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≫リトルマスター 虹色の魔石
■発売元 徳間書店インターメディア
■開発元 ツェナワークス
■ジャンル シミュレーションRPG
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 10395円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 46ページ
■推定クリア時間 20〜25時間(エンディング目的)、50〜65時間(完全攻略目的)
マテドラル国の教王ハウサーは、魔獣盗賊団『スカルボンバーズ』による遺跡の盗掘に頭を痛めていた。宗教国家ゆえに軍備を持てない事情から、ハウサーは従兄であるライナーク王国の国王リチャードにボンバーズの鎮圧を依頼。

それを受けたリチャード王は、勇者リイムとその仲間達を招集。
彼らをスカルボンバーズ迎撃の為、マテドラルへと派遣したのだった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆複雑さを招く要素を徹底的に廃し、遊び易さに徹底した、こだわりのゲームシステム
◆武器が固定されている為、個々の特徴がもの凄く分かり易いユニット
◆アクセサリーのみの能力強化要素のみに限定した、シンプルな装備システム(事前準備とかに時間がかかる事も無く、テンポ良くゲームを進めて行ける)
◆ユニットロストの概念が無い為に多種多様な戦術が試せる、自由度の高い戦略性
◆マップ脱出機能、フリーマップ、難易度選択機能など充実したサポートシステム
◆ユニットとの一体感を堪能できる、新鮮な手応えが秀逸な『インパクトシステム』
◆二体以上のユニットを組み合わせて強力なユニットを創造する、独特の面白さに満ちた『合体システム』
◆時間の経過によってユニットの性能が変わる、シミュレーションRPGとしては稀なアドリブ性を演出した『時間の概念』
◆まるで玩具箱のような個性豊かなギミックが凝らされた、全38以上ものマップ
◆ユニットコンプリート、隠しマップ攻略など充実したやり込み要素
◆シミュレーションRPG初心者から上級者まで幅広く対応した、適切なゲームバランス
◆ほのぼのとした世界観にマッチした、ポップで色鮮やかなグラフィック
◆同じくほのぼのとした世界観にマッチした、軽快な音楽(特にマップ曲の出来は秀逸)
◆王道ながらも殺伐としていない雰囲気が異彩を放つ、練られたシナリオ
◆人間から動物、更にはモンスターまでもが入り混じった、個性豊かな登場キャラクター達

--- Bad Point ---
◆英語表記の為、個々の特徴が分かり難い、劣悪なコマンドインタフェース
◆会話の早送りがLRボタンであるなど、地味な配置ミスが目立つ操作性
◆データ破損バグの存在(隠しマッププレイ中に生じる。要注意)
◆システムの都合上、スキップする事が出来ない戦闘シーン(少しテンポを殺いでる…)
◆地味に遅い、戦闘勝利後の経験値換算(もう少し、早くできなかったのか?)
◆二種類しかない、戦闘音楽(ラスボス戦の曲とか、あっても良かったのでは…)
◆可愛い世界観に似合わない、シナリオにおける難読漢字の乱用(もう少し柔らかく…)
▼Review ≪Last Update : 5/31/2008≫
可愛いふりして、結構インテリ。

もう少し、表現を柔らかくしても…。


ゲームボーイで全二作が発売され、抜群の遊び易さで好評を博したシミュレーションRPG『リトルマスター』シリーズの第三作目。三作目という扱いだが、過去のシリーズとの関連はあまり深くない、少し珍しいタイプの続編作品である。

多少ながら、操作周りに粗い所も見受けられるが、初心者から上級者まで気軽にサクッと楽しめる、万人向けシミュレーションRPGの決定版だ。

基本的なゲーム内容は、オーソドックスなターン制を取り入れたシミュレーションRPG。様々なユニット(駒)をカーソルを使って動かし、敵達を撃退したり、仕掛けを解除したりしながら、舞台となるマップを攻略していくというものである。
全体的には本当、良くある普通のシミュレーションRPGと言った感じで、この手のゲームを何度か遊んだ事のある方ならば、すんなりと溶け込んで行ける作りとなっている。しかし、今作が凄いのはそう言った経験者のみならず、シミュレーションRPG初心者にもすんなりと溶け込んで行ける作りとなっている事。
それを体現しているのが、以下の二つの特色である。

