質な音楽(名曲盛り沢山)
◆サウンドテスト、ボスアタック、更にはミニゲーム集まで充実したおまけ要素
◆軽快な江戸節による語りが気持ち良い、桂歌丸師匠ご本人による講談デモ
◆無駄に豪華な作りのおまけゲーム『クォース』(更にゲームボーイアドバンスソフト『がんばれゴエモン1・2 ゆき姫とマッギネス』と連動すれば、『スペースマンボウ』まで遊べる!)

--- Bad Point ---
◆ボタンとペンを併用する煩わしい操作性(アクションの感触が少し重いのも×)
◆判定調整の甘さで、無駄に難易度を引き上げてしまっている各種ミニゲーム(特に陶芸が酷い)
◆長い上に面倒臭く、難しいと苦痛極まりない『エビス丸転がし』のイベント
◆曖昧な当たり判定(攻撃やダメージの判定など)
◆基本的に一回しかプレイできない城ステージ(何回もプレイできると良かった)
◆ヒントすらない、第四話のフナムシ除去方法(何故に入れなかった?)
◆シリアス色が強い為、ややゴエモンらしくないとも言えるシナリオ
▼Review ≪Last Update : 11/15/2009≫
新世代、黒歴史認定。

さあ、積年の怒りをぶちかまそう(違)。


2001年の『ゴエモン 新世代襲名!(ゴエモン ニューエイジ始動!)』の(色んな意味での)悪夢からかれこれ4年。山内円氏、蛭子悦延氏を始めとする元祖スタッフにより、完全なる再生を遂げた、正統派がんばれゴエモンシリーズの最新作。

無理矢理なDSらしさが尾を引くが、ゴエモンらしさは健在の良作だ。

内容は、スーパーファミコンの『がんばれゴエモン3』やNINTENDO64の『ネオ桃山幕府の踊り』を彷彿とさせる、RPG要素を少し盛り込んだアクションアドベンチャー。作り自体は『がんばれゴエモン3』に最も近く、4人のキャラクターを使い分けるシステム、横スクロールアクションで展開するダンジョンステージなど、それを髣髴とさせる要素が採用されている。
但しシナリオ単位(話単位)でゲームが進行、実質一本道の構成など、3と比較すると自由度は低め。全体的にはステージクリア型アクションのカラーが強い作りとなっている。スタンダードなアクションのゴエモン、アクションアドベンチャーのゴエモンを混ぜた内容、と言ったところだ。また、プラットホームをDSに移したという事で、その特性を活かした新要素も導入。画面を直接タッチする事で発動するマップの仕掛け、タッチ操作を併用して戦うボス戦、ミニゲームなど、如何にもDSらしいネタの数々が豊富に用意されている。
特に注目なのは、スーパーファミコンの『がんばれゴエモン2』以降からお馴染みになった巨大ロボット、ゴエモン・インパクトによるボス戦。これもDS向けのアレンジが加えられ、リモコン操縦方式なる、別物に様変わりしている。
戦闘スタイルも大幅に一新され、プレイヤー(ゴエモンなど)を十字キーで操作、画面奥で戦うインパクトを下画面に表示されたコマンドをタッチして操作という、極めて斬新なものに。従来のボタン操作とは異なる戦略性、そして戦闘の臨場感に満ちた、実にユニークなものに仕上げられている。プレイヤーキャラを動かし、遠隔操作でインパクトを動かすその構図は、さながら『鉄人28号』の正太郎と28号の関係そのもの。インパクトの挙動も何処となく、28号っぽい「重み」があり、それらしさを大いに煽る。かつて、鉄人を自ら操作したい、と夢に思ったオールドユーザーならば、このインパクト戦には思わずニヤリとしてしまうこと、間違いなしだ。ある意味、高年齢層にはたまらない要素と言えるだろう。
勿論、オールドユーザー受けを狙ってるだけではない。純粋に戦闘自体も面白く出来ており、インパクトとの距離感が左右されるバランスは、実際にロボットに乗り込んで戦うアクションゲームでは味わえないスリルに満ちている。戦闘シチュエーションも多彩で、プレイヤー側に雑魚敵が襲い掛かってくるなど、この仕組みならではのアイディアが随所に活かされている。惜しむらくは戦闘が少ない事だが、その分、一つ一つの密度が濃い目に作られているので、物足りなさはそんなに感じさせられないだろう。
シリーズお馴染みの要素をDS向けに作り直すと、どうなるか…という課題を、こうも見事に且つ、楽しいものに仕上げた手腕には全く持って脱帽。普通にこれを体験するだけでも、今作をプレイする価値は十分にあると言っても良いだろう。それほどまでに、魅力的なものになっている。

