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≫ジェリーボーイ
■発売元 エピック・ソニーレコード
■開発元 ゲームフリーク、システムサコム
■ジャンル アクション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 9240円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 無し(※バックアップ機能・パスワードコンテニュー無し)
■総説明書ページ数 紛失している為、不明
■推定クリア時間 1時間半〜5時間
■補足情報 ≫備考録(※コミック情報など)
仲の良い兄弟ジェリーとトムが治める、とある国。
だが、ジェリーが他の国の王女エミーと仲が良くなって以降、兄弟の関係は崩れていた。
そしてジェリーとエミーが婚約を決めた夜、仲良く談笑する二人を見るトムの近くに謎の魔法使い『マジスト』が現れる。

「ジェリーを追い出せば、この国を独り占めできるぞ!」

そう唆されたトムはマジストの企みに乗り、その晩、エミーの部屋へと向かっていたジェリーに魔法をかけ、彼を世界最弱の生き物『スライム』に変え、下水に流してしまう。

国外の森で老人によって助けられたジェリーは、城に戻り、元の姿に戻る為、そしてエミーに会う為に長くも不思議な冒険に出る事になる。果たして、ジェリーは無事にエミーと再会できるのか。そしてマジストの狙いとは…?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆一部アクションの問題もあるが、全体的には極めて快適且つシンプルな操作性
◆スライムの軟体性を活かした、ユニーク且つ多彩なアクションの数々
◆ステージをひたすらクリアしていく、シンプルで分かり易いゲームシステム
◆全8ワールド16ステージと適度な総計ボリューム(各ステージの長さも丁度良い)
◆2つのステージ+中間ステージと、やや特殊なワールド構成
◆草原、下水道、海から月面、小惑星、天国(!)というあり得ないものまで用意された、個性豊かなステージ地形群(流石に天国はやり過ぎ…。)
◆それらのステージを彩る、極めて個性的且つ濃過ぎる敵キャラクター達
◆上に同じく、躍動的な攻撃パターンと妙なデザインが印象的なボスキャラ達
◆ぶっ飛んだステージの地形と敵キャラ等から醸し出される、強烈な「嘘っぽさ」
◆派手さは無いが、アクションゲームの手応えを何よりも大事にした演出
◆優し過ぎず難し過ぎずの丁度良いレベルを維持している、絶妙のゲームバランス
◆可愛いキャラクターのドット絵が光る、美しくも淡いグラフィック
◆静かではあるが、内面に込められた力強さが印象的な音楽
◆可愛いようで僅かに不気味さも秘めた、怪しい世界観(というよりも…変?)

--- Bad Point ---
◆シンプルで分かり易いが、若干欠点を備えている操作性(特に、壁に張り付くアクションのボタン割り振り)
◆操作性の欠点もあり、使い勝手に欠けるボール攻撃(伸び縮み攻撃の方が使える)
◆セーブ機能、パスワードコンテニュー非搭載(慣れれば1時間半以内でクリアできるが…)
◆表示位置がやや悪いメッセージ文章(更にウィンドウで囲まれてない為、やや読み難い)
◆変な敵が発する、気持ち悪いオーラ(人によっては気分を害するかも…)
◆あまりにチカチカする、エンディングのスタッフロール
▼Review ≪Last Update : 7/21/2007≫
そんな所で走っても、前へは進めませんよ…。

雪原で一心不乱に走る、謎のお兄さまへ。


国民的RPG『ドラゴンクエスト』シリーズ等でお馴染みの”世界最弱の生き物”と呼ばれる『スライム』を主人公としたアクションゲーム。制作は後に『ポケットモンスター』ことポケモンで一世を風靡するソフトハウス・ゲームフリークと、『ヴァリアント』、『ハイウェイスター』と言ったパソコン用ゲームソフトの開発実績を多く持つシステムサコムが担当。

