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≫3Dドットゲームヒーローズ
■発売元 フロム・ソフトウェア
■開発元 シリコンスタジオ、スーパースィープ(音楽)
■ジャンル 冒険RPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 7140円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 HDDの残り容量によって変化
■必要HDD容量 1024MB
■その他 トロフィー機能対応
■総説明書ページ数 21ページ
■推定クリア時間 20〜23時間(エンディング目的)、65〜90時間以上(完全攻略目的)
大昔、ドットニア王国は魔王によって滅びかけようとしていた。
そこに勇者と6人の賢者が現れ、剣とオーブの力を用いて魔王を闇のオーブに封印した。

時は流れ、王国は近代化の名の元に2Dから3Dへその姿を変えた。
だが同じ頃、王国に仕えてた神官フューエルが闇のオーブを強奪。魔王を封印した力は徐々に弱くなり始め、野生動物は凶暴化し、更に魔物達まで現れ始めた。
事態を知った王様の一人娘、アイリス姫は盗まれたオーブを探しに城を飛び出すが、その後、消息が途絶えてしまう。
アイリス姫捜索の為、王様は城の兵士達を各地に差し向けるものの、彼らもまた、帰ってくる事はなかった。そんなある日、城に招かれた主人公は魔王を倒す為、かつての6賢者の子孫を訪ね、力を授かってくるよう王様から頼まれる。
こうして主人公の冒険は始まる。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆露骨なまでに初代『ゼ●ダの伝説』を踏襲した、既視感バリバリなゲームシステム
◆ドット絵を立体的に表現した『3Dドット』による、革新的なグラフィック
◆ファミコン時代のゲームを髣髴とさせる、懐かしい香り漂う音楽
◆敵撃破時にドットが砕け散ったりなど、なかなか派手なエフェクト演出
◆随所に仕込まれた、有名ゲームのパロディネタの数々(ド●ゴンクエスト、フ●イナルファンタジーなど実に様々)
◆オリジナルから他ゲームのキャラクターまで、自由に作成できるエディット機能
◆今時珍しいくらいに王道のファンタジーを貫き通したストーリー
◆メジャー・マイナーを問わず、様々なゲームのパッケージイラストを3Dドットキャラクターで再現した、お遊び炸裂しまくりなロード画面(元ネタを知る人ならば思わずニヤリ)

--- Bad Point ---
◆悪く言えば初代『ゼ●ダの伝説』の物真似同然のゲームシステム(独創性皆無)
◆謎解きや仕掛けのバリエーションが乏しく、物足りなさの漂うダンジョン構成
◆ダンジョン内で手に入る新アイテムを活かす工夫の弱さ(レベルデザインの詰めが甘過ぎる)
◆あまりに極端で、理不尽な悪戯も仕込まれた劣悪なゲームバランス
◆民家に入った時など頻繁に発生する上、時間も地味に長いロード
◆メインストーリーへの絡みが弱い為、序盤で一気に面白さと鮮度が落ちる小ネタ
◆ノーヒントな上、プレイ時間の水増しでしかないダンジョンクリア後の賢者探し
◆ゲーム発売後に追加コンテンツとして提供されたインストール機能(最初からゲームに搭載しておいて欲しい)
◆ふざけ気味な条件ばかりのトロフィー(反面、達成し易いというメリットも)
◆ぎこちなくて動かす楽しさ皆無な操作性(特に剣の操作に問題あり)
◆巨大化した剣に貫通性能を付けないとまるで使えないダッシュアクション
◆ドット感丸出しな上、微妙につぶれた文字フォント
◆完全ノーヒントで、特定のイベントを終わらせると達成不可になる仕様が意地悪過ぎるトゥルーエンディングの条件
▼Review ≪Last Update : 12/26/2010≫
国王だから、何でも分かるのです!

マイコォォォォォ!