他のDS絡みのネタも秀逸。マップ上の仕掛けを直接タッチし、仕掛けを解除するネタとか、何でプレイヤーがその仕掛けから離れた場所にいるのに動かせるのか?…という、荒唐無稽っぷりが炸裂していて、地味に笑える。
タッチ操作を併用して戦うボス戦も、画面内のプレイヤーキャラと一緒に戦うという、変わった面白さに秀でていて楽しい。タッチ操作の使い方も面白く、ネタバレになるが、敵の目を回させて気絶させるボスは、よく考えたなと感心させられる。インパクト戦と比べたら、その面白さは正直、劣るものがあるが、こういう所にまできちんとDSらしい特性を織り込む徹底振りには、圧倒させられるものがある。
ただ、やはりというか、その特性を出したが為、操作性の面で煩わしさが生じてしまっているのは残念。ボタン操作と並行し、ペンでの操作もしなければならないので、動かす際にストレスを感じ易い。主にマップ上の仕掛けだが、敵の処理も含めて素早い判断が要される場面がちと多過ぎる。テンポを考慮してなのかもしれないが、只でさえ、タッチの仕掛けを動かしている時はプレイヤーの手が慌しい状態となっているので、敵やダメージ系トラップを少なくするとか、もう少しその辺の配慮を徹底して欲しかったところだ。ちょっと敵配置も含め、正統派アクションのゴエモンを踏襲し過ぎている感が否めない。いつになく、ゴエモンを始めとするキャラクターの操作感が重めで、思い通りに動かせない辺りも気になる。3Dグラフィック故なのかもしれないが、ここももう少し軽くできなかったのか、疑問が残る。
しかし、最も残念なのはタッチ判定の精度だ。ボタン系の仕掛けとか、その辺は快適さを保っているが、謎解き、ミニゲーム系全般は問題あり過ぎ。特に序盤に登場する『陶芸』、終盤で登場する『習字』と『福笑い』の三つは調整不足にも程がある。ほんの少し、長さとして数ミリ程度ズレただけでミスになるとか、プレイヤー側に要求するテクニックの敷居が高過ぎだ。正直、これなら針の穴に糸を通す方が楽だろ、と突っ込みたくなるほど。こんなにも極端な調整で通してしまったのが疑問でならない。中でも序盤の『陶芸』は致命的過ぎる。判定がシビア過ぎる故、人によってはなかなかクリアできず、詰んでしまう可能性すら作ってしまっている。まだ『習字』と『福笑い』は終盤なので配置的には問題ないが、こんなのをいきなり最初の方に置く自体、悪質過ぎる。修正の時間がなかったのか、これで問題無いと判断したからなのか、憶測の域を出ないが、こういう所は、もっとじっくり調整して欲しかったところである。いずれのネタ自体も、DSらしい特性が出ていて、悪くないだけに残念だ。
ただ、荒削りとは言え、DSのアクションゲームとして新たな可能性を提示させたのは大きな評価に値すると言っても良い。特にプレイヤーキャラと一緒に自分も攻略に介入するという手応えは新鮮。まさに、DSだからこそできた芸当である。習字や陶芸など、「確かにDSならこういう遊びもできる」と納得させられるネタがあるのも、なかなか面白い。先のインパクト戦ほど、作り込まれて無いのが勿体無くはあるが、一部だけにDSらしさを留めず、全編に渡ってDSのネタを仕込んだこのゲームデザインは、他のアクションゲームに無い、オリジナリティに秀でている。
無理矢理さもあるが、ちゃんとDSとしてのゲームを作ろうとしたその姿勢自体は、お見事と言うに相応しいだろう。いずれのネタにゴエモンらしい「おバカ」っぷりが出ているのも、さすがは元祖スタッフだけにあると言ったところである。

バランスも先のミニゲームがある都合上、極端にシビアだが、アクション面は優し過ぎず、難し過ぎずの丁度良さを保っている。ただ、先の調整不足な所も含め、全体的な統一感に欠けてしまってるのは残念である。また、序盤にあるエビス丸を転がすイベントの異常なシビアさも気になるところだ。
全体のボリュームは申し分無しと言っても良いだろう。長過ぎず、短過ぎずの丁度良い量に収まっている。アイテム収集要素もあったり、寄り道要素もそこそこあり。また、それを集めた際のおまけ特典が非常に豪華。サウンドテストやら、ボスアタック、ミニゲームフリープレイなど、その充実振りには高い満足感を得られるだろう。
グラフィックの質も高い。3Dポリゴンに墨絵のテクスチャを被せた独特なものとなっており、その細かい職人技には溜息が出る。しかもこのテクスチャの貼り付け、全部手作業でやったというのだから驚きだ。これほどまでに日本人らしい技に満ちた3Dグラフィックも、他に無いと言っても良いだろう。これは必見の価値がある。
そしてゴエモンと言ったら音楽だが、これも最高の完成度。過去のシリーズにも勝るとも劣らない、名曲オンパレードとなっている。一部、過去のシリーズの曲のアレンジもあるほか、その選曲がかなりニクく、長年シリーズに親しんできたファンならば感動してしまうこと、間違いなしだ。
更に音絡みでボイス演出もかなり秀逸。主に各シナリオ(各話)のオープニングにて展開される、『笑点』でお馴染みの桂歌丸師匠ご本人による講談は実に痛快!軽快な江戸節による語りは、ゴエモンファンならずとも要チェックだ。

その他、いつになくシリアスなテイスト漂うシナリオ、新世代ゴエモンを嫌うプレイヤーには爆笑必至なサービスなど、見所は多い。ゲームの雰囲気自体は元祖スタッフ製作なだけに、まさにゴエモンそのものだ。しかし、所々荒削りな作りとなってしまってるのが、ちょっと残念ではある。
しかし、DSの特性を最大限に活かしたゲームデザインなどの売りも多く、何故だか愛したくなる不思議な魅力がある。賛否あるかもしれないが、元祖ゴエモン好きにはまさに「待ってました」と言わんばかりの内容に仕上げられている今作。
アクションゲーム初心者にはお薦めできないが、ゴエモンファンやアクションゲーム好きなら是非、プレイしてみて欲しい良作だ。一時期闇に葬られた、懐かしいゴエモンがここにある。
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