◆特色(1):簡略化されたシステム
シミュレーションRPGと言えば、ユニットごとに専用の武器を割り振って装備したり等、何かと手間をかけてマップを攻略していくものだが、今作には武器装備や割り振りと言った概念が無い(アクセサリー装備による能力強化はある)。
主人公のリイムは剣、モーモーは拳と言った感じに、予め使う武器がユニットごとに固定されているのである。その為、いちいち武器を装備したり、割り振ったりする手間がかかる事が無い。それ故に武器の割り振りと言った事前準備とかに時間をかけたりする事もなく、すんなりとマップ攻略を続けて行けてしまう。
また、ユニットごとに武器が決まっている、それすなわち、誰がどう言ったタイプなのか(近距離型なのか、遠距離型なのか)が一目で分かる為、状況ごとの戦略も非常に組み立て易いというのも大きな売り。見た感じ…直感で全ての状況判断ができ、対策が取れるので、初心者でも簡単にシミュレーションRPGの戦略を組む面白さを味わえる。

◆特色(2):ユニットロストの概念が無い
シミュレーションRPGで動かすユニットというのはよく、死んでしまったら二度と復活させる事ができない、或いは復活手段はあるが限られているなど、かなりシビアな制約が設けられているものだが、今作のユニットというのは絶対に死ぬ事は無い。仮に体力を無くしてやられてしまったとしても、マップから退却するだけ(但し、主人公がやられた場合はゲームオーバーとなる)。次のマップでは普通に使う事ができるのだ。
だから今作では、ユニットを失わないよう一手一手、慎重に動かしたり気を配ったりする必要もなし。大船に乗ったつもりで、マップ攻略とユニットの育成に臨める。また、ユニットがやられない事を逆手に取った、特攻プレイ、犠牲プレイも思うがまま。プレイヤーそれぞれの自由なスタイルで、ゲームを進めていく事ができるのだ。

この他にも、自由にマップからの退却が行える脱出機能、ユニットの育成に専念できる『フリーマップ』等、豊富なサポートが今作には導入されている。
シミュレーションRPGと最初に聞いて、大半の方は任天堂の『ファイアーエムブレム』シリーズのような硬派なものを連想したかと思う。しかし実際は先の通り、今作にはそんな硬派な要素は全くと言って良いほどなく、この手のゲームが初めてという方に大変優しい、取っ付き易い作り。思わず目が点になってしまうほど、敷居の低い内容になっているのだ。
しかもそれでいて凄いのが、ちゃんと高難易度モードや隠しマップなど、経験者向けのフォローも成されている事。初心者だけを想定しているのではない。数あるシミュレーションRPGを渡り歩いてきた歴戦の覇者の為の配慮も、今作ではしっかりと凝らされているのだ。これだけでも、今作が如何にシミュレーションRPGとしては極めて稀な、万人向けな作品となっているかは想像に難くないだろう。とにかく、抜群に遊び易いのである。

しかも、魅力はただ遊び易いだけに留まらない。シミュレーションRPGとしては極めて稀な、独自のゲームシステムも本作の魅力の一つだ。その独自のシステムというのが、『インパクトシステム』と『合体システム』の二つ。
前者の『インパクトシステム』は戦闘システムの一種で、今作では攻撃や防御の際にタイミングよくAボタンを押す事で、一時的に攻撃力を高めたり、防御力を高めたりする事ができる。つまり今作の戦闘は、アクション要素を取り入れた、シミュレーションRPGとしては極めて稀なものとなっているのだ。それ故に、今作の戦闘では常にコントローラから手を放す事ができない。シミュレーションRPGでは良くありがちな、一瞬のタイミングが結果として反映されてくるので、一通り武器を選んだ後は眺めているだけ…というような放置プレイができないのである。だから例え、雑魚敵との戦闘であっても退屈する事が無い。本当に目前のユニットと一心同体となったかのような、臨場感溢れるバトルが楽しめるのだ。
基本的に、コマンドの選択作業がプレイの中心となっていたシミュレーションRPGのジャンルにおいて、このようなタイミング操作を要されるというのは凄く新鮮味があって面白い。このようなシステムを盛り込んでしまっている都合で、マップ上での簡略戦闘へと切り替える事ができず、プレイヤーの好みにテンポを変えられないという欠点もあったりするのだが、目前の項目を選んでいく事だけに面白さを追求していたこの手のジャンルで初めて、キャラクターと一体になる要素を導入したその行為は、まさにシミュレーションRPGの世界に一石を投じたと言っても過言ではないだろう。一手一手を詰めて行く事が好きなユーザーには賛否が分かれるかもしれないが、このシステムを通じたキャラクターとの一体感は、何が何でもその手で体験してみる価値がある。
そして後者の『合体システム』もなかなかのもの。主人公などの一部を除いた、自軍のユニットを『合体の神殿』と呼ばれるマスで二体組み合わせ、強力なユニットを作り出せるというものなのだが、これがまた単純ながらも中毒性が高い。作れるユニットの種類が豊富なのもさる事ながら、ユニットの組み合わせによっては通常よりも平均能力が著しく高いユニットを生み出す事ができたりもするので、一度その醍醐味を知ってしまうと、時間を忘れてのめり込めてしまう。更に、この合体でなければ仲間にする事のできないユニットも存在するなど、やり込み派プレイヤーなら思わずムキになってしまう要素も盛り込まれている見逃せないところだ。このシステムは先のインパクトシステムとは異なり、ゲーム攻略に支障を与えるほどウェイトは大きくないのだが、ユニット同士を組み合わせて新たなユニットを想像するその面白さは、他のシミュレーションRPGにはない中毒性があるので、これもまた先のインパクトシステムと並行して、要チェックの価値ありだ。この二つのシステム以外にも、『朝・昼・晩』の時間の経過によって、敵味方を含めたユニットの性能が変化する時間の概念など、本作独自のものはまだまだ存在するのだが、長くなってしまうので割愛。とにかく、遊び易いのみならず、シミュレーションRPGとしても斬新な側面を持っている…そんな二面性を持った作りとなっているのである。
ゲームとしての遊び易さのみならず、新しさまで全面的に押し出す、そのバランス感覚の素晴らしさには正直、感心させられるばかりだ。本当、よく考えられている。