1980年代のゲームをプレイステーション3の最新技術で再現する大胆なコンセプトの元に制作された、『アーマードコア』シリーズで知られるフロム・ソフトウェアが放つ新作冒険RPG。開発はフロムソフトウェアとは『己の信ずる道を征け(PSP)』にてタッグを組んだ経験のある、シリコンスタジオが担当。

劣化版、初代ゼルダの伝説である。

『冒険RPG』を謳っているが、実際の内容は3Dの奥行きを取り入れた、2D見下ろし視点で展開するアクションRPG。主人公を操作し、フィールド上で起きるイベント、 仕掛けが張り巡らされたダンジョンを攻略しながらストーリーを進めていくというものだ。システム周りはアクションゲーム色の強く、RPG特有のレベルアップや経験値の概念は無し。ダンジョンなどで手に入るアイテム、武器の強化により、プレイヤー自身が強くなる仕組みとなっている。
また、本編は基本的にダンジョン(神殿)の攻略を軸に展開。最奥地で待ち構えるボスを撃破して賢者を救い出し、『オーブ』と呼ばれる貴重なアイテムを集めていくのが主な目的となる。その他、ダンジョンなどの建造物が配置されたフィールドは2D見下ろし視点で構成。少し3Dの奥行きがあるが、ゲーム性は2D。往年のファミコン、スーパーファミコン時代のアクションRPGを髣髴とさせる、昔っぽさ全開の作りになっている。その時代のゲームをやり込んだ方であれば、懐かしい気分に浸る事ができるだろう。 しかし、ここまで語った今作の概要を聞いて、何か引っ掛かった方が少なからずいると思われる。ダンジョン攻略がメイン、アイテムを手に入れる度にプレイヤーが強化されていくシステムなど、それって『ゼルダの伝説』じゃないのか!?…と。
単刀直入に言ってしまおう。その通りだ。オブラートに包まず言ってしまうと、今作はゼルダの伝説そのもの。というか、パチモンなのである。さすがにストーリーなどは今作独自のものとなっているが、ゲーム性やシステムはゼルダとほとんど同じ。極端に言えば、プレイステーション3版のゼルダの伝説と言っても全然不思議でないほど、そのまんまなゲームになっているのだ。より厳密に言うならば、ファミコンディスクシステムで発売された初代ゼルダのPS3版。上下左右にしか振れない剣が全てを物語っている。そんな作りだから、オリジナリティなんてこれっぽっちも無し。さすがにこれはやり過ぎだろ、と突っ込みを入れたくなる、色んな意味で酷い内容となっている。ゼルダの熱狂的ファンの方ならば、あまりのソックリっぷりに怒りを覚えるかもしれないほどだ。コテコテのコピーに仕上がっている。
ただ、全部が全部、ゼルダのコピーという訳ではない。独自のシステムも存在する。それが巨大な剣。今作では体力ゲージが満タン時に剣が巨大化、更に太く長くなって大多数の敵を巻き込む攻撃が可能となる荒唐無稽なアクションが用意されている。剣の太さと長さ、そして大きさは街の『鍛冶屋』にて細かく調整でき、やり方次第ではフィールドの半分を埋め尽くす大きさにまで拡張可能。更に貫通性能を持たせれば、壁などの地形を無視した攻撃も可能になったりと、無茶苦茶な光景が画面いっぱいに繰り広げられる。但し、この巨大な剣が繰り出せるのは体力ゲージが満タンの時だけ。一発でもダメージを受けると剣は本来のサイズに戻り、大多数の敵を巻き込む攻撃はできなくなってしまう。そしてそれに伴い、難易度も自然と上昇し、緻密なプレイが求められるようになる。そんな剣の大きさで難易度が急激に変化する辺りには、ゼルダには無い手応えが満載。見た目もさる事ながら、難易度にも面白い工夫が凝らされたシステム(アクション)に仕上げられている。しかし、これも実は某FLASHゲームから拝借したもの(※おまけに作者公認のもの)であるので、今作独自のシステムという訳ではなかったりする。ただ、剣の状態で難易度が変化するバランスは独特の緊張感があって面白い。意外と新鮮な手応えが感じ取れるはずだ。
また、ストーリーも著名なゲームのネタを随所に仕込んだ、パロディ満載の内容となっている。基本こそ王道なのだが、「人間になりたいスライム」や「タダチニソウビシタマエ!」など何処かのゲームで見た事や聞いた覚えのある台詞が。危機感も薄く、登場キャラクターの大半がノンビリとしている辺りも、説明し難い妙な安心感があって面白い。元ネタを知ってる人ならなお楽しく、知らない人でも独特のほのぼのとした雰囲気にニヤリとさせられる。そんなストーリー重視且つ、肩の力を抜いて楽しめる辺りにも独特の味わいが満ちている。その他、レゴブロックのような『3Dドット』で構築されたグラフィックも、他のゲームに無い独自の雰囲気を醸し出しており、必見だ。
しかし、それでもゲーム自体がゼルダのコピーである事実に変わりは無い。巨大な剣、ネタ尽くしのストーリー、3Dドットで構築されたグラフィックなど、独自の要素や工夫も多いが、結局はゼルダ。任天堂以外のメーカーが新たな表現方法で初代ゼルダを再構築したと言ってもおかしくないほど、そのまんまなゲームとして仕上げられている。前代未聞の斬新なシステムなど、これっぽっちも存在しない。色んな意味で残念な内容である。