他のアクションゲームでは決して味わう事のできない、異質な操作感。優れたゲームデザインとバランス調整の巧さが光る、スーファミ屈指の隠れた名作アクションゲームだ。

ゲーム内容は、オーソドックスなステージクリア方式を採用した横スクロール型アクションゲーム。プレイヤーはスライムの『ジェリー』を操作して様々なワールドとステージを攻略し、最後のワールドを目指して突き進んでいく。
ゲームシステム自体は先述の通りだが、ワリと普通のアクションゲームである。しかし、細かな部分において他では見られない工夫やアイディアが盛り込まれている。
その1つがステージ構成と一連の流れ。本作では各ワールドごとに2つのステージと中間ステージが用意されており、プレイヤーはこれらの2つと1つを順に追いながらゲームを進めていく事になる。ステージはそれぞれジャンルが分けられていて、基本的に1つ目が『通常ステージ』で2つ目が『ボスステージ』と区分されている。
通常ステージはステージ内にあるゴールを目指すアクションゲームではお馴染みのもの。ボスステージはその名の通り、ステージの最後にボスとの戦闘が用意されているステージで、ここをクリアすると次のワールドへと進む事ができる。そして中間ステージだが、これは通常ステージかボスステージのいずれかをクリアした後にプレイできる街の中などを巡るボーナスステージで、このフィールド内を歩いている人から情報をもらう事ができたり、1UPアイテムなどのサポートアイテムが入手できる。ここでは敵キャラは全く出て来ず、登場するのは街を徘徊する人だけとなっている。なお、このステージはセレクト画面(本作ではセレクト画面から、ステージを選択する。ステージはクリアした後も何度もプレイできる。)から行く事はできず、特定のステージをクリアしないと入る事はできない。ボーナスステージである為、下手するとゲームバランスを崩しかねない恐れがある故の配慮と考えられる。
この辺は初心者救済処置として自由に遊べるようにした方が返って良かったんじゃ…と思うが、別に本作はクレジット式のコンテニューシステムは積まれていない上、1UPの機会がそこそこあるので、しなくて正解だったと言える。
ちなみに、ステージによってはボーナスステージではなくボス戦が用意されているなど、意表を付いた展開も幾つか。
各ワールドの舞台となるステージの地形もそれと同じくらいに意表を付いている。草原、街、下水道、廃墟などの自然地形のステージはさる事ながら、月面に小惑星と普通に考えてストーリーからは「あり得ない」所まで舞台になる。極め付けは何と『天国』。幾ら難でも表現できるゲームだからと言って、これはやり過ぎだ(褒め言葉)。
このように、本作では2つと1つの特徴的なステージと、あまりに現実離れした地形を駆け巡りながら、ゲームを進めて行く事になる。作り自体はシンプルなのに、中身は結構起伏があって尚且つハチャメチャ。ゲームと言う媒体を介してでしか絶対に遊ぶ事ができない、文字通りの不思議な大冒険を全編を通じて楽しむ事ができるのだ。
これぞゲームだとしか言い様の無い工夫。見事な弾けっぷりである。

そして満を持して語る2つ目が主人公のジェリー。ストーリーの項と最初の方で述べているが、彼は本来は人間だったのだが世界最弱とも言われる生き物『スライム』に姿を変えられてしまっている。「最弱」と言うだけに、凄く弱いという印象を抱く方は多いかと思われるが、実はこれが逆。決して人間には真似する事のできない、軟体性抜群且つ強烈なアクションを持っており、その異名からは想像もつかない強さを全編において発揮するのだ。
特に代表的なアクションでもある壁や天井への張り付き、伸び縮み攻撃、そして細いパイプを流れ進むアクションはそのインパクト並びに使い勝手も抜群。その中でも伸び縮み攻撃はあまりにも強烈で、何とただ上を向いた状態で敵に触れたり、間近でしゃがむだけでその敵を撃退する事ができてしまうという異常な強さを秘めている。勿論、中にはこれで倒す事もできない敵もいはするが、ただ伸びるだけ、そしてしゃがむだけで敵を倒せてしまうのはあまりに強力過ぎる。これがスライムパワーなのか。…あのマリオもビックリだ。
また、壁や天井への張り付きも便利。落下しかけてもYボタン押しっぱなしにすれば壁に引っ付いて、そのまま地上に復帰できたり、更にジャンプでは届かない場所もこれで登れば一瞬で解決と、あらゆる場面でその万能性を発揮する。ステージにもこの張り付きを多用する場所を用意するなど、しっかりと特殊アクションに応じたデザインが施されている点も見事。スライムだからこそできるアクションの面白さを感じ取って欲しい為の配慮が行き届いている。
この他にもアクションとしては体にボールを含み(最大9個まで)、それを吐いて敵を攻撃する事ができるものがある。ボールは消費式の赤いボールと鉄球、ジェリーのジャンプ力を向上させる白のボール、そして豆の木を作る緑のボール(種?)があり、いずれもステージ中に配置されている花やつぼみのある花に触れる事で獲得できる。主にボス戦で重宝し、これも上記のアクションと並行してかなり万能なのだが、ボールの発射はYボタンで行うものとなっており、張り付きのアクションと統合されてしまっているのが痛い。この為、ボールを含んで壁に張り付きの際には、そのボールを一旦捨ててからでないと貼り付けない(結局、9発ならば8発しか撃てなくなる)、実にもどかしい思いをする事になってしまう。折角、良い攻撃手段だというのにこの配慮は痛い。せめて発射はXボタンにするなど、差別化を図って欲しかったのだが、そうなると返って操作の方が複雑になってしまうので、別の問題が生じてしまう。この辺りに関しては正直ながら失敗していると言わざるを得ない。こういう事になるのならば、ボール攻撃は要らなかった気がする。また、ボールは伸び縮みに比べるとやや万能性に欠けるのも気になるところではある。
そのような欠点もあるが、いずれのアクションも全体的に丁寧に作られており、まさにスライムだからこそできた独自性が発揮されている。このアクションを体験してみるだけでも本作をプレイしてみる価値は十分にある。

