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≫Battle Chef Brigade


■発売・開発元:Trinket Studios /
■ローカライズ・販売元:架け橋ゲームズ(※翻訳:小川 公貴) /
■ジャンル:料理パズルアクションRPG / ■CERO:A(全年齢対象) / ■定価:2,100円(税込)

◆公式サイト / ストアページ
≫Battle Chef Brigade(My Nintendo Store)
≫Battle Chef Brigade(Steam) ※PC版
≫Battle Chef Brigade Deluxe(PlayStation Store) ※PlayStation 4版

© 2017 Turner Broadcasting System, Inc. A Time Warner Company. All Rights Reserved.
▼Information
■プレイ人数:1人 / ■セーブデータ数:3つ / ■必要容量:1.7GB /
■プレイモード:TVモード、テーブルモード、携帯モード /
■推定クリア時間:15~18時間(エンディング目的)、30~35時間(完全攻略目的)
100年前、「ヴィクタシア王国」は魔物によって農場、動物たちが襲撃され、深刻な飢餓に陥った。
この事態を打破すべく、当時の国王ハインリッヒと料理長ロブションは国中の一流料理人たちを招集。
彼らを「シェフ兵」として活動させる旅団「バトルシェフブリゲード」を結成する。

この歴史上類を見ない旅団の活躍により、世界各地で魔物が狩られ、その食材を元にした多彩な料理が誕生。
それらは国中の家庭へと提供され、人々は飢餓から救われるに至ったのである。

その後も「バトルシェフブリゲード」は世界中で魔物を狩り、その食材を食卓へと届け、人々の命と胃袋を守り続けている。そして、王国では毎年、新人シェフ兵を発掘するための「考試大会」が開催されるようになった。

大会の開催から100年の節目を迎える年。
「風の村」に住む21歳の女性「ミナ・ハン」は、「バトルシェフブリゲード」に強い憧れを抱いていた。
そして彼女は自らの力を試すため、周囲の反対を押し切って大会の開催地へと足を運ぶ。



かくしてここに、新たなシェフ兵を目指す者たちによる物語が幕を開ける!
▼Pros cons Pick up
--- Good Point ---
◆アクション、3マッチパズル、RPGの3ジャンルの”いい所どり”で綺麗にまとまったゲームデザイン
◆食材の現地調達、その後の料理という慌ただしくもユニークな展開と共に描かれる料理バトル「考試大会」
◆連鎖を狙う以上にくっ付けることを最優先とした調理パートこと3マッチパズル
◆数多くの要素を持ち合わせたゲームデザインに配慮した、段階的な要素解禁を徹底した本編構成
◆日本のアニメへの強い影響が現れたキャラクターデザインと、明るく前向きな雰囲気に満ちた世界観
◆個性豊かで、好感の持てる性格付けが施された登場キャラクターたち(特に人間以外の種族が非常に魅力的)
◆それぞれのキャラクターたちの魅力、掛け合いの楽しさと雰囲気を的確につかんだ秀逸な翻訳テキスト
◆料理バトルに留まらず、ダンジョン探索にボス戦など、多彩な展開が満載の章ごとのイベント&ストーリー
◆15時間以上のメインストーリー、サブイベントにやり込み専用モードと盛りだくさんなボリューム
◆直感的に動かせることを第一に、コマンド入力も簡素に留めるといった配慮が光るアクション周りの操作
◆まさに「動かせるアニメ」を体現するかのごときグラフィックと滑らかなアニメーション
◆携帯モードでのプレイ時を踏まえたフォント設定など、気の利いた配慮がなされたオプション周り
◆所々に仕込まれたバラエティ番組『料理の鉄人』ネタ(なんとあの”パプリカかじり”まで用意!)