しかも腹立たしいのは今作、ゼルダのコピーどころか、劣化版同然な出来となってしまっている事だ。名作として惚れ高い『ゼルダの伝説』をベースとしているだけに、基本的なゲーム性はしっかりしている。だが、細かい部分のツメがあまりにも甘い。表面だけ真似してあとは完全に無視とも言うべき、酷い仕上がりになってしまっているのだ。
特にゲームの主舞台であるダンジョンの作りは、如何ともし難い。謎解きのバリエーションに乏しく、更にダンジョン内で手に入る新アイテムを活用させるレベルデザインの工夫を怠り過ぎてる。ゼルダと言えば、後者の新アイテムを手に入れる事で、それまで通れなかった道が開かれていく過程にカタルシスがあった訳だが、今作にはそれが全く無い。というよりも、新アイテムを活かそうとする工夫が素っ気無く、全然その有り難味を感じられない。解いていて、面白くないのである。更に謎解き自体も大抵は当たりのスイッチを押す(その上に物を乗せる)事だったり、敵全滅によるカギの入手だったりして、バリエーションに欠ける。極め付け、それらの謎解きで使われるアイテムは既に入手済のものだったりするので、新アイテムは意味を成さない。また、謎解きとは別にボス戦でも新アイテムは意味を成さず。そのダンジョンで手に入れた武器を使えば有利な展開に持ち運べるなんて全く無い、実力勝負なので全然、カタルシスが無い。そう言った優れたレベルデザインが売りのゼルダをコピーしながら、面白さの肝を突き詰めてないのは腹立たしい。表面だけ真似ればそれで磐石という、浅はかさを感じる。幾ら何でも、これはあんまりだ。雑な仕事にも程がある。完全にネタ目的の考えで、ゼルダへのリスペクトも何も無しに今作が作られてる事実が露呈されてしまっている。まさに愛の無いパクリである。世の中、著名なゲームをコピーしたタイトルというのは結構あるものだが、大抵のその類のものというのは、元へのリスペクトと情熱が溢れている。面白さを残しつつ、独自の魅力を備えたゲームとして送り出す”愛”が。そんな愛も無しに作られたコピーなど、ただのパチモン。ネタ元を馬鹿にしてるも同然だ。そんな気持ちで作られた今作に評価の価値など皆無と言っても良いだろう。名作をコピーしながら、元に大きく劣るものにしてしまったのだから。その罪は極めて重い。
また、著名なゲームのパロディを仕込んだネタゲームとしての志の低さ、作り込みの甘さも致命的だ。そもそも、序盤でネタの大半が出尽くしてしまうのは如何なものか。更にネタの大半はメインストーリーに組み込まれてなく、街の住人の会話とかばかりというのにもツメの甘さが光る。第一、任意でネタを無視できる環境を作ってどうする。ネタを楽しませたいなら、メインストーリーにもしっかり絡めるべきだろう。そんな基本的な事ができてないだなんて、言葉が悪いがネタゲームを馬鹿にしてるにも程がある。しかも、街の住人がネタを出すから、序盤でほとんどが出尽くされ、以降は劣化ゼルダに終始するというあり得ない展開。それだったらネタなど必要無かっただろう。ネタゲームとして作りたいのなら、メインのストーリーにせよ、サブにしろ徹底して注ぎ込むものだろう。そういうのを一切やってないという時点で、今作が浅はかな気持ちで作ったというのが丸出しである。ネタをやりたいのか、やりたくないかの中途半端さがある。この程度しかできないのなら、普通にシリアスで押し通した方がマシだったのではないか。ゼルダだけでなく、ネタゲームとしてもその良さや魅力を軽く捉えている。最悪だ。
ネタの宝庫(ファミコンのゲームパッケージを模した3Dドットによる一枚絵が表示される)のロード画面も、ゲームテンポを阻害する要因でしかない。しかも最初は楽しめるものの、ゲーム後半になるとストレスでしかなくなる酷さ。更に街の民家に入る度に発生する頻度の多さ、追加コンテンツ(無料)でインストール機能を提供する姿勢にも大いに問題ありだ。
ゼルダのコピーとして中途半端なら、ネタゲームとしても中途半端。ネタゲームなら、元に負けないぐらい、そしてプレイヤーから笑みを奪わないぐらいに作り込むのが暗黙のルールだろう。今作にはそんな意気込みも無ければ愛も無い。本当にただ、表面を真似ただけ。悲しいほど志の低い出来なのである。これならまだ、ゼルダのコピーに徹するのが良かったのに。あれこれ欲張ったせいで台無しとは、まさにこの事だ。ゼルダもネタゲームも、全てを馬鹿にしている。

