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≫メタルギアソリッド ポータブルオプス
■発売元 KONAMI
■ジャンル 戦略諜報アクション
■CERO C(15歳以上対象) ※暴力、犯罪描写等あり
■定価 5229円(税込)<Best版:1800円(税込)>
ダウンロード版:1500円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人(※アドホックモード、インフラストラクチャーモード時:2〜6人)
■セーブデータ数 メモリースティックの残り容量によって変化(使用容量:192KB以上)
■その他 メモリースティックDuo&メモリースティックPRO Duo対応、ワイヤレスLAN(アドホックモード、インフラストラクチャーモード)対応、GPSレシーバー対応、ゲームシェアリング対応、UMDPassport対応タイトル
≪※注:オンラインサービスは2012年3月30日を持って終了≫
■総説明書ページ数 68ページ
■推定クリア時間 4〜6時間(エンディング目的)、30〜45時間以上(完全攻略目的)
ステークイーター作戦から6年後の1970年。
アメリカ中央情報局(CIA)のとある特殊部隊が、軍の最高機密である新型兵器を強奪。
コロンビア中部沿岸にある『サンヒエロニモ半島』を占拠した。
特殊部隊の名はFOX。兵士と諜報員を兼ね備えた能力を持つ潜入諜報部隊である。彼らが占拠したその土地は、撤退したキューバ基地に代わり、ソ連が中距離ミサイル基地を建造しようとしていた場所だった。だが、60年代末からの緊張緩和により基地の建設は放棄され、祖国に見放されたソ連の兵士達が残存するだけになっていた。

ある時、FOXを除隊していたネイキッド・スネークは、薄汚れた独房で目を覚ます。
そこは南米、『サンヒエロニモ半島』だった。
目の前にはFOXの捕虜尋問官を名乗る男。
彼はスネークに尋ねた。

「賢者の遺産の残り半分は何処だ!?」
▼Points Check
--- Good Point ---
◆シリーズ伝統の敵に見つからず、任務を遂行する緊張感抜群のゲーム性
◆小さなミッションを攻略していくステージクリア風の分かり易い構成に改められた本編
◆敵兵を眠らせてトラックまで運び、説得して仲間にさせるという過程と主人公のスネーク以外のキャラクターが動かせる面白さが光る、仲間システム
◆カメレオンになったかのような欺く楽しさと快感に満ち溢れた、仲間による独自のステルス要素
◆一般的な敵兵から科学者、衛生兵、更にはボスまでとバリエーション豊かな仲間達
◆次の目的地を探る為に複数のエリアに仲間を派遣するなど、新たなシステムを効果的に活かす展開を織り交ぜる手法が光るレベルデザイン
◆大半は目的地の到達ながら、変化に富んだ地形とストーリーでの意外な展開で盛り上げてくれるミッション
◆監獄、港、渓谷、市街地など、より一層その数を増したフィールドロケーション
◆多少のゴリ押しが効くようになり、少し初心者に優しくなった難易度設定(上級者向けの難易度も当然のように用意)
◆ハードの持つパワーを最大限に使いきった美麗なグラフィック(特にモデリング全般)
◆制限時間ミッション、主題歌など印象深い楽曲が満載の音楽(シリーズでも屈指の出来)
◆『仲間』をテーマとした熱く、印象深いシーンが盛り沢山のストーリー
◆独特のデザインと演出が異彩を放つ、デジタルコミック風のムービーデモ
◆ムービーデモを大いに盛り上げる実力派声優陣による素晴らしい演技(特に若本規夫氏)

--- Bad Point ---
◆劣悪な操作性(特に方向キーで行うカメラ操作がきつい。)
◆存在意義不明な上、ボス戦において難易度を引き上げる要因になっている『スタミナゲージ』
◆敵兵説得に当たって行うトラックへの持ち運びの煩わしさと移動の遅さ
◆少し抽象的な為に行動の察知が分かり難い『サラウンドインジケーター』
◆最大で4つまでしか持ち運べないという制限の多さが厄介な装備システム
◆装備の制限の多さ故に一歩間違えるとジリ貧化するボス戦(格闘攻撃が通用しないのも辛い)
◆やり込みとしてみると面倒臭さが否めない敵兵集め
◆短めの総計ボリューム(おまけ要素も少なく、従来作よりもやり応えは薄め)
◆チートの多さで無法地帯と化しているオンライン対戦
▼Review ≪Last Update : 10/7/2012≫
「聞け!全ての兵達よ!」