--- Bad Point ---
◆グラフィックとは裏腹に淡々としていて地味な演出(特にアクション周りは物足りなさが凄い)
◆演出の地味さを際立たせる音楽、効果音といった音響周りの弱さ(さすがに主張が弱すぎる)
◆中盤以降、敵モンスターの火力が異様に上昇するのを始め、不自然に跳ね上がる難易度
◆一部、活躍の場がまだ描けそうなのに早々と退場するキャラクターの存在
◆操作不能な主人公の仲間「キリン」(他の仲間は操作可能なだけに、あまりにもったいない)
◆若干、必然性を感じない一部の日本語翻訳(特にリザルト画面は英語表記でもよかった印象)
▼Game Overview
「ブリゲード万歳!」



◇アメリカ・イリノイ州シカゴに拠点を置くインディーゲームスタジオ「Trinket Studios」開発による、料理アクションパズルRPG。2017年にNintendo Switchのほか、PC(Steam)で発売。翌2018年に実施された大型アップデートで多くの要素が追加され、作品名も『Battle Chef Brigade Deluxe』に改められた。並行してPlayStation 4版も発売されている。
一流の料理人たちが「シェフ兵」として活動する旅団「バトルシェフブリゲード」に憧れる主人公「ミナ・ハン」を操作し、新人シェフ兵の発掘を目的にした「考試大会」に挑むというストーリー。本編は章単位で分けられたストーリーに沿って、前述の「考試大会」に代表される様々なイベントを攻略していく形で進行する。基本は横スクロール形式のアクションゲームで、武器やアイテムの購入、装備や調理器具の調達といったRPG要素をいくつか採り入れている。また、本編は拠点マップ「ブリゲードタウン」を軸に大会を始めとする各種イベントへの参加、アイテムなどの調達を図っていく構成となっている。

◇メインイベントの「考試大会」は、ライバルの料理人といかに見事な料理を作り上げられるかに挑むというもの。具体的には制限時間内にお題として提示された食材を元にした料理を作って、審査員席へと提供。必要な料理の提供完了、時間切れと同時に審査員の実食へと移り、その総合得点によって最終的な勝敗が決まる。身もふたもなく言えば1993年から1999年まで、フジテレビ系列で放送されていた料理バラエティ番組『料理の鉄人』のソレである。さらに言えば、同番組の「美食アカデミー」主宰を務めた俳優・鹿賀丈史氏を露骨にオマージュしたキャラクターが進行役として登場。



『Battle Chef Brigade Deluxe』以降には、件のキャラクターがパプリカをかじるパフォーマンスを披露するオープニングムービーが追加されている。ただし、残念ながら(?)「私の記憶が確かならば……」の決め台詞はない。

◇「考試大会」こと料理バトルの流れは割と複雑。順を追って解説すると、まずバトル開始時点で食材はキッチンにない。食材はキッチンから直接繋がったフィールドへと移動して、対象となるモンスター、植物を直接狩って手に入れなければならない。モンスターとの戦闘はアクションゲームで、装備した近接・遠距離武器を活用してモンスターを攻撃し、時には相手の反撃を避けて対処する。なお、モンスターは基本的にお題となる料理を作るのに必要な食材を落とす個体を狙いにいくのが基本戦術となる。

◇食材が手に入ったらキッチンへと戻って調理開始となる。この時、食材は「ジェム」と呼ばれる赤・青・緑の球体に変化。これを鍋の中へと複数投入し、対応するボタンを押すと同時に調理がスタートする。
調理は同じ色のジェムを3つ揃え、食材を強化させることによって実施されていくという、いわゆる「3マッチパズル」。カーソルを動かして4つのジェムを回転させ、同じ色のジェムを3つ並べていく形となる。並べるとそのままジェムが消滅することはなく、上位のジェムへと変化。これに同じく上位のジェムを3つ並べていけばさらなる強化が図られ、料理の完成度を示す「味」の数値が上昇していく。そして、ベストな値になったら出来上がった料理を審査員席へと持っていく。なお、制限時間はあれど、出す料理の数が限定されていれば、その時点で実食による審査へと移る仕組みになっている。

◇このようにアクションゲーム、パズルゲーム(3マッチパズル)、料理ゲームという3種のジャンルが癒合した、前例のないゲームシステムを最大の特徴としている。また、本編は終始「考試大会」の料理バトルが繰り返される訳ではない。時によってはダンジョンを探索したり、強敵と戦闘したり、操作するキャラクターが切り替わって別視点のストーリーが展開されるといったことにもなる。そうしたひとつのテーマに終始しない、非常に入り組んだ構成もまた本作の見所にして特徴となっている。
▼Review ≪Latest Update :4/30/2023 | First Publication Date:4/30/2023≫
誇張抜きに前例のないゲームシステムが異彩を放ちまくる意欲作。
アニメ風の世界観と魅力的なキャラクターたちが織り成す、明るく前向きなストーリーも必見。
正直、システム周りが入り組んでいるにくわえ、3種のゲームジャンルが融合しているとの特徴に尻込みするかもしれない。第一印象からして複雑そうと思われても致し方がない。
だが、実際は意外にもそんなことはなく、直感的に遊べる作りにまとめられている。