先に述べた操作性も、張り付きとボール攻撃が統合されている欠点がありはするが、全体的にはアクションゲーム独特の動かす事の楽しさが前面に出ている。また、メインに扱うボタンが2つしかない敷居の低さも見逃せない所だ。
また先のステージの話題に並行する形で、プレイヤーの前に立ちはばかる敵キャラも随分と濃い。ネズミや鳥、魚に兵士などのシンプルな敵に加えて、ブタの頭や巨大なイニシャルG(Gが何かは想像にお任せする)、顔の付いたハム(何故か砂漠に埋もれてる)、更には全裸で巨大なロウソクを振り回してくるおじさん、牢に閉じ込められた原始人、謎のノッポお兄さん、そして世界陸上ハンマー投げの室○選手(注:本物)と、とにかくぶっ飛んでる。中でも、ロウソクを振り回すおじさんとノッポお兄さんのインパクトの強さは強烈極まりなく、制作者のセンスを問いたくなる謎に満ちている(笑)。この変な敵キャラを見るだけでも、本作をプレイする事は意外にも(?)あると言えよう。しかし、流石に室○選手を敵キャラとして出すのは如何と思うが(汗)。これらのキャラをデザインしたのが、後にポケモンのイラストレーターとして名を馳せる杉森 健さんというのも信じられん。
その他のグラフィック、サウンドの出来も概ね良好。グラフィックは当時の作品としてはかなり鮮やかに描かれており、全編においてドット絵の芸術が炸裂している。音楽も静かではあるが力のこもった曲が多く、実に印象的。中でも廃墟ステージ並びに海のステージで流れる曲の美しさは芸術とも言うべき素晴らしさがある。

ゲームバランスも総じてかなり良く、優し過ぎず難し過ぎずの丁度良いレベルを維持しており、如何にもゲームフリークっぽく、そして後のソニー(SCE)っぽい味がある。アクションゲームらしく、遊び込めば遊び込むほど上達を感じられる部分がしっかりと活きている事、その気になればノーダメージクリアも楽にできてしまう詰めの深さも見逃せない所だ。
バックアップによるセーブやパスワードコンテニューがない為に、クリアするならば1日で終える必要がある事、ボール攻撃と張り付きのボタン配置が劣悪な事、ウィンドウで囲まれてない為、やや読み難さのあるキャラの台詞、そして変な敵から発せられる気持ち悪いオーラ(?)と気になる部分それなりにあるが、いずれもゲームに支障を与えるほどのレベルではなく、全体的にアクションゲームとしての完成度はすこぶる高い。
世間的な知名度が非常に低いタイトルであるが、総評してゲーム初心者のみならず、上級者まで幅広く楽しめる名作アクションゲームだ。単刀直入に言って、かなりお薦め。スーパーファミコンを持っているユーザーの方は、一度でも良いので触ってみて頂きたい。スライムの驚くべき強さとアクションゲーム屋『ゲームフリーク』の底力がここにある。
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