恐るべき演説が始まる…。


敵に発見されずに任務遂行を目指す緊張感抜群のゲーム性と濃いストーリーとムービーで根強いファンを持つ、メタルギアソリッドシリーズのPSP向け完全新作。

携帯機を意識したお手軽構成と意欲的なシステムが光る、侮り難き力作だ。

ゲーム内容は敵本拠地への潜入を主な目的とした、戦略諜報アクション(ステルスアクション)ゲーム。主人公のネイキッド・スネークを操作し、敵兵の裏を掻い潜ったり、強敵との一騎打ちと言ったイベントを乗り越えながら任務の遂行を目指すというものである。ストーリー的には『メタルギアソリッド3』の後日談で、主人公も3に引き続き、ネイキッド・スネークが務める。システム周りも3を一部踏襲しており、フリーカメラ操作を取り入れたサード・パーソン・シューティング(TPS)スタイルの三人称視点の画面構成、敵を脅す尋問などの多彩な技が繰り出せる格闘攻撃『CQC』などは今作にも継承されている。主観撃ち、麻酔銃と言った3以前に登場した要素もそのまま。但し、『カムフラージュ』、『フードキャプチャー』、『キュアー』は無し。その為、全体的な作りはやや簡略化されている。
また、本編展開の仕組みも3とは別物。全体マップで目的地となるエリアを選び、そこで課せられる任務を遂行するという、ミッションクリア型の構成に改められている。その為、マップも小さな箱庭となり、そこで様々な任務をこなしていく作りに改められている。今までのシリーズがアクションアドベンチャーだったとすれば、今作はアクションゲームと言ったところ。手軽にサクッと遊べ、区切りも付け易い、携帯ゲーム機との相性を考慮したゲームデザインとなっている。
とは言え、お手軽仕様でもシリーズ伝統の潜入の面白さと手強さに何ら変化は無い。それどころか、今までのシリーズに無い緊張感と達成感を演出する新要素が追加されている。
基本的に今作の潜入のスタイルは3と一緒。360度、周囲をじっくり観察しながら隠密行動を行う、3D視点ならではの緊張感を売りとしたものになっている。ただ、先の通りに今作には3にあった『カムフラージュ』が無い。その為、背景に溶け込んで敵兵を欺くという戦法は取れなくなっている。それすなわち、今回はより一層、周囲の観察に気を配らなければならない難易度設定になった…と思ってしまいがちだが、実際はそうではない。というのも、前作とは異なる新しい『カムフラージュ』が実装されているのだ。
それこそが『仲間』。何と今作では、マップ上を徘徊する敵兵達を麻酔銃で眠らせ、マップのスタート地点にあるトラックまで持ち運ぶ事で、彼らを仲間にする事ができてしまうのである。仲間にした敵兵は実際にプレイヤーキャラクターとして操作できるだけでなく、彼ら自身が新たなカムフラージュ、『成り済まし』として機能する。その言葉の通り、同じ姿をした敵兵の群れに紛れ、彼らを騙すという事ができてしまうのだ。これにより、同じ姿をした敵兵が徘徊する場所には同様の仲間を出撃させ、騙しながら任務遂行という大胆な戦術が取れるように。まさに背景ならぬ、人に溶け込むという驚きのアイディアが炸裂した新要素になっている。勿論、成り済ませば完全無敵という訳ではなく、少し変な動きをすれば相手に悟られると言ったデメリットも完備。他人になりきるには完璧な物真似をしなければならないと言ったその難易度設定も、従来のシリーズには無い新たな緊張感を演出しており、新鮮な刺激に満ち溢れたものに仕上げられている。
また、仲間は敵を騙すだけではなく、自分が任務を遂行する間、別エリアに別の仲間を出撃させ、情報収集に当てる派遣システムも実装。これを活かした展開も幾つか用意されており、これまでのシリーズでは無縁に等しかった「協調性」というテーマが色濃く描かれているのもこの要素の大きな見所の一つだ。更に仲間は最大100人まで加入できるほか、一人一人が異なる能力を持ったキャラクターに作られているなど、戦略ゲームとしての調整も徹底。そんな彼らを集め、自分独自の軍隊を編成すると言った遊びができてしまうのも、今までのシリーズには無い面白さが満載だ。
手軽さを意識したゲームデザインもさる事ながら、仲間と協力して潜入するという新たな試みもバッチリ。スケールダウンしている所もあるが、シリーズの魅力は健在。それでいて、新要素もしっかりと取り入れた、非常に意欲的な作品に仕上げられている。位置付けとしては外伝だが、正伝にカテゴライズされても不思議でないほどの面白さと新しさ。お手軽メタルギアというだけでは済まないほどの密度を持った作品になっている。