特に秀逸なのが、それぞれのジャンルの一番面白い部分だけを抽出した、”いい所どり”を徹底していること。RPGを例に出せば、経験値を稼いでのレベルアップや装備品の強化といった、本作のシステムの土台に乗せれば面倒くさいものになりかねない要素は省かれている。料理バトルのキモに当たるパズルに視点を移せば、落ちモノ系のタイトルでは定番の連鎖もない。基本的に同じ色同士をくっ付けていくことに徹するだけ。連鎖を決められれば、より早く完成度の高い料理を作り上げることができるみたいなテクニックを問う要素はない。ひたすらにジェムを揃えては強化させていくことに徹するシンプルな作りだ。 もちろん、食材を手に入れるに当たって展開されるアクションもまた然りである。コマンド技があったりするものの、いずれも簡単なボタンとコントロールスティックの組み合わせで繰り出せる。敵となるモンスターも一部の強力な個体を除けば、近接攻撃を当てることに徹すれば簡単に倒せてしまう。そして、プレイヤーが受けるダメージも減ったらそのままという訳ではなく、自動で回復する仕様。さらに敵に返り討ちにされ、力尽きてしまってもそのままゲームオーバーにはならず、試合時間を消費してやり直しとなる良心的な設計となっている。とは言え、時間が減ってしまうので、料理を作る過程において甚大な影響が生じるが。

こうした工夫を凝らしつつ設計されているので、特徴とは裏腹に直感的に遊べると同時に、心理的な負担もなく、気持ちよく遊べるものに仕上げられている。また、様々な要素を持ち合わせたゲームだけに、序盤の導入も気を遣ったものにされている。具体的には最初からそれぞれの要素を全解禁せず、チュートリアルを挟みつつ段階的に解禁していく手法を採っている。なので、ゲームを始めるに当たってマニュアルを読み込む必要はほとんどない。遊びながら個々の特徴を掴んでいけるようになっている。中盤以降になると「毒」に代表される特殊な要素も追加されるが、タイミング的にはゲームの基本を完全に把握した段階なので、理解が追い付かなくなる心配は一切ない。むしろ、タイミングがタイミングなので、すぐに理解できて、本番で気を付けるようになるほど。ちゃんと多彩な要素を採用したゲームなりの弱点を考えた上でのゲームデザインが徹底されているのだ。 なので、「なんか複雑そう」との印象を抱いた人ほど、騙されたと思ってプレイしてみて欲しい。決して、ここまで書いてきたことが誇張ではないこと、そしてこんな作りをしている割に直感的に遊べることに驚くこと請け合いである。

システムと並行してストーリー、世界観も非常に魅力的なものに仕上がっている。見た目からして分かりやすいが、キャラクターデザインを始め、日本のアニメへの影響が色濃く現れている。また、主人公のミナが自らの実力を試すため、親の反対を押し切って田舎の村から大会の行われる都へと向かうという導入部分も、この種の題材を扱ったストーリーの定番を押さえている。そして何より、登場キャラクターがミナを始め、非常に個性豊か。世界観自体はファンタジーで、オークにエルフ、ドワーフ、さらにはサイクロプス、ゴーストといった種族まで登場するのだが、いずれも人間と敵対する関係ではなく、友好的に接してくれるのに加えて印象に残る性格・設定付けが図られている。特にその中でも強烈な印象を残すであろうキャラクターが資料術師でアンデッドの「ジギー」。ひょうひょうとした性格、彼の相棒として行動を共にするスライムオバケの「ジェリー」との掛け合いには、人によっては強烈にぶっ刺さること請け合い。ミナと共にシェフ兵を目指す同士であり、オークの「スラッシュ」も必見のキャラクター。仲間思いで、料理と家族を愛する熱血漢な姿には心打たれるかもしれない。ちなみに家族と奥さんもあるイベントで登場するのだが、その奥さんがワリと美人なところにも注目である(力説)。他にだいぶユニークなキャラクターで、装備品やアイテムを販売してくれる店を切り盛りするサイクロプスがいる。これがまた色んな意味でニッチな人の心を掴むデザインと性格になっているので、必見だ。多分、このゲーム以外じゃ絶対に会えないサイクロプスかもしれない。