また、プレイヤーが挑む事になるマップも、風変わりなギミックが沢山凝らされており、戦略の面白さのみならず、仕掛けを乗り越えていく面白さを押し出しているのが実に新鮮。ギミックの種類も、炎の海や竜巻、更にはシーソーなどぶっ飛んだものばかりでユニーク。これらの要素も相まって、バラエティー豊かな展開を終始、楽しめるのも流石だ。
その一方で、操作性とコマンドインタフェース周りにはやや難あり。特にコマンドインタフェースの分かり難さは突出していて、全てのコマンドがカタカナでなく、英語表記となっていて、個々のコマンドの意味が分かり難い。対処として、右側のスペースにコマンドの解説文が表示されるようにもなっているのだが、正直、こうするぐらいならコマンドをカタカナ表記にして欲しかったところだ。イチイチ、その文章を見るのは面倒臭い。
またグラフィック、音楽も全体的には悪くは無いのだが、どうもいま一つ、足りない。特に音楽は戦闘周りの曲の種類が少なく、イマイチ盛り上がりに欠けるのが地味に痛い。マップ曲に関しては豊富な量が用意されており、その点は良いのだが、そのパワーを戦闘にも注いで欲しかった。そもそも、ラスボス戦ですら通常のボスと同じ曲…というのはねぇ…。
シナリオについても、中身は悪くないのだが可愛らしい世界観に似合わず、『粛清』とか難しい単語が次々と出てくるなど、妙に硬い作りになっているのが気になる。ここまで可愛い世界観なら、もう少し表現を柔らかくするのが妥当だと思うのだが、製作側としては譲れない何かがあったのか。だとしても、僅かでも良いから柔らかくして欲しかったところだ。

他にもデータ破損バグがあるなど、細かな粗もあったりはするが、肝とも言えるゲームバランスは全体的に適度に優して難しいという、丁度良いレベルに維持されているので、遊んでいてストレスを感じたりする事が無いのが救い。何よりも脱出機能を始めとするサポートが充実しているので終始、気持ち良くゲームを進めて行けるのが有り難いところだ。
シミュレーションRPGとしては極めて異質な簡略化された基本ゲームシステム、ユニットとの一体感を味わえる斬新な『インパクトシステム』、創造の面白さが詰まった『合体システム』、そして個性豊かで玩具箱のようなマップと優れたゲームバランスと、総評してまさに万人向けシミュレーションRPGの決定版と言っても過言ではない出来を誇る今作。
シミュレーションRPGが好きなユーザーは勿論の事、初めてだという初心者の方まで楽しめる、珠玉の逸品だ。これはスーパーファミコンを持っているユーザーならば是が非でもプレイする価値あり。これからシミュレーションRPGを始めたいという方にも、文句なしにお薦め。このゲームを手始めに、シミュレーションRPG挑戦の第一歩を踏み出しましょう。
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