そんな今作の売りは仲間と協力して任務を遂行する、独自のゲーム性に集約される。
特にこれまで、潜入の障害だった敵兵達を操作できるのはシリーズとしては非常に革新的であり、成り済ます過程において、敵兵はこのような視点で周辺を巡回していたのかという発見が沢山あるのが面白い。同じ敵兵でもパラメータが異なり、得意分野と苦手分野がしっかり設定されているのも大きな見所。ある兵士は体力に秀でている反面、偵察などの派遣任務には不向きだったり、また別の巡回兵は全ての能力が低めでありながら、負傷した仲間達を看護する能力に秀でているなど、それぞれ違った特徴を持っている。そう言った能力の異なる仲間をスネークと同じ潜入部隊に入れたり、看護などの待機部隊に入れるなど、役割分担をあれこれ考えて編成していくのがまた、戦略シミュレーションを髣髴とさせる考える面白さと中毒性がたっぷり。思わず時間を忘れてのめり込んでしまう面白さがある。
しかも、誰一人使い捨てはおらず、どんな仲間にも必ず活躍の場があるなど、個々の調整にも隙が無い。やり込みの過程で参戦するゲストキャラクターだけは異常に個々のパラメータが高いなど、ぶっ飛んだ調整が成されているが、それでもあらゆる局面に対応できるほど万能という訳ではないようにされているのが非常に上手い。その気になれば100人以上の仲間を擁した大部隊も作れるなど、遊び方次第では無茶苦茶な編成ができてしまう自由度の高さも非常に魅力的だ。「みんなで任務を遂行する」というその独自のゲーム性もさる事ながら、仲間が居るからこそ実現したお遊び、システム、パラメータの調整、そしてやり込みと言った部分まで、今作は導入すると同時に作り込みも徹底。その鬼気迫るこだわりには、正伝シリーズから外れた外伝であろうが、これまでにない新しいメタルギアソリッドを作ろうとする姿勢が如実に現れている。トラックまで敵兵を持ち運ぶに当たっての煩わしさとテンポの悪さなど、荒削りな部分もあるが、この新しい遊びを創造し、大きな差別化を図ろうとする作りの深さは圧巻の一言。新しいステルスアクションとシリーズの形を提示した、意欲的で完成度の高いものに仕上がっている。
また、仲間と共に潜入するゲーム性がレベルデザインにもしっかり活かされているのも見事。少しネタバレになってしまうが、次の目的地を探る為に複数のエリアに仲間を派遣したり、またスネーク以外のメンバーで潜入するなど、独自のシステムならではの遊びと展開が盛り沢山。今作ならではのストーリーを存分に体験できる構成にまとめられている。無論、それら以外の展開もバラエティー豊か。お馴染みの超人的な能力を扱う強敵との戦い、制限時間付きの潜入ミッション、特定オブジェクトの破壊、尋問など、多彩でやり応えに富んだ展開が次々とプレイヤーの前に立ちはばかる。更にストーリー上の前作に当たる『メタルギアソリッド3』と同様、今回も舞台となる地形が充実。ジャングルなどの自然環境は無くなったが、監獄、港、渓谷、市街地、豪邸と言った新しいエリアが続々と登場する。お馴染みの敵基地も登場するだけでなく、道中に仕掛けられたギミックにも立体地形を活かした新作が続々。今作ならではの潜入の楽しさも格別だが、こう言った従来シリーズならではの魅力も新要素を取り入れた魅力溢れるものに仕上げられている。携帯機向けというだけに、各エリアのスケールはコンパクトなほか、目的地に到達すればいいというだけにゴリ押しが最適解になっていたりするところもあるのだが、多彩で充実したミッションと緩急を付けたストーリー展開で楽しませてくれるのもあり、それほど気にならない程度にまとめられているのはさすがの一言。新しさにこだわる一方で従来の良さも決して損なわせない丁寧な作り込みにもまた、製作者の妥協なき姿勢を痛感させられる。
これまで一人で戦うのがお約束でもあったメタルギアシリーズにとって革新をもたらした内容になっているのは言うまでも無く。シリーズとしては正伝の間を補完する作品、いわゆる外伝ポジションに当たる内容ではあるが、それ故の妥協と甘えは何一つ無し。新しいシステムとそれを活かした展開など、独自の試みがもたらす遊びはやり甲斐抜群の一言で、間違いなくメタルギアの新作と言える内容に完成されている。まさに欺いて皆と戦うメタルギア、ここに推参。正伝シリーズに負けず劣らずの魅力と売りを持つ作品なのである。