ストーリー本編も最初はライバル、志を共にする仲間たちの交流と衝突を描きつつ、中盤以降には国を揺るがす事件が起き、予想だにしない方向に発展していくなど、変化の激しい構成になっていて飽きさせない。日本語翻訳もバッチリ。台詞回しもそれぞれのキャラクターの個性を掴んだものになっていたりと、プロの技を実感させられること請け合いだ。

キャラクターにフォーカスしたが、グラフィック自体の完成度も盤石。「動かせるアニメ」を意識した滑らかなアニメーション、派手なエフェクトでゲーム本編を大いに盛り上げてくれる。イベントにおいて、コロコロ変化するキャラクターの表情にも注目。特にミナには色んなバリエーションが用意されているので、それに目を向けるだけでも一定の満足感が得られる……かも。
こんな見所盛り沢山の本作だが、全体のボリュームも結構大きい。エンディングを迎えるだけでも最速で15時間は要するほか、オンライン対応のデイリー料理バトル、アルバイト(ミニゲーム)といった寄り道要素に特別なやり込み専用のモードも収録。さらに難易度もシビアな料理バトルを楽しみたいプレイヤーを対象にした「エキスパート」なる上級者向けを用意。通常の難易度「ノーマル」も後述するが、一部を除けば程よい手応えを味わいながら楽しめるバランスにまとめられている。

地味だが、オプション周りの充実も秀逸なところ。特に文字サイズの調整が可能なところは、携帯モードで遊ぶプレイヤー、大きなテレビやモニターを持っていないプレイヤーにはありがたい部分だろう。

総じて細部まで気を配って仕上げられている本作だが、グラフィックに関しては見た目こそ印象的なものの、演出周りは地味。特に一部、設けられたボス戦イベントの異様なまでに淡々とした描写は、完全に宝の持ち腐れとなってしまっている。戦闘曲も場面を盛り上げる要素として機能してなく、もう少し派手なものにできなかったのかと悔やまれる。イベント的にも大きな盛り上がり所でもあるので、このグラフィックならではの派手な展開を描いてほしかった限りだ。 また、難易度も前述にて程よい手応えとは言ったが、中盤に敵モンスターの火力が高まるといった妙な跳ね上がりが起きるのは気になるところである。「料理バトル」もその所為でダウンにまで追い込まれやすくなるため、アクションゲームに苦手意識のある人ほど辛く感じてしまうかもしれない。「料理バトル」では、他にも対戦相手とのやり取りがあまりないのも寂しいところ。キャラクターに関しても、せっかく個性が立っているのに途中で出番が終わり、終盤まで全く出てこなくなるキャラクターが数名いるのが惜しい。そして、何よりもミナのライバル兼仲間であるエルフ「キリン」を操作できる場面がないこと。スラッシュ、ジギーが操作可能なだけに、殊更もったいない。彼女自身も非常に個性の立っているキャラクターだけに、件の大型無料アップデートで何らかの措置を取って欲しかった限りだ。

本稿執筆時点で発売から結構、年月が経ってしまっているため、もう救済はないのかもしれないが……そんな「こういうのもあればな」との思いが噴出してしまう程度に強烈な魅力が本作には詰まっている。
ゲームとしても3種のジャンルが絶妙に融合した仕上がり、それぞれのいい所どりを意識したまとめ方など、バランス感覚とセンスの良さが炸裂した仕上がりだ。その独特なシステムと、アニメ風の世界観にビビッと来たら……もはや語るまでもなく。すぐに遊んでみよう。そして、不思議で楽しい料理バトルで研鑽を重ねよう。今もなお「バトルシェフブリゲード」は新兵の参加を受け付け中だ。ぜひ、コロシアムの門を叩いてシェフ兵の扉を開こう。ブリゲード万歳!
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