操作性、ゲームバランスも詰めの甘さが際立つ。操作性はアクション周りは及第点なものの、メニューレスポンスの悪さが許容し難い。剣攻撃が上下左右(攻撃時、スティックを逆方向に動かせば斜めに当たり判定が出る)にしか出せない反面、斜め移動はできるなどの矛盾も地味に気になる。バランスも巨大な剣と小さな剣で落差が激しいほか、時々、致命傷を与える敵が混じってたりするなど、お世辞にも上手くまとまってるとは言い難い。謎解きも単調なので、面白さも無ければ手応えも無くていまひとつだ。
全体のボリュームもそこそこあるものの、展開がつまらないので正直言って後半は苦痛でしかない。また、ダンジョンクリア後に行われる賢者探しなど、ノーヒントで迷い易い、そして時間稼ぎも同然なイベントが仕込まれているのもせこい上に苦痛だ。クリア後に開放される隠し高難易度も蛇足の一言に尽きる。
対し、グラフィックや音楽は及第点の出来。グラフィックは3Dドットという新たな手法で描かれてるだけに見た目からして新鮮。3DCGとは全く趣の異なる暖かみがある。音楽もファミコンチックな音源が印象的。曲も良質なものが揃っており、中でも迷いの森は必聴の価値がある。

演出もドットが砕け散るエフェクトは迫力満点。ストーリーも王道過ぎて正直、魅力には乏しいがソツなくまとまってるのは唯一、評価できるところだ。これでネタ尽くしならもっと魅力的になっていたのだが。その他、マイキャラが作れるエディット機能もよく出来ており、自分の作ったキャラで冒険できるのはかなり魅力的。エディット好きの心をくすぐる。
しかし、今作で売りと言えるのはその程度。エディットに楽しさを見出せないのならば、ただの劣化ゼルダとして終わってしまう浅はかなゲームである。元のゼルダが優秀なだけにそこを完全に引き継ぎ、尚且つネタゲームとしてストーリーを作り込んでれば光るものになっていただろうに、考えの甘さでどっち付かずのゲームとなってしまっている今作。
駄作ではないが正直、お薦めできない一本だ。ネタとして遊んでみたい方なら、やってみても良いかもしれない。ゼルダ好きな方は遊ばないように。これをやるぐらいなら本家ゼルダを遊びましょう。その方が幸せになれる。
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