ただ、潜入の過程には難点もあり、中でも『サラウンドインジケーター』での敵兵の行動察知がやや抽象的で分かり難いのはシリーズ初心者にはやや辛いところ。せめて敵兵が近くに居る場合、何か矢印サインを出すなどの配慮があれば良かったのだが、そういうのも無く、レーダーの癖を理解しなければならない作りになってしまっているのは少々残念だ。
また、今作には集めた仲間で他のユーザーと戦う対戦モードが別途に用意されているのだが、これもオンラインの方でチートが横行していたりと、対策の不備などで無秩序状態と化してしまっているのが残念。意欲的な要素ではあるが、空回りしてしまっているのがもどかしい限りだ。
※なお、2012年3月30日を持ってサービス終了。現在は対戦できなくなっている
操作性も正直、劣悪。特にカメラ操作が方向キーというのがきつい。PSPの設計上、止む無い事ではあるが、せめてLRボタンで左右周囲を見回せるなどの操作にして頂きたかったところだ。
難易度設定もボス戦の難易度は操作性の問題もあってか少々高めな上、イージーでも武器の弾数がジリ貧になり易い調整になっているのは辛い。ここはもう少し、大らかにしても良かっただろう。ただ、その他の部分は概ね良好。最も簡単なイージーでも適度な歯応えと緊張感を堪能できるバランスにまとまっている。
グラフィックもクオリティが高い。また、音楽も名曲揃いで、中でも終盤の制限時間ミッションで流れる曲はシリーズ屈指の名曲と言っても過言ではない出来。この曲を聴くだけでも今作をプレイする価値はあると言っても良いくらいだ。その他にもエンディングなど、秀逸な楽曲は盛り沢山。これらも並行して要チェックである。

演出周りもデジタルコミック風のムービーシーンがとても印象的で、インパクト抜群。ムービー内で語られるストーリーも『メタルギアソリッド3』のプレイ前提の内容だが、出来はなかなか。仲間をテーマとした、熱くて見応えのあるものに仕上げられている。また、スネーク役の大塚明夫氏を始めとするシリーズお馴染みの豪華声優陣も健在。特にシリーズ満を持しての登場にして、今回の悪役ジーンを担当する”アナゴさん”こと若本規夫氏の怪演は超が付くほど必見だ。その他、メインキャラの一部に福山潤、後藤沙緒里と言った若手の声優が配役されているのもシリーズとしては新鮮。いずれも印象深い演技と存在感を発揮しているので要チェックである。
コンパクトな作りではあるが、仲間と協力して任務を遂行する新しいゲーム性とそれを活かした本編の構成、ゲームシステム、そしてストーリーなど、中身の密度は正伝シリーズに負けず劣らずの濃さで、非常に充実感溢れる内容になっている。携帯機という制約をものともせず、新しい要素によって新しいメタルギアソリッドを創造した今作。シリーズファンのみならず、PSPをお持ちのアクションゲーム好きのプレイヤーはプレイする価値大いにありの秀作だ。お手軽ながら、遊び応えと密度は申し分無し。携帯機の範疇を超えた奥深いゲーム性とシステムをご堪能あれ。お薦めの逸